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  • 2012/09/06 掲載

その写真は掲載して大丈夫? ──わかりにくい写真の権利について解説

写真の著作権や肖像権、名誉権などの考え方がわかる!

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例えばパワーポイントの提案資料にスマートフォンの写真を使用したり、自社のイベント・セミナーの盛況感を伝えるため、多数の参加者が写ったイベント風景を撮影してサイトにアップしたりすることもあるだろう。こうした写真の利用に際して、法律上のさまざまな権利が問題となり得る──ということは何となく理解していても、はっきりと法律の白黒を線引きするのは難しいはずだ。本稿では、写真の利用に際して問題となる法律上の権利と、それらについて考える上での重要なポイントについて概論を述べるので、参考にしてほしい。

弁護士 河瀬 季

弁護士 河瀬 季

東京大学 法学政治学研究科 法曹養成専攻 卒業。
2002年からIT関連フリーランスとして、SBクリエイティブ社の雑誌への寄稿、書籍の全編執筆などの執筆活動や、各種ウェブサービスの開発等を行う。司法試験合格後は弁護士として、ITとビジネスに強いコスモポリタン法律事務所(東京・音羽)に所属。自らも、複数のIT企業の顧問弁護士などとして、新興企業支援や知的財産権管理、資金調達などを含む、各種の企業法務に携わっている。
個人サイト:http://tokikawase.info/
Twitter:http://twitter.com/tokikawase

写真の利用に際しては法律上のさまざまな権利が問題となり得る

 パンフレットやWebサイト上などで写真を利用する場合には、法律上、さまざまな権利が問題になり得る。例えば、芸能人の顔写真を勝手に利用して自社製品の宣伝画像を作成し、パンフレットに掲載したら、そのパンフレットの公開停止や損害賠償請求を受けることになるだろう。

 ……と、このような極端な例であれば直感的にわかっても、もう少し微妙な例になってくると、法的にセーフかアウトかがわからない、そもそもどのように考えれば良いのかわからない、という人が多いはずだ。

 本稿では、写真の利用に際して問題となる法律上の権利と、それらについて考える上での重要なポイントについて、概論を述べる。写真を利用する際に、法律上の問題について考える上での道筋として参考にしてほしい。

撮影者の権利:写真は撮影者の「著作物」である

 まず考えなければならないのは、その写真に関する著作権だ。著作権は、「著作物」について、「著作者」に認められる権利だが、例えば油絵が、画家を「著作者」とする「著作物」であるように、写真もまた、撮影者を「著作者」とする「著作物」だ。

 撮影者の著作権が問題にならない場合としては、大きく分けて4つのパターンがあり得る。

photo
クリエイティブ・コモンズ(http://creativecommons.jp/licenses/)
 まず、当該著作物の当該利用について、撮影者の許諾がある場合。許諾は、著作者たる撮影者と公開者の間の契約によることが原則だが、著作者が著作物の再利用を許可するという、「クリエイティブ・コモンズ」という仕組みも、最近では多く利用されている。

 次に、著作者が自分自身である場合。企業の経営者が自ら撮影した写真のみでなく、いわゆる職務著作も、企業にとっては「著作者が自分自身である」著作物だ。ここでは職務著作の詳細については触れないが、一般論として、雇用契約を結んでいる従業員が、仕事に関連して撮影した写真であれば、その著作者は企業となる場合がほとんどだ。これに対し、請負契約で外部の人間に撮影させた写真であれば、その著作者は当該撮影者になることが多い。この場合は、当初の契約を超えて著作物を利用する際、例えばパンフレットへの掲載のみを予定していた写真をWeb媒体にも掲載する際、撮影者から許諾を得るか、再び契約を締結する必要があるだろう。

 さらに、著作権が消滅している場合。現行法上、著作権は、著作者の死後50年、または、著作者が不明の場合、公表後50年で消滅する。いわゆる「パブリック・ドメイン」という状態だ。

photo
「著作物」ではないと考えられる写真の一例としては、定点カメラによる写真が挙げられる
 最後に、「著作物」と認められない写真。実は、あらゆる写真が「著作物」と認められる訳ではない。著作権法は、人間の「創作」を保護する法律なので、写真に関しても、例えばどのようなアングルで撮影を行うかといった創意工夫が保護対象となっている。ただ、求められる「創意工夫」の程度は低く、人間が撮影した写真であれば、まず間違いなく「著作物」だと考えられている。

 以上が撮影者の権利だが、ここで重要なのは、「撮影者の権利」と「被写体の権利」は別の問題だということ。一枚の写真の上には、「撮影者の権利」と「被写体の権利」がそれぞれ別々に成立しえるのだ。

【次ページ】 「被写体の権利」についてはどのように考えればよいのか?

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