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  • 2016/11/07

SBドライブはなぜ「公共交通」の自動運転実用化に取り組むのか

自動運転の実現にはレベルがある。レベル3までは人が運転し、クルマが衝突回避のブレーキなど人をサポートしてくれる。一方でレベル4以降は、人がクルマを運転せず、システムが運転するようになるという。「レベル3までと4からは、自動運転のコンセプトが大きく異なる」と語るのが、ソフトバンク子会社のSBドライブ 代表取締役 CEO 佐治友基 氏だ。佐治氏は「人が運転せずにシステムが運転する世界を目指すには、レベル4から始める必要がある」と力説する。SBドライブが目指す自動運転の方法とはどのようなものか。

フリーライター 井上 猛雄

フリーライター 井上 猛雄

1962年東京生まれ。東京電機大学工学部卒業。産業用ロボットメーカーの研究所にて、サーボモーターやセンサーなどの研究開発に4年ほど携わる。その後、アスキー入社。週刊アスキー編集部、副編集長などを経て、2002年にフリーランスライターとして独立。おもにロボット、ネットワーク、エンタープライズ分野を中心として、Webや雑誌で記事を執筆。主な著書に『キカイはどこまで人の代わりができるか?』など。

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SBドライブ
代表取締役 CEO
佐治友基 氏

SBドライブの目指す自動運転の姿とは?

 ソフトバンクの子会社でもあるSBドライブは、通信事業の恩恵を最大限に活かそうしている。今後、携帯ネットワークは自動運転車やIoTに特化した5Gに進化する。信頼性も速度も省電力性もスペシャライズドされる。そこで次に登場するのが「IoV(Interenet of Vichle)」だ。

 佐治氏は「我々は、その重要な通信である『コネクト』と、自動運転の『オートノマス』の2つの要素を有するものを『スマートモビリティ』と呼んでいる。スマートフォンのように、スマートモビリティが人々の生活を変える。そこで商用車からスマートモビリティを実現したい」と決意を述べる。

 自動運転技術の実用化、普及にあたって避けられない課題は様々だ。佐治氏は、SBドライブが目指す「レベル4の自動運転」の共通点について次のように説明する。

「レベル4で共通する点は、システムがすべてを提供するというコンセプトで、人にオーバーライドさせないこと。それを実現する環境整備も進みつつある。15年ぶりに交通事故も増え、交通違反やケアレスミスもこれ以上は減らないため、自動運転を導入するしかないというところまで来ている。国も自動運転のガイドラインを発表しており、関連省庁の後押しもあって、我々のようなベンチャーが実証実験を行えるようになった」(佐治氏)

全国の9割の路線バス会社が赤字

 現在SBドライブが注力している取り組みのひとつが、公共交通の自動運転である。中でも特にバス会社と意見交換を重ねているという。佐治氏は、バス会社の抱える課題を次のように説明する。

「(バス会社と)話をして分かったのは、全国の9割の路線バス会社が赤字であり、その運営コストのうち半分以上が人件費であること。またドライバーが不足し、新人が入ってこないことも問題だ。将来にわたりバス事業が続くという確証もない。いまは地方自治体が数億円の赤字を穴埋めし、1人しか乗らないような路線を支えている状況だ」

 SBドライブは、こういった問題に対して根本的な解決を図り、より良いサイクルを回そうとしている。過疎地域や地方都市の限定区間を往復する自動運転として、バスなどの公共交通機関向けの実証実験を行ったうえで、運送用トラックへの導入まで検討する方向だ。

「とにかく早く実行することがポイントだ。特定ルートの自動運転バスや高速道路のトラック隊列走行はレベル4でも実現しやすい。自動運転バスはシャトル型ソリューションと同じ。これが登場すると、次はドアツードアに近づく」(佐治氏)

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SBドライブの戦略。2020年を目標にして、レベル4でも実現しやすい特定ルートの自動運転バスや、高速道路のトラック隊列走行からスタートさせる

 この自動運転バスを発表すると、自治体から多くのアイデアが届いた。「シャトルバスとして、駅から工場まで従業員の送り迎え用に使ってほしい」「ホテルと駅間の送迎や、最寄り駅から観光地までのラストワンマイルに自動運転を使いたい」といった声だ。

「路線バスでは赤字なので『是非やりたい』という要望もあがっている。どこでも行ける完全無人運転でなくても、こういう部分から実現できるのではないか。逆に自動運転を多くの人々に体験してもらうことで、乗用車の自動運転のイメージができ、自然に乗れるようになるかもしれない」(佐治氏)

運行管理を支えるアプリケーションも重要

 そのうえで同社は、自動運転車に乗客が乗る際に安全に運行管理を支えるアプリケーションを提供していく構えだ。

「自動運転を実現するには、渋滞予測や交通標識との協調の仕組みも必要だ。これがないと自動運転バスは単なる孤立した機械になってしまう。道が混んでいたら、バスは急がなければならないし、道が空いていても、スケジュールどおりに定時運行することが求められる」(佐治氏)

 そこで自動運転車のデバイスと同時に、運用を支える「Smart Mobility Package」を、自治体や企業の交通事業者などに提供していくという。

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自動運転の安全な運用を支える「Smart Mobility Package」。バスの位置や車内状況を可視化したり、停止・再発進・迂回など緊急時での対応が可能

「例えば自動走行バスの位置や車内状況を可視化したり、停止、再発進、迂回といった緊急時での対応など、いろいろなアクションが行えることがコンセプトだ」(佐治氏)

 また同社は、この9月20日にSBグループのcocoro SBと共に「cocoro Drive」をリリースした。このアプリは、ブレーキングなど、自動運転車の安全走行状態を多様な形で人に伝えるものだ。現在どこを走り、次にどのようにクルマが動いていくのか、会話でドライバーに説明してくれる。

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cocoro SBと共にリリースした「cocoro Drive」。自動運転車の安全走行を多様な形で人に伝える。クルマと人の心がつながるアプリケーションだ

「クルマと人の心がつなって、ドライバーに代わるようなアプリケーションだ。街中にAIデバイスが実装され、いろいろな情報が取れるIoTチップが入り、ビックデータが集まる。さらにロボットが各所で働き、高レベルのサービスが生まれる」(佐治氏)

 これは自動運転車も街の一部であるという考え方だ。駐車場や道路で移動プログラムを処理し、人に合わせて最適に動くためには、ネットワークからは切り離せない。

「乗り換え検索、ホテル予約、飲食店予約といったサービスは、人の移動要求そのものだ。人が行きたい場所も予測できると、AIと連動させたタクシー配車やバス運行を実現できる。やがて人間の能力を超えた次世代サービスが生まれるだろう」(佐治氏)

【次ページ】自動運転は絵に描いた餅ではダメ

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