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  • 2017/01/10 掲載

中国電脳街で「VR製品」が毎月3000万台も売れている理由

「知らない間に」世界市場を席捲

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2016年は日本でVR元年と言われたが、中国ではすでに巨大な市場が胎動している。日本ではほとんど知られていないが、2020年には中国のVR市場規模は、世界のVRユーザーの3分の1に達するという予測もあるほか、深センの電脳街・華僑北路では、VR製品の出荷量が毎月3000万台を超えているという。VR市場は今後どうなっていくのか。中国が果たす役割とは何か。中国のVR関連製品のキープレイヤー4名が一堂に介して語り合った。
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中国で活躍するVRプラットフォーマー各社のキーマンが揃い踏みした

群雄割拠!中国の巨大VR市場のポテンシャルが凄い

 11月16日に開催された「Japan VR Summit 2」(主催はグリーとVRコンソーシアム)では中国のキープレイヤーが登場し、知られざる国内VRメーカーの現在の活動と、近未来の予測などについて語り合った。

 まずモデレーターを務めたインフィニティ・ベンチャーズの田中章雄氏が、著しい発展が見込まれる中国VR市場について解説した。

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モデレータを務めたインフィニティ・ベンチャーズ LLP 共同代表 パートナー 田中章雄氏

「2020年までに中国のVRはグローバル市場の34%(820万台)を占めるだろう。信じられないかもしれないが、いまはスマホユーザーも中国が世界で最も多い。数年前、App Storeの売上は米国が一番、日本が二番で、中国は四番手だったが、いまは中国が一番だ。これと同様のことが数年後にVR市場でも起こり、リアルな巨大市場が形成されるはずだ」(田中氏)

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中国のVR市場規模の予測。2020年には世界のVRユーザーの3分の1が中国で占められるという(出典:Enfoレポート)

 田中氏が示した業界マップは、Mobile VRデバイス、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)、開発ツール、ソリューション、カメラ、投資企業などで分類されており、すでに多くの企業がVR市場に参入していることがわかる。しのぎを削っているものの、このなかで勝者は決まっていない。

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中国VR市場の業界マップ。このうち水色のキープレイヤー企業が今回のセッションに登場した

 田中氏によれば「初期ステージで、これだけ多くのプレイヤーが1つの国で存在することは稀だ」という。

クアルコムのチップも採用!わずか1年半で300名まで急成長したPico社のVR製品

 まずMobile VRデバイス分野から、トップクラスを走るBeijing Pico Technology(以下、Pico社)のCMO、Karen Zu氏が同社の取り組みを説明した。

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Beijing Pico TechnologyのCMOであるKaren Zu氏

 Pico社は2015年3月に設立したスタートアップだが、1年半で従業員数300人にまで急成長を遂げている。とんでもない成長速度だが、「それでも中国のVR企業としては、まだ人数が足りない」(Zu氏)。

 同社は、すでに2つの製品を市場に投入している。1つはスマートフォンを利用したVR製品だ。これはGoogle Cardboardと似たもの。もう1つはコントローラとヘッドセットが一体化されたオールインワンの「Pico Neo」だ。基本的にはスタンドアローンで使うが、PCと接続しても利用できる。いまは中国のみの販売だが、来年には日本と米国への進出も予定しているという。

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オールインワン型の「Pico Neo」。9軸ジャイロ、3Dサウンド、多次元没入システムを採用し、内蔵バッテリーで3.5時間の駆動が可能。Android6.0ベースで、ハイエンドスマホよりスペックは優れる。価格500ドル前後

 特筆すべきは、クアルコムと協力し、Xperia X Performanceにも採用された「Snapdragon 820」をコントローラとして搭載していること。Zu氏は「クアルコムのチップを採用したことの意味は、モバイルVRのコンシューマー時代が始まったということに他ならない。これからはサプライチェーンも強化されていくだろう」と自信を見せた。

3000以上の特許を持つ中華系VRの老舗、Glassesは手頃な価格で攻勢

 続いて台湾のベンチャーキャピタリストであり、3GlassesのCFO&執行役員を務めるGeorge Lin氏が同社を紹介した。実はVR分野で3Glassesは14年の歴史があり、中華系企業で最もノウハウを持つ企業でもある。

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3GlassesでCFO&執行役員をつとめるGeroge Lin 氏

「中国では、いきなりVRが飛躍的な発展を遂げ、いま世界の躍り場に出たところだ。私が3Glassesに入った理由は、VRが生活や娯楽に対する考え方を根本に変えてしまう技術であり、投資するに値する分野だからだ。3Glassesは、かつてHPやマイクロソフトに在籍していた社員もいるほど、技術オリエンテッドな企業だ」(Lin氏)

 10年前に中国では、VRでなく「立体模擬」という概念で、主に不動産販売や都市計画、旅行業界で用いられていたそうだ。当時、同氏は来るべきVR時代に備え、自身の企業でもハードウェアを持たないといけないと考えた。そこで研究開発に入り、2014年にPC用のVRデバイス(HMD)を発売。同社の「Blubur S1」は2999元(約5万円)で、誰でも買える値段だ。



コンシューマー向けのCardboard用ヘッドセットで普及を進めるBaofeng Mojing

 Baofengは、中国では動画プレイヤーなどで有名な企業だ。同社のグループ企業としてVRに特化した製品を取り扱うのがBaofeng Mojingだ。副社長/パートナーのZeng Xianzhong氏は、エリクソンやサムスンなどのモバイル業界を経て、2015年から同社に参画した。

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BeoFeng MojingのVice President PartnerをつとめるZeng Xianzhong 氏

 同社も中国トップクラスのモバイルVRメーカー&プラットフォーマーとして、最初にスマートフォンをセットして使うコンシューマー向けのCardboard用ヘッドセットを発売。改良を重ねて、4世代目で50万台の販売を達成した。さらに60~70元(約1,200円)と安価なコンパクト版も開発し、それが大ヒットした。

「いまのユーザーはコンシューマーが中心で、90%以上が男性。そこでコンパクト版では、紫や黄色といったカラバリを加え、女性ユーザーを15%ほど増やした。彼らは毎日平均で30分ぐらいVRを使い、半分は2Dや3Dのビデオコンテンツを観ている。Baofengには動画プラットフォームがあり、2万以上のコンテンツを提供している。また30%のユーザーがオンラインやVRゲームで利用している。我々は、安価なデバイスでVRを普及させたうえで収益を考えていく」(Xianzhong氏)。

【次ページ】日本企業が期待されていることは何か

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