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2017年07月25日

ライフロボティクスの協働ロボット「CORO」がトヨタや吉野家で導入される理由

産業技術総合研究所発のベンチャー企業であるライフロボティクスは2016年1月、産業用ロボット「CORO」を発売した。特長は、「肘がない」こと。肘がないため複雑な動きはできないが、その代わりにアームが伸縮する。その上、小型軽量で、今まで置けなかった狭小空間にも簡単に設置できる。柵で囲わなくても人間と並んで作業できる協働ロボットとして開発されたCOROは、発売開始とともに、トヨタなど国内大手企業から注目され、導入が進んでいる。

執筆:フリーランスライター 大澤裕司

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ライフロボティクス
代表取締役CEO&CTO
尹祐根(ユン・ウグン)氏
(背後にあるのはCORO)


ロボットから肘をなくし省スペースを実現

 ライフロボティクスが開発した「CORO」は、これまであるのが当たり前とされてきた肘(肘回転関節)がない産業用ロボットだ。

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協働ロボットCORO

(提供:ライフロボティクス)

 2016年1月に発売されたCOROは、垂直多関節ロボットの弱点であった肘の突き出しによる複雑でムダな動きをなくし、わかりやすい動きと動作空間の最小化を実現した協働ロボットだ。

 最大の特長は、肘回転関節をなくした代わりに伸縮する関節を採用したこと。肘がない分、動きはシンプルだが、他のロボットにはないアームの伸縮を実現したことで、一人分以下のスペースでの設置も可能にした。

 工場の生産ラインや店舗の狭小空間で協働作業を安全に行い、現場の作業効率や稼働率の向上に貢献する。

トヨタ、オムロン、吉野家などがCOROを採用

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吉野家の店舗での導入例。写真は、食器洗浄機から出てきた食器を食器格納場所まで搬送し、種類別に積み重ねているところ

(提供:ライフロボティクス)

 COROは2015年12月2日〜5日にかけて開催された「国際ロボット展」で初めて披露された。翌2016年1月に販売を始めた直後から、トヨタ自動車をはじめオムロン、吉野家、など大手企業で次々と採用されている。

 吉野家のような外食チェーンでの導入事例が目を引くが、ライフロボティクス 代表取締役CEO&CTOの尹祐根(ユン・ウグン)氏は、「今までロボットを導入していなかったところがターゲット」と言い切る。

 ロボットになじみのないところをターゲットにしているため、COROは動きをわかりやすくしてロボットに対する恐怖をなくし、操作もわかりやすくした。



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ベルトコンベヤーを流れてくるチューブ製品をピッキング(筆者撮影)

 また、COROは汎用ロボットにもかかわらず、発売当初はマーケティング上の理由から「ピッキング用」と称して販売していた。尹氏は次のように話す。

「わかりやすい言葉を使うことで、導入の入口をイメージしやすくしました。ピッキングはすべての仕事の始まりであり、お客さまにはわかりやすい。逆に、『何でもできるロボット』と言うと、何ができるのかがわかりにくくなります。あえて『ピッキング』と強調することで、ピッキングした後の動作はお客さまの方で自由に発想してもらえるようになるのです」

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チューブ製品を箱に詰めるところ。ただ箱に入れるだけでなく、仕切り内にきちんと収める

(筆者撮影)

 こう言うだけあり、導入したユーザーの使い方は実にさまざま。ピッキングにとどまらず、検査装置への製品や部品のロード/アンロード、製品の箱詰めなど多様だという。

 ユーザーの評判は良く、導入後の満足度は高い。ただ、「どこも人が足りず、予想以上に早く人手不足が深刻になってきています」と尹氏。今後、人間の側で一緒に作業できる協働ロボットの需要はますます高まるだろう。

リーマン・ショックと安倍政権がロボティクスに与えた影響

 では、COROはどのような経緯で誕生したのであろうか。きっかけは、尹氏が国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)の研究員だった2006年に、ヒト支援型ロボットをつくるプロジェクトに携わることになったことだった。

 このプロジェクトは、「今後人口が減少していく日本には人間を支える技術が必要」との認識から始まったもので、特に介護や福祉分野で導入できるロボットの導入を目指した。尹氏によれば、このプロジェクトで「肘のないロボット」がキーワードとして出てきたという。

 「肘のないロボット」がキーワードとして挙がったのは、肘は諸悪の根源であったからに他ならない。肘があることによって危ないだけでなく、広い可動範囲が不可欠になるほか、動きが複雑になり、素人には理解できない、といった問題が生じる。

「どちらかと言えば、ロボットは人間より高等に見えるところがあるかもしれませんが、危険で動きが複雑だと脅威に映ります。人間の側で動くためには、『人間の脅威にならない動物』と感じられるように動きを簡単にしてあげないといけませんでした」と尹氏は話す。

 重要なことは「動きが素人にも理解できること」であり、「理解できないこと」はリスクにしかならない。この点を意識し、これまで肘があるロボットで問題になっていたことを「肘のないロボット」で払拭するべく、COROは開発されることになった。

 ただ、産総研は研究組織であり、開発したものが売れるわけではない。事業化するには会社組織が必要であったが、事業化の話を企業に持ちかけても興味を持ってもらえなかった。そこで、2007年に産総研発のベンチャー企業としてライフロボティクスが設立された。

 これで、研究成果を事業化する体制は整った。ところが、直後にリーマン・ショックが日本を襲う。不況で人余りの状況になったことから、尹氏がそれまで取り組んできたことは全否定されることになった。

「人を助ける、人を支援するロボットを受け容れる余裕はなく、『お前は人の仕事を奪うのか』とすごく怒られました」と尹氏。いくら「人の仕事を奪うものではなく、人を支援するもの」と説明しても理解してもらえなかったことから、尹氏1人で技術開発をすることに。このような状態が6、7年続くことになった。

 状況が変わったのは2014年。安倍晋三首相がOECD(経済協力開発機構)閣僚理事会の基調講演で「日本はロボット活用のショーケースになる」と宣言した。これがきっかけで、協働ロボットが脚光を浴びることになった。

 欧米では2011年頃から、協働ロボットが重要だということから各国が実現に向けて動き始めていたが、「周りが、私が今まで言ってきたことと安倍首相が言ったことが同じだと言い始めたんですよ」と尹氏は振り返る。時代がようやく、尹氏に追いついた。

【次ページ】COROが参考にしたのは、「あの業界」の技術

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