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  • 2012/03/02

小売業のIT化動向2012:Amazonが変える!ECのルールと成功法則

ネットがリアルを逆転?

2011年末の米国のサンクスギビングデー明けのセール(ブラックフライデー)では、2010年に続き、eコマース(以下、EC)が大幅伸長して注目されました。中でもAmazon.comはKindle Fireというタブレット端末が、キラーコンテンツならぬキラー端末として相当な数を販売した模様で、EC市場への影響も少なくないと考えられます。世界のECプレイヤーがその販路を確実に拡大する中、日本の小売業はEC化、IT化の波にどう立ち向かえばいいのでしょうか?本稿ではEC業界の動向を俯瞰的に紹介します。

フューチャーブリッジパートナーズ 長橋賢吾 編集:編集部 松尾慎司

フューチャーブリッジパートナーズ 長橋賢吾 編集:編集部 松尾慎司

2005年東京大学大学院情報理工学研究科修了。博士(情報理工学)。英国ケンブリッジ大学コンピュータ研究所訪問研究員を経て、2006年日興シティグループ証券にてITサービス・ソフトウェア担当の証券アナリストとして従事したのち、2009年3月にフューチャーブリッジパートナーズ(株)を設立。経営コンサルタントとして、経営の視点から、企業分析、情報システム評価、IR支援等に携わる。アプリックスIPホールディングス(株) 取締役 チーフエコノミスト。共著に『使って学ぶIPv6』(アスキー02年4月初版)、著書に『これならわかるネットワーク』(講談社ブルーバックス、08年5月)、『ネット企業の新技術と戦略がよーくわかる本』(秀和システム、11年9月)。『ビックデータ戦略』(秀和システム、12年3月)、『図解:スマートフォンビジネスモデル』(秀和システム、12年11月)。
ホームページ: http://www.futurebridge.jp

本コンテンツは「小売業のIT化動向:総合物流企業化?カテゴリ特化型?EC事業成功のポイント」を2012年版としてアップデートしたものです

小売業で増すECの存在感、4つの軸で分類

 一口にEC(Electronic Commerce=電子商取引)といっても、それが意味する範囲は極めて広範囲に及びます。たとえば、企業間企業での調達であるEDIもECですし、オンライン証券も、ユーザーがインターネットを通じて株式を売買するという点でECです。

 とはいうものの、本稿ではこうした広義のECではなく、消費者向け物品販売(ネット通販)をECと呼び、取り扱うことにします。経済産業省の「平成22年度我が国情報経済社会における基盤整備」(電子商取引に関する市場調査)によれば、2010年度のB to C向けECの市場規模(小売・サービス)は、5兆2,531億円(前年比20.1%増)で、すべての小売・サービスの売上高に占めるECの割合は2.46%(2009年は2.1%)となっています。

 この5.25兆円のEC市場のパイをどのようなプレイヤーが奪い合っているのか一見すると分かりづらいかもしれません。そこで、まず売上高(縦軸)とEC比率(横軸)を軸に分類・整理して考えます(図1)。

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図1 日本と世界のECサイト俯瞰図(図の拡大はこちら

 たとえば、ビックカメラの場合、同社の売上高は6,121億円(2011年8月期実績)あり、楽天、ヤフーを凌駕します。一方同社のECサイトであるビックカメラ.comの売上高は350億円程度であり(2011年は対前年比1%増)、EC比率は5%程度です。楽天、Amazon.comのEC比率は基本的に100%に近い水準であり、これと比較すればビックカメラのEC比率は低い水準です。このように売上高の規模、EC比率に応じて、以下の4つの象限に分類することができます。

A.3大メジャーECサイト(売上高 大 EC比率 高)
ECでの売上高1000億円を超え、かつ、ECを専業としているサイトで、Amazon.com、楽天、ヤフーがこのカテゴリーに属します。

B.カテゴリー特化型ECサイト(売上高 少 EC比率 高)
3大メジャーサイトの特徴は、ほぼすべてのカテゴリーを展開しているのに対して、カテゴリー特化型ECサイトは、価格比較(カカクコム)、アパレル(スタートトゥディ)、健康食品(ケンコーコム)といった特定のカテゴリーに特化した小売・サービス提供をしている点です。特定のカテゴリーに特化しているがゆえに、3大メジャーECサイトにくらべて売上高が少ないことが特徴です。

C.実店舗同時展開型ECサイト(売上高 大 EC比率 低)
ビックカメラのようにリアル店舗でのビジネスの規模が大きいながらも、その売上高に占めるECの割合が低いことが特徴です。さらに、細分化すると、通販系ECサイト(千趣会、ベルーナ、ニッセン)、および、アパレル系ECサイト(ユナイテッドアローズ、ファーストリテイリング、ポイント)、デパート系ECサイト(丸井グループ)、ネットスーパー(イトーヨーカドー)などに分別することができます。
実店舗を運営しているにもかかわらず、ECを強化する目的は、顧客層の拡大が挙げられます。たとえば、丸井グループの場合、実際の店舗は東京・大阪を中心とした首都圏です、一方で、それ以外の地域の顧客にリーチするためにEC事業を強化しており、これまでの自社展開に加えて、楽天と提携して、2010年12月には丸井のプライベートブランドなどを楽天市場へ出店しています。

D.中小小売店舗型 ECサイト(売上高 少 EC比率 低)
たとえば、町のかばん屋さんがその例でしょう。少数店舗のみの売上で、売上高は3.リアル店舗同時展開型と比べると少ない。かつ、顧客は近所の顔なじみなので、一般的にはEC比率は低いと推定されます。

 上述の4つのカテゴリー以外のプレイヤーとしては、ECの基盤を支える企業の存在があります。たとえば、ECでは実店舗の“土地”に相当するのが、サーバ・ネットワークインフラです。

 もちろん、3大メジャーECサイト(Amazon.com、楽天、ヤフー)は自前でリソースを調達していますが、すべてのECサイトが自前で調達しているわけではありません。たとえば、レンタルサーバを提供しているGMOインターネット、データセンターを運営しているビットアイルなどからサーバあるいはデータセンタースペースをレンタルします。

 これはサーバだけではなく、アプリケーションも同様です。楽天は、電子モールを自社開発し、これを顧客に提供しており、非常に多くの零細企業が出店しています。その一方で楽天などのプラットフォームを利用せず、自前でECサイトを構築するためのパッケージを提供する企業(ソフトクリエイト、コマース21、ITFORなど)があります。

 さらに言えば、2011年5月にビックカメラが楽天に出店したり、6月にヤフーとローソンが手を組んだように、各事象ごとに分かれている企業でも、それぞれに目的を持った提携や連携を行っている点には別途注意する必要があるでしょう。

【次ページ】EC事業 成功の方程式

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