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- 2016/02/12 掲載
伝統芸能はイノベーションに向き合えるのか Twitterとtixeeが突き付けた問い
芸術とビジネス
シュリンクする市場、グローバリゼーションの波
2010年、経済産業省によって「クールジャパン室」が設置されたが、これに代表される国産コンテンツ輸出の気運は、2020年東京オリンピック・パラリンピック開催決定によりさらに高まった。
能楽における国内市場縮小への危機感、そして「能楽のグローバリゼーション」は、外国人をターゲットにしたマーケティング展開に結びついた。
その象徴的な取り組みとなったのが、2015年11月21日、十四世喜多六平太記念能楽堂で上演された「能~ことばを超えて、世界へ向けて~」だ。公演内容は出演者トーク、仕舞(能の上演形式の1つ)、バイリンガル狂言「痿痢(しびり)」、そして一部日英2ヵ国語で上演された能「黒塚」だった。
能楽業界の壁はスマホと英語
そもそも能楽業界には、どのような課題があるのか。さまざまなものがあるが、スマホ対応と外国語対応の遅れは特に目立つ。たとえば、能・ 狂言のチケットの主要な購入手段は5つある。
(1) 各能楽堂のWebサイトから購入する
(2) チケット販売サービスのWebサイトから購入する
(3) 出演者に直接頼む
(4) 出演者の公式サイトから購入する
(5) 各能楽堂に電話する
である。
ネット販売そのものは整備されつつあるが、スマホ対応しているとは言い難い。PCでの閲覧が前提とされているWebサイトが目立つ。アプリなどはもってのほかだ。
英語に関してはどうだろうか。まず、能楽関係者にはバイリンガルが少ない。能楽堂の職員募集頻度は低く、規模も小さい。そのため、帰国子女・留学経験者が伝統芸能や能楽に興味を持ったとしても、就職につながることは非常に少ない。
国立能楽堂を所管する日本芸術文化振興会は毎年採用を実施するが、採用人数も5名程度で、かつ、採用後国立能楽堂に配属されるとも限らないので、バイリンガルな人材は入りにくい。
tixee活用による英語対策
今回上演された「能~ことばを超えて、世界へ向けて~」では、tixeeを活用することで英語対応を試みた。tixeeはLive Styles社が2012年に開始したペーパーレスチケット販売サービスだ。ユーザーはチケットの検索、購入、入場をワンストップで行うことができる。対応言語は日本語、タイ語、スペイン語、英語の4ヵ国語だ。
本公演でのtixeeチケット販売は日英両言語で展開された。しかし、フライヤーでは、「Tixee(英語対応) Tixee(For English)」と記載されており、本公演に関し、tixeeが「日英両言語」対応だったことが観客に伝わりにくかったきらいがある。
本公演全体としては、アプリ展開しているイープラスもチケット販売チャネルとして用意されており、日本語のスマホ対策はイープラス、英語のスマホ対策はtixee、と言語とサービスが実質的にすみわける形となった。
観客視点に立つと、チケットの販売チャネルは多ければ多いほどよいということもなければ、少なければ少ないほどよいということでもない。しかし、伝統芸能という、初心者にとって近寄りがたい分野でのアクセシビリティの充実をはかるのであれば、「観客のセグメント」と「チケット購入に至るカスタマージャーニー」に合わせたサービスを取捨選択・集約し、言語と合わせて対応していく必要があるだろう。
【次ページ】能楽業界のIT活用事例 スマホで英語対策!
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