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  • 2016/07/13

「サービスロボット」は本当に流行るのか? 今後5年の動向を大胆予想

ロボットはビジネスをどう変える?(1)

政府は、2014年改訂版の日本再興戦略において「ロボットによる新たな産業革命」を掲げ、「ロボット新戦略」を公表した。この戦略では、「ロボット革命実現会議」を立ち上げ、2020年までの5年間で<ロボット開発に関する民間投資の拡大を図り、1000億円規模のロボットプロジェクトの推進を目指す>と述べている。これは今後の少子高齢化社会で労働人口が減少することへの解決策の1つとなるものだ。では、ロボット産業のマーケットは今後どうなっていくのだろうか? ここでは、先ごろ野村総合研究所(以下、NRI)が発表した「サービスロボットの最新動向」をべースに、筆者の見解も交えながら、サービスロボットの現状と未来について占っていきたい。

フリーライター 井上 猛雄

フリーライター 井上 猛雄

1962年東京生まれ。東京電機大学工学部卒業。産業用ロボットメーカーの研究所にて、サーボモーターやセンサーなどの研究開発に4年ほど携わる。その後、アスキー入社。週刊アスキー編集部、副編集長などを経て、2002年にフリーランスライターとして独立。おもにロボット、ネットワーク、エンタープライズ分野を中心として、Webや雑誌で記事を執筆。主な著書に『キカイはどこまで人の代わりができるか?』など。


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人と空間を共有する「サービスロボット」はビジネスになるか

サービスロボットは産業用ロボットと何が違うのか?

 1980年代以降、「産業用ロボット」は自動車産業を中心に多くの製造業で導入され、日本のお家芸として大きな成果を収めてきた。現在でもファナックと安川電機は世界四大ロボットメーカーの一角に君臨しており(欧州のABB、KUKAも一角に入っている)、まさにロボット大国の面目躍如といったところだ。

 その一方で、いま注目を浴びているのが「サービスロボット」の分野だ。サービスロボットは産業用ロボットと異なり、公共空間や家庭といった人間のそばで動作し、受付や警備、掃除、案内といったサービスを提供するロボットである。

2035年には5兆円規模? サービスロボットが活性化する理由

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の予測によれば、サービスロボットは2020年に約1兆億円となり、産業用ロボットと同等規模になるものと予測されている。また2035年にはロボット産業全体で9.7兆円まで達し、そのうちサービスロボットが5兆円規模(産業用ロボットの2倍)まで伸びる方向だ。そのため、次のマーケットのターゲットとして、サービスロボットが注目されているのだ。

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ロボット産業の市場予測と、サービスロボットのマーケット推移は、2035年に産業用ロボットの約2倍の5兆円になるという(出典:NRI)

 では、なぜサービスロボットが活性化するのか? まず安全性に対する認識の変化が要因の1つとして考えられる。かつては安全第一の観点から、どうしてもサービスロボットの製品化を抑える向きがあった。しかし法改正によって、産業用ロボットでさえ工場内の安全柵を外すことが可能になり、人とロボットの協調を考えた生産ラインへの応用が加速している。そのような流れもあり、生活空間で安全を確保できるサービスロボット技術にも道筋が立ち、製品化への兆しが見えてきた。

 もちろん技術的な進展も挙げられる。近年のクラウド技術や、無線ネットワーク、ハードウェア性能、AIが後押しする音声/画像認識技術などが実用に耐えうるレベルになりつつあることも重要な要因だ。さらにオープンソースやOSなどの汎用的な要素技術を組み合わせることで、以前よりサービスロボット自体のコストも下げられるようになってきた。

 とはいえ、サービスロボットと一口にいっても、その分野は大変幅広く、いろいろなものがある。たとえば、家庭内で利用される掃除ロボットの「ルンバ」は清掃分野で有名だ。警備分野では、先ごろセコムがドローンを利用した空からのサービスを開始。また介護・福祉では、サイバーダインの「HAL」や、イノフィスの「マッスルスーツ」なども話題になっている。医療分野では、腹腔鏡手術(お腹に複数の小さな穴をあけて患部を取り出す手術)のサポートを行う「da Vinc」も、多くの大病院で導入されるようになった。

サービスロボット注目のトリガーとなったPepper for Biz

 そして最近、サービス系で特に注目を浴びているのが、接客・案内を中心とした「コミュニケーションロボット」だ。実は、この分野は以前から開発されてきたものだ。2000年初頭には、インターネットと結びついたネットワークロボットも話題になったが、まだ当時は通信回線のレイテンシー(遅延)やコスト面で折り合いがつかず、なかなか本格的な普及に結びつかなかった。しかし、ここに来てようやくコミュニケーションロボットの潮目が変わってきたと筆者も感じている。

 その大きなトリガーとなったのが、やはりソフトバンクの「Pepper」の登場だろう。当初、Pepperは一般コンシューマー向けに発売されていたが、昨年から法人向けの「Pepper for Biz」も販売され、すでに500社以上の導入実績を積みあげて来た。専用のネットストアーでアプリケーションも提供されるようになり、Pepperのエコシステムが形成されつつある。今後、Pepperがどれだけ市場に影響を与えていくのかは未知数だが、レンタルで月々5万5000円というビジネスモデルは、中小企業でも導入しやすい料金設定であり、普及を促すのに十分なポテンシャルを秘めているといえそうだ。

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ソフトバンクのヒト型コミュニケーションロボット「Pepper」。法人向けの「Pepper for Biz」は、すでに500社以上の実績がある

東京五輪、インバウンド需要にもコミュニケーションロボットが活躍

 では、サービスロボットのコアとなるコミュニケーションロボットの活用シーンには、どのようなものが想定されるのだろう?

 NRIによれば「主に家庭・店舗・オフィス分野が考えられるが、特に先行しているのは、やはりPR効果の高い店舗での活用だ」(主任研究員 長谷 佳明氏)という。たとえばネスレは、2014年12月に店頭での商品説明にPepper for Bizの活用を始めた。人寄せ的な効果を狙ったものだが、最近ではラテアートマシンとコラボさせ、お客さんの顔をラテにプリントするユニークな実験も試みており、かなり反響も大きかったそうだ。

 家電量販店のヤマダ電機でも、Pepper for Bizが導入され、日本語・英語・中国語でフロアー内を説明する実験が行われた。近年、外国人観光客が日本に多く訪れるようになり、日本語以外の受付けや接客業務が急務となっている。東京オリンピックに向けて、ますます観光客も増えていく中、英語・中国語・韓国語以外の多言語に対応することは人的にも難しいだろう。そこで、ロボットによる多言語対応の期待が高まっているのだ。

 また同社は、米Fellow Robotsの自律移動サービスロボット「NAVii」も導入し試験も行った。こちらはヒト型ではなく、KIOSKスタンドのような形状だ。

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ヤマダ電機に導入された米Fellow Robotsの自律移動サービスロボット「NAVii」。商品売り場まで客を誘導する機能を備える(出典:NRI)

 音声・画像センサーを備え、ディスプレイと連動した商品説明だけでなく、レーダーやマップを組み合わせることで、商品売り場まで客を誘導する機能を備える。家電量販店はスーパーのように毎日行く場所ではないため、売り場が変わると、どこに何があるのかわからなくなる。そこで、こういうロボットがあると便利だろう。またRFIDリーダーを内蔵しており、倉庫の棚卸管理も可能なので、店舗スタッフにもメリットが大きい。

【次ページ】 JALや三菱UFJ銀行は「NAO」を導入、業務特化型サービスロボットの普及は難しい?

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