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  • 2016/09/25

攻殻機動隊のリアリティから「想定外プロジェクト」攻略法を学べ

#攻殻機動隊 × プロジェクト管理(1)

特許庁やみずほ銀行のシステム刷新プロジェクトなど、規模の大きな案件の失敗談がニュースや話題になるが、プロジェクト型の仕事とは、そのほぼ全てが、思うように進行しないものである。永遠にも思える出口のない戦いは、関わる人々に苦悩を与えるもので、中でも特にひどいものに対しては「デス・マーチ」すなわち死の行進などという、物騒な呼称が与えられている。なぜプロジェクトはうまくいかないのか? なぜ計画したことが計画した通りに進まないのだろうか? TVシリーズ版攻殻機動隊「STAND ALONE COMPLEX」からそのヒントを探る。

プロジェクト進行支援家 後藤洋平

プロジェクト進行支援家 後藤洋平

予定通りに進まないプロジェクトを“前に”進めるための理論「プロジェクト工学」提唱者。HRビジネス向けSaaSのカスタマーサクセスに取り組むかたわら、オピニオン発信、ワークショップ、セミナー等の活動を精力的に行っている。大小あわせて100を超えるプロジェクトの経験を踏まえつつ、設計学、軍事学、認知科学、マネジメント理論などさまざまな学問領域を参照し、研鑽を積んでいる。自らに課しているミッションは「世界で一番わかりやすくて、実際に使えるプロジェクト推進フレームワーク」を構築すること。 1982年大阪府生まれ。2006年東京大学工学部システム創成学科卒。最新著書「予定通り進まないプロジェクトの進め方(宣伝会議)」が好評発売中。 プロフィール:https://peraichi.com/landing_pages/view/yoheigoto

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攻殻機動隊の世界に学ぶ理想のプロジェクトチームとは
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Copyright c 士郎正宗・Production I.G/講談社・攻殻機動隊製作委員会




プロジェクトにおける「想定外」という難敵を攻略する方法はあるか

 特許庁やみずほ銀行のシステム刷新プロジェクトなど、規模の大きな案件の失敗談がニュースで取り上げられ話題になることがある。あたかも係り結び語のように、「プロジェクト」といえば「失敗」という言葉は強く想起される。例えば、システム開発プロジェクトで以下のような会話が発生している場合、そのプロジェクトはデスマーチ化しつつあるといっても過言ではない。

「テスターのスケジュール、どんな感じで確保してたっけ?」
「来週からのテストにむけて予定通り人員確保してますけど、何かありましたか」
「実は、開発が終わるのがそもそも再来週だって、さっき連絡があってな」
「えええ、今からこのタイミングで、ですか… 一体どうしてまた」
「仕様が変わって相当手戻りが生じたみたいだ」
「またですか… テストの件、今からだと絶対また費用で揉めますね」
「ていうかそもそも再来週以降で人が押さえられるかどうかだな」
「ちなみに、テストケースって前書いてたので問題ないですか」
「そうなんだよな… 影響あるんだっけ」
「…一応もう一回見なおしておきますね。仕様変更内容を教えて下さい」
「いや、たぶんまだドキュメントに落ちてない。あとでメール転送する」

 なぜプロジェクトはうまくいかないのか、なぜ計画したことが計画した通りに進まないのだろうか? それは、プロジェクトにおける諸工程が、「こんなはずではなかった」の繰り返しであるということにつきる。反省だけなら、サルでもできるとはよく言ったもので、人間、一度失敗したことに対しては、必ず反省とセットであるところの対策を実行するものだ。

 トヨタ自動車のカイゼンはあまりにも有名な話だが、これは基本的に、ルーチンワーク的世界において特に有効な手法である。ルーチンだからこそ、改善によって生産性を高めることができる。

 一方で、プロジェクト型の業務においては、その状況そのものに、初めて直面する、ということが多く、結果、危険予知が及ばない領域が、かならず存在する。

 どうしても解決しようのない、致し方ない話は、「何故、そういうことを想定しなかったのか」と聞かれても、「想定の範囲になかったからです」と、同語反復するしかない。「次からは想定しろ」と言われた所で、同じプロジェクトは二度とない。二度とないからこその、プロジェクトなのである。

 この「想定外」という名の敵に対して、立ち向かうために、日夜多くのプロジェクトチームが戦っている。そこに有効な手段、手法は存在するのか。これは現代社会の多くの人に求められているテーマの一つである。

攻殻機動隊で描かれる社会のリアリティ

 理想のプロジェクトチームの組成、というテーマにおいて、映像作品にそのヒントを求めるのならば、TVシリーズ版攻殻機動隊「STAND ALONE COMPLEX」はこれ以上ない教材だ。

 攻殻機動隊はいわゆるサイバーパンクと呼ばれるジャンルの流れを組む作品だ。原作漫画から派生してアニメーション映画やTVシリーズなど多方面に展開され、いまなお強い人気を誇るタイトルである。11月末にはPC向けオンラインFPS「攻殻機動隊S.A.C. ONLINE」の日本向けサービスが提供開始されるほか、2017年3月にはハリウッド実写版「GHOST IN THE SHELL(原題)」が公開予定だ。

 あらゆるものがコンピュータネットワークに接続された社会。生身の人間、電脳化した人間、サイボーグ、アンドロイドが混在する近未来。高度に複雑化した社会で、テロや暗殺、汚職などの犯罪を事前に察知し、悪事を働くより前に犯罪者を叩く攻性の公安警察組織「公安9課」の活動を描いた物語だ。

 この作品の見どころは、物語の主役である公安9課のメンバーの有能さとチームワークである。中心人物は9課の課長、荒巻大輔、実行部隊のリーダーである草薙素子。そして、それを補佐するメンバー達。彼らが業務として対峙するのは、時にテロリスト、時に政治犯。情報戦あり銃撃戦あり、様々な難事件を解決していく。

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公安9課の実質的なリーダー草薙素子
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 これらの事件はもちろん、全てがプロジェクト型の業務である。同じ事件は二つとしてない。しかしどんな事件も、彼らにかかれば、見事に解決される。

 なぜ彼らはどんな難事件も解決できるのか? それは「そういう作品だからだ。そうでなければ、そもそも作品が成立しない」というのは当たり前かもしれない。しかし注目すべきは「それを描く過程に宿る説得力がどこにあるのか」である。

 この作品には、単純な勧善懲悪活劇以上の魅力があって、だからこそ、多くの社会人から長きに渡る支持を獲得している。つまり社会生活を送る上でのリアリティが優れた形で映像作品のなかに再現されている、ということである。

 そのリアリティが成立する理由を考える事で、「理想的なプロジェクトチームの組成」へのヒントが見えてくる。

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