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2016年12月29日

業績も財務もピカイチ

スナック菓子「圧勝」のカルビーは何がスゴいのか

カルビーといえば、「『かっぱえびせん』でのし上がった食品業界の新興勢力」というイメージは、もう古い。「じゃがりこ」や「ポテトチップス」などのスナック菓子の分野では、人気でも実売でも不動の最大手にのぼりつめている。最近のヒット商品のシリアル食品「フルグラ」はすでに定番化して、2017年も増産を計画している。あまり知られていないが、業績も成長性も財務内容も、100年以上前からある食品業界の古参企業に追いつき、今やそれを追い越す水準に達している。

執筆:経済ジャーナリスト 寺尾 淳

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コンビニPOSデータの「ポテトチップ・ポテト系スナック」を見ると上位30位までのうち20製品がカルビーだ

(© HandmadePictures – Fotolia)


スナック菓子の分野で「圧勝」、ランキング上位を独占

 カルビー(Calbee/本社・東京都千代田区)は、昭和24年(1949年)、原爆投下から4年後の広島市の港町、宇品で創業した松尾糧食工業がルーツで、昭和30年(1955年)に社名をカルビー製菓に改めた。

 70年近い歴史を持っているが、創業から100年を超える大手企業もある食品業界では「戦後生まれ」はまだ若い部類に入る。

 最初の東京五輪が開催された昭和39年(1964年)、小麦粉にエビを混ぜて揚げた塩味のスナック菓子「かっぱえびせん」を発売すると、子どもだけでなく大人にもビールのおつまみとして受けて大ヒットし、全国区の菓子メーカーになる。

 じゃがいもが原料の「サッポロポテト」「ポテトチップス」も広く受け入れられ、テレビのヒーローや人気選手のカードが入った「仮面ライダースナック」「プロ野球チップス」「Jリーグチップス」は、子どもたちの人気を集めた。

 現在、スナック菓子の分野ではカルビーは「不動の最大手」だ。11月27日にテレビ朝日系列で放送された番組「お菓子総選挙2016」では、約1700種類から選ぶ人気投票でカルビー製品がベストテンの1位、2位、4位、5位、6位を占め、半数を制した。

 1位は「じゃがりこ サラダ」で、2位、4位はポテトチップス製品。5位には出世作のロングセラー「かっぱえびせん」が入った。他のメーカーは、受験生の縁起物として知られるネスレ日本の「キットカットミニ」が3位に食い込んで健闘し、ポテトチップスの湖池屋が7位、明治が8位、9位、森永製菓が10位に入っていたが、事実上、カルビーの一人舞台。11〜30位でも12位、15位、21位、24位、25位にランクインしていた。

「お菓子総選挙 2016」結果(テレビ朝日)
順位商品名企業名
1位じゃがりこ サラダカルビー
2位ポテトチップス うすしお味カルビー
3位キットカット ミニネスレ日本
4位ポテトチップス コンソメパンチカルビー
5位かっぱえびせんカルビー
6位堅あげポテト うすしお味カルビー
7位ポテトチップス のり塩湖池屋
8位たけのこの里明治
9位果汁グミ ぶどう明治
10位ハイチュウ森永製菓

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(クリックで拡大)

「菓子」の売上ランキング(上位20製品)

(出典:流通経済研究所「NPI Report」)

 流通業のPOSデータの実売ランキングでもカルビーは非常に強い。流通経済研究所が提供するPOSデータ分析サービス「NPI Report」によると、11月28日〜12月4日の「菓子」の売上ランキング(上位20製品)で、カルビーは「じゃがりこ サラダ」が1位になり、12位に「ポテトチップス うすしお味」、15位に「ビッグバッグ うすしお味」がランクインした。

 コンビニPOSデータの「ポテトチップ・ポテト系スナック」を見ると上位30位までのうち20製品が入って3分の2を占め、競合相手のヤマザキナビスコ、湖池屋に圧勝している(2016年12月5〜11日/出典:高度情報サービス コンビニPOSデータベース「POS BANK」)。

朝食市場で快進撃を続ける「フルグラ」

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フルグラは、今やパンに迫る勢いで浸透していっている

 カルビーの最近のヒット商品に「フルグラ」がある。前身の「フルーツグラノーラ」の商品名を「フルグラ」に改めた2011年度の売上は37億円だったが、2015年度の売上は223億円で、2016年度は300億円前後に達すると見込まれている。5年で8.1倍というかなりの急成長を遂げている。

 フルグラは「シリアル食品」で、先行製品としては1963年にアメリカから上陸した日本ケロッグの「コーンフレーク」、同じ年に参入した大阪のシスコ(後に日清食品グループに入り日清シスコと改称)の「シスコーン」があった。北米産のトウモロコシが原料で牛乳をかけて食べる手軽な朝食だが、長い間、「子どもの食べ物」とみられてきた。

 それを、70年代から日本人の大人の味覚にも合うものがつくれないか研究し続けてきたのがカルビーで、着目したのが、オーツ麦やライ麦が原料でコーンフレークとは異なる食感があり、食物繊維を豊富に含む「グラノーラ」だった。

 1989年、コーンフレーク、グラノーラなど5種類の第一号シリアル製品を発売したが、空振り。1991年には「働く女性」をターゲットにグラノーラにドライフルーツを加えた「フルーツグラノーラ」を発売したが、売れないままに20年が経過。一時は製造中止・廃番の有力候補にもなっていたという。

 それが「フルグラ」に改名すると風向きが変わり、一転ヒット商品になる。その背景には製品そのもののリニューアルとともに、マーケティング戦略の練り直しがあった。

「競合相手は日本ケロッグや日清シスコの他社製品ではない。コメやパンも含めた日本人の朝食全体の中で一定のシェアを確保する」

 そんな戦略のもと、朝食に和食を食べている消費者に「和食レシピ」のフルグラをぶつけ、健康志向に合わせて脂質を抑えたタイプも発売して、シニア層にも浸透。「大人の朝食」市場に深く食い込むのに成功している。

 シリアル食品の市場規模は537億円(2015年のシリアル生産額/日本スナック・シリアルフーズ協会)だが、「朝食」全体の市場規模は17兆円あると見積もられている。朝食づくりに時間をかけられない共働き世帯や単身世帯が増えている状況や、健康づくりで朝食の重要性が見直されている風潮も、フルグラにとってはフォローの風になった。シリアル食品の市場規模が2015年から2020年までの5年間で倍増するという予測もあり、食品の中でも今後、有望なカテゴリーである。

 シリアル食品の中で、トウモロコシではなく麦が原料の「グラノーラ」の市場は、2011年の61億円から2015年の369億円へ6.0倍も成長している(日本スナック・シリアルフーズ協会調べ)。その急成長をもたらしたのがカルビーのフルグラだった。シリアル食品全体に占めるカルビーのシェアは約4割まで伸び、事実上、トップに躍り出ている。

 2016年3月期決算で、フルグラが属する「シリアル製品」カテゴリーの売上高は241億円でカルビーの全社売上高(2,461億円)の約1割に相当する。売上に占める割合はまだ小さいものの、全社売上高の対前年度比伸び率10.8%に対し、シリアル製品の伸び率は47.7%もある。本決算の決算説明会で松本晃会長兼CEOはフルグラに関し「今期は300億円、3年後には500億円を目指す」と述べており、生産体制に積極的な投資を行っている。

 2016年3月期はフルグラだけで栃木県宇都宮市の清原工場に39億円の投資を行ったが、これは全社の設備投資の約2割に相当する。2017年はさらに、ポテトチップスを生産する北海道の千歳工場内に20億円をかけてフルグラ専用の工場棟を新設し、8月には稼働を開始させて生産能力を約1割増強する計画。それによりフルグラの年間生産額は約380億円分まで増える。

 国内販売だけでなく、訪日中国人の間でフルグラが「爆買い」の対象になった経緯もふまえ、新工場棟の稼働開始に合わせ中国、アジアへの輸出も始める予定になっている。

【次ページ】他の食品大手と比較するとどうか

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