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  • 2017/09/15 掲載

JANOG歴代会長5名が議論する、「インターネット技術の、その先にあるもの」

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インターネット黎明期の1997年からミーティングを重ねてきたJANOG(日本ネットワーク・オペレーターズ・グループ)。20周年記念の年にあたる今回は、現在はアプリックスやまほろば工房、NTTコミュニケーションズ、グーグル、NTT Americaに務める歴代会長5名が並び、これまでの20年とこれから迎える未来について語り合った。

フリーライター 重森 大

フリーライター 重森 大

メインの活動フィールドはエンタープライズ向けITだが、ケータイからADCまでネットワークにつながるものならなんでも好きなITライター。現場を見ることにこだわり、毎年100件近い導入事例取材を行ってきた。地方創生の機運とともにITを使って地方を元気にするための活動を実践、これまでの人脈をたどって各地への取材を敢行中。モットーは、自分のアシで現場に行き、相手のフィールドで話を聞くこと。相棒はアメリカンなキャンピングカー。

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JANOGの歴代会長5名が集結し、これまでの20年とこれからの未来について議論を交わした

企業の垣根を越えて結束した、その理由とは

 今年で20周年、第40回を迎えたJANOG Meetingは、ネットワーク関係者が「ビジネス抜き」に最新情報を共有できる、首都圏の大型展示会や勉強会とは一線を画した場だ(詳細はこちら)。

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アプリックス CTO
石黒 邦洋氏
 「歴代会長セッション インターネット技術の、その先にあるもの」と題されたパネルディスカッションで、モデレータである日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)の前村 昌紀氏が最初に示したテーマは「JANOG20年の歴史を振り返ろう」だった。「時間的に、20年全部なんて振り返れるはずがないのですが」と笑いながら、まずはJANOGの生い立ちについてそれぞれが語り始めた。口火を切ったのは、初代会長を務め、現在はアプリックスのCTOを務める石黒 邦洋氏だ。

「JANOGが始まる何年か前から、アメリカでNANOG(North American Network Operators Group)が開催されていました。日本には類似の大規模イベントはなかったので、NANOGが顔合わせの場所になっていましたよね」(石黒氏)

 第2代会長を務め、現在はまほろば工房の代表取締役である近藤 邦昭氏も、賛意を示しつつ当時を振り返った。

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まほろば工房 代表取締役
近藤 邦昭氏
「日本のネットワーク関係者同士なのに、NANOGでしか会わない人がたくさんいましたよね。とにかく情報に飢えていてNANOGに集まっていました。でも英語なのでよくわからないから、日本でも同じようなことをやろうという話になって。私が当時使っていたFM/Vでとりあえずメーリングリストを立ち上げました」(近藤氏)

 思いを同じくする人は多かったようで、メーリングリストには3日で300人ほどのメンバーが集まったという。そこから、具体的なミーティング開催に向けて2回の準備会合を経て、1997年11月に記念すべきJANOG 1が開催された。初回からすでに、100名程度の参加者を集めたというから、当時のネットワーク関係者が感じていた情報やつながりへの飢餓感がうかがえる。そうして集まった人々が、所属組織の垣根を越えて結束するきっかけとなったできごとが、JANOGを始めて1年くらいたった頃に起こった。

「人気ロックバンドが年末ライブにインターネットを使ってストリーミング配信するという話が出てきました。まだインターネットという言葉が広がり始めたばかりで、このライブ中継が失敗すると『インターネットなんか使い物にならない』という印象を残しかねない、と」(近藤氏)

 まだ、データセンターのバックボーンに100Mbpsの回線が使われていたような時代だ。1社だけの力で、数万人を集める人気ロックバンドのライブ配信を成功させることは難しい。JANOGのコミュニティを使い、会社の垣根を超えて回線やサーバを貸し借りして、ライブ配信実現に向けて協力した。

「このときの団結力を見て、コミュニティの力を使えば色々なことができるなと感じました。ライブ配信自体は、入り口ページが過負荷で落ちたので、帯域への心配は取り越し苦労に終わったんですけどね(笑)」(近藤氏)

スポンサー募集とホスト制採用により安定成長の道へ

「10年続いたJANOGを成長させていくために、守るべきものと変えていくところをきちんと見定めなければと思いました。自由に発言できて、立場を超えて議論、協力できるコミュニティは、守るべきものです。一方で、ネットワークエンジニアが変わっていかなければならない時代でもあったので、他の団体やコミュニティとの交流を広げていきました」(池尻氏)

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NTTコミュニケーションズ
池尻 雄一氏
 そう語るのは、10年目の節目となる2007年に会長を引き継いだNTTコミュニケーションズの池尻 雄一氏だ。クラウド技術が本格化し、ネットワークエンジニアとサーバエンジニアの境界線が書き変わろうとしていた。その中で池尻氏はJANOGの独立性を保ちつつ、仮想化技術の団体やオープンソースコミュニティとの交流を広げていった。

 またこの頃になると、規模の拡大による課題も出てきた。ひとつはコスト問題で、こちらは侃侃諤諤の議論を経てスポンサーを募ることで決着した。また運営手法についてはホスト制が導入された。毎回どこかの企業がホスト役を買って出て、そのホストのもとでイベントが企画され、運営される方式だ。

 たとえば今回のJANOG40 Meetingでは日本インターネットエクスチェンジ(JPIX)と日本ネットワークイネイブラー(JPNE)がホスト役を買って出ており、数回先までホストを希望する企業が立候補している。JANOG現会長、NTT Americaの吉村 知夏氏も驚きを隠せない。

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NTT America
吉村 知夏氏
「ビジネスに直結する訳でもないのに、ホストを希望する企業もボランティア希望者後を絶たないってすごいですよね。最近ではボランティア希望者が多すぎて、お断りするくらいです」(吉村氏)

 確かに、製品展示会のようにビジネスターゲットと出会うための場ではない。しかし、ビジネスには十分な好影響が表れると石黒氏は言う。

「確かに個別案件につながることはありませんが、JANOGでの出会いや協働がのちのビジネスには大きく響きますよ。エンジニアも会社の中だけで仕事をしていると閉鎖的になってしまいがちですが、こうした場で話を聞いたり話をしたりすることで変わっていきます」(石黒氏)

【次ページ】思ったことは口にする。思ったことを口にできる雰囲気を作っていく

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