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- 2019/01/07 掲載
外国語ベタな日本人、「機械翻訳」がインバウンドの救世主に?
入管法改正、五輪、万博で外国人がさらに増加する
日本政府観光局(JNTO)が発表している訪日外国人の数は、東日本大震災が起きた2011年の621万人を底に右肩上がりで増え続け、2018年は夏の豪雨、台風、地震の被害で達成が危ぶまれたものの、12月18日に年間3000万人を突破した。7年で5倍弱になり、年平均で54.7%というハイピッチの増加ぶり。2019年はラグビーのワールドカップが日本で開催され、政府は東京五輪・パラリンピックが開催される2020年に4000万人の訪日外国人を迎えたいという目標を打ち出している。さらに、 2018年11月23日、大阪で2度目の万国博覧会が2025年に開催されることが決定した。札幌市も2030年の冬季五輪・パラリンピックの招致を目指している。インバウンド需要はますます高まるばかりだ。
海外からの観光客だけでなく、日本で働いて生活している在留外国人の数も増え続けている。法務省の集計によると2013年末は206.6万人だったが、2018年6月末は263.7万人で、4年半で27.6%増えている。年平均で6.1%の伸びになる。
2018年12月には入管法(出入国管理及び難民認定法)改正案が国会で可決・成立し、2019年4月1日に施行される。建設、外食、介護、農業、宿泊など14業種で外国人の就労資格が緩和される。政府は、法改正によって2019年度は最大4.7万人、今後5年間で約26~34万人の外国人を新たに受け入れると想定している。それも加わると在留外国人の数が300万人を超えるのも時間の問題だ。
五輪や万博で外国人観光客が増え、入管法改正で在留外国人が増える。彼らとのコミュニケーションで、日本人は「言葉の壁」という問題に直面することになる。
「機械翻訳」で通訳者の不足を解決する
言葉の壁を乗り越えて外国人とコミュニケーションを図るには、日本人が語学スクールや独学で外国語を勉強するか、改正入管法で日本語試験合格という条件が課されたように外国人が日本語を勉強するか、あるいは通訳をしてくれる人を頼むという3つの方法がある。文書であれば翻訳を依頼する。その「通訳・翻訳」のビジネスは近年、訪日外国人や在留外国人の増加、日本企業の海外進出などに伴って成長が続いている。矢野経済研究所が毎年発表する「語学ビジネス市場に関する調査結果」によると、2012年度は2354億円だったその市場規模は、2017年度は2883億円で、5年で22.4%拡大した。年平均4.5%の成長をみせている。
現状は通訳も翻訳も、ほとんどは専門技能を持つ通訳者、翻訳者が行っている。通訳は英語、中国語など各言語ごとに「全国通訳案内士(通訳ガイド)」という国家資格があり、観光業では業務独占規制があったが、2018年1月の法改正で規制が緩和され、国家資格がなくても外国人観光客の通訳や観光案内ができるようになった。
東京五輪・パラリンピックで外国人を接遇するボランティアにも国家資格の取得は義務づけられていないが、その背景には、急増する訪日外国人に対して資格を持つ通訳の絶対数が足りないという事情がある。
通訳の対応言語は英語に偏っていて、訪日外国人数の国別1~4位(中国、韓国、台湾、香港)に対応できる中国語、韓国語の有資格者が少ない。しかも居住地が首都圏など大都市圏に偏っていたため、問題になっていたのだ。
「機械翻訳(Machine Translation)」は自動翻訳とも呼ばれ、深層学習(ディープ・ラーニング)ができる第3世代AI(人工知能)を活用することで、その精度は飛躍的に向上した。日本語の訳文が笑い話のネタにされたのは、過去の話になろうとしている。
機械翻訳は日本だけでなく世界的に市場規模の拡大が見込まれ、2018年5月にP&S Market Researchが発表した市場調査によると、機械翻訳の世界市場は今後、年平均6.7%のペースで成長し、2023年に1億9540万米ドル(現在のレートで約221億円)まで拡大する見通し。これは控えめな予測で、年率17%の2ケタ成長で2024年に15億米ドル(約1700億円)に達するという予測も出ている(Global Market Insights社)。
集客規模の大きい国際イベントが続けざまに開催され、政府がインバウンド観光誘致、外国人の労働力に期待する日本は世界の機械翻訳の成長センターになる可能性がある。国民が日本語を話す国は日本だけで親戚関係にある言語もなく孤立していること、実用レベルで2つ以上の言語を話せる国民が少ないことも、機械翻訳の普及には有利に働きそうだ。
【次ページ】「普段使いの機械翻訳」が続々登場
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