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- 2012/06/29 掲載
韓国LGの躍進を支えたビッグデータ分析:「企業経営の新しいパラダイムシフトが起きている」
現場で活かされた活用事例
ビッグデータ分析は企業経営の新しいパラダイムシフト
LGでは、SASと共同で2年ほど前から「Advanced Analyticsセンター」と呼ばれる専用ラボを立ち上げ、ビッグデータ分析に注力してきた。同センターは、かつてのビジネスインテリジェンス(BI)やデータウェアハウス(DWH)といった統計的な分析ツールやアルゴリズムなどによるデータ分析とは一線を画する取り組みだとKim氏は説明する。
「ビッグデータ自体は以前から存在していましたが、それらを意味のある形で活用できる手段を持っていませんでした。しかし最近になってビッグデータを保存し、処理できるテクノロジーが急激に発展しました。そこでBIやDWHとはまったく異なる高度な分析手法として“Advanced Analytics”という領域が生まれたのです。」
Kim氏は、Advanced Analyticsと従来手法の相違点について4つの観点から整理する。
1点目が対象となる「データの処理量」が違うこと。ビッグデータが対象となり、大量から「超大量」になった。いろいろなデジタルデバイスの登場や、価格低下によって機械に搭載されたセンサから、超大量のデータが発生している。
IDCによると、いまや人類が生成するデータ量は1.8ゼタバイトにのぼる。1ゼタバイトは、本にして積み上げると地球~太陽を75往復できる量だ。従来までは、このようなビッグデータを処理し、保存しようとしても、コスト面や技術面で大きな制約があった。
しかし「Hadoop」「NoSQL」といったオープンソースソリューションが現れ、「MPP」(超並列プロセッサ)、「In-Memory」「In-DB」のような「HPC」(High-Performance Computing)の技術も出てきた。これによりテラあるいはペタバイト級のビッグデータを保存し、高速で分散・並列処理が可能になった。
2点目は「データのタイプ」が変わったことだ。これまでBIやDWHでは主に定型データがターゲットだった。しかし、いまや動画や音声、イメージ、テキストなど非定型データが主流になっている。そこから意味を拾い出さなければならない状況だ。
たとえば一般的なテキストから何らかの意味を抽出するために、テキストマイングや自然言語処理の技術が使われる。マーケティング効果を分析し、次の戦略を打ち立てることに活用するわけだ。また、これはモバイル音声分析にも応用できる。コールセンターに掛かってきた音声をテキストに変換し、意味あるデータをマイニングする。それによって顧客の声を分析することも可能になった。
3点目の相違として「分析のスピード」が挙げられる。これはバッチ処理からリアルタイム分析にシフトしているということ。DWHやBIのような技術では、一定期間データを保存したのち、OLAPツールなどでデータをモデリングし、そこから分析結果を手にする。
しかし、いま企業を取り巻く環境は急ピッチで変わっており、多くの時間をかけて分析している余裕はない。短期間のうちに分析できなければ経営の機会損失を招いたり、企業イメージに大きな打撃を与えることが起きてしまうかもしれない。したがって、リアルタイムで流れているストリームデータをキャプチャし、何らかのルールとマッチングしたらアクションを取れるようにすることが必要だが、これに対してリアルタイム分析の「CEP」(Complex Event Processing) テクノロジーも登場した。
4点目は「分析の範囲」が広がったことだ。従来の分析は過去にとどまっていた。過去がこうだったから将来はどうするか、その予測は主に人間の役目だった。しかし、Advanced Analyticsでは未来への予測まで可能になった。
「すべてのクルマにGPSが搭載されるようになれば、各道路に交通渋滞がどのぐらい起きているのか読み取れます。現在の交通量から5分後の交通量も予測できるでしょう。そうなるとクルマのナビゲーションもルートだけでなく、将来の交通量も予測し、どの道を通れば最短時間で行けるか、予測情報までリアルタイムで提供できるようになります。過去と現在のデータを使って分析することで将来を予測できるのです。」
【次ページ】実現場でのビッグデータ活用事例
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