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2017年11月14日

4Dプリンターとは何か? どういう原理なのか?3Dプリンターと何が違うのか

「3Dプリンター」の普及が本格化する中で、早くも「4Dプリンター」と表現されるテクノロジーの研究が進んでいる。3Dに「時間軸」を加えて4Dとなるわけだが、そう聞くと魔法やまやかしかのようで、イメージしにくいかもしれない。この4Dプリンターとはいったい何なのか? 3Dプリンターと何が違うのか? その原理と仕組みを解説していきたい。

執筆:フリーライター/エディター 大内孝子


4Dプリンターで避けて通れない形状記憶合金の基礎

 3Dプリンターは、光(紫外光、UV光)で硬化する液体樹脂の登場により実現された成形技術を採用している。3Dプリンティング技術の進化と普及は製造プロセスに大きなインパクトをもたらした。現在では、カーボンや金属などを用いて耐久性の高い成形物も出力できるようになっている。

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2015年のミラノサローネに出展された3Dプリンター製ロードバイク「DFM01 OUSI」デザインスタジオ「Triple Bottom Line」および「N&R Folding Japan」が設計・デザインを行い、DMM.make AKIBAにて試作および製作が行われた

(出典:Triple Bottom Line)


 さらに、材料として形状が遷移する素材を用いれば、成形後に形を変えることができる。そう考えるのは当たり前だろう。成形後に形状を変えることができれば、たとえば、宇宙空間のような極限環境での製造プロセスに大きく貢献する。これが4Dプリンターの基本的な考え方だ。

 まず、「形状が遷移する」という現象について考えてみよう。

 熱や光など、特定のある条件によって形状に変化する素材があることは、古くからすでに知られている。すぐに浮かぶのは形状記憶合金だ。変形を与えても、特定の温度以上では元の形状に回復するという性質を持つ。

 形状記憶という現象が発見されたのは1951年。その後、関連する研究が盛んに行われることになるが、金属における形状記憶は「マルテンサイト変態」に起因することが明らかになり、1980年代に実用化が進んだ。医療製品の材料として、また元の形状に戻る力を活用し、バネやコイル、アクチュエータでの活用が進んでいる。身近な製品としては、メガネのフレームなどが有名だろう。

 さて、ここまでは金属の話だが、やがてセラミックなど非金属の高分子材料にも形状記憶の現象が現れることがわかってくる。それを活用し、形状記憶樹脂として用いるという動きが、1990年代にはすでに活発になっていた。

 金属の場合とは異なり、高分子の場合、形状記憶をもたらすのは「架橋」と呼ばれる構造だ。「ピタゴラスイッチ」の佐藤雅彦氏が監修し、EUPHRATESが制作した物質・材料研究機構(NIMS)のPR動画「未来の科学者たちへ」の中で、高分子材料の形状記憶についてわかりやすく解説されている。



 映像の中で示されるのは、青いプラスチック片をお湯につけ柔らかくして自在に変形することができるというもの。そして、再度同じ温度を与えると、元の青いプラスチック片に戻ってしまうという、まさに形状記憶の現象である。

 高分子の形状記憶については、よくゴムを元に解説される。引っ張ったり、力をかけると数倍もの長さに伸びる。かけていた力を取り除くと元の状態に戻る。いわゆる「ゴムの弾性」だが、たとえば、引っ張った状態で急速に冷却すると弾性がなくなり、その状態で固まってしまう。しかし、元の温度に戻すと弾性を取り戻し、引っ張られ伸びた状態も元に戻る。いくども繰り返しが可能な現象だ。

 これは、ポリマーが持つ「架橋」という構造が基点となることから起こる現象だ。プラスチックやゴムなど高分子化合物はポリマーの鎖が集まってできており、要所要所で鎖をまとめるために橋を架けて固定する。

 このとき、最初に橋を架けられたときが一番安定した状態であることから、引っ張るなど力を加え、変形させた際にそこに戻ろうとする。このとき、熱を与えるタイミングで、引っ張られた状態を維持したり、元の形状に戻したりというように自在に形状を遷移できる。

 皆さんの中には「形状記憶」と聞いて、ワイシャツを想像する人もいるだろう。「形態記憶Yシャツ」は形態安定加工と呼ばれる、布繊維をアンモニアやホルムアルデヒドなどで処理し、ポリマー間の架橋反応により構造を安定化させる加工を施したものだ。糸の段階で形態安定加工を施したり、あるいは金属などを編み込んだ形状記憶布もある。

4Dプリンターで何ができるのか?

 では、本題の4Dプリンティングに戻ろう。

 4Dプリンティングという概念を広く世の中に提案したのは、MIT研究者のスカイラー・ティビッツ氏だ。彼が2013年に行った「世界を変える4Dプリンティング」と題したTEDトークが有名だが、MITのほかにも多くの研究機関が3D+1の4Dプリンティングを研究している。また、米国陸軍研究所が4Dプリンティングを研究するハーバード大学、ピッツバーグ大学、イリノイ大学らの研究チームに、合わせて85万ドルの助成金を出したことも大きなニュースになった。



 4Dプリンティングが「最終の製品が環境から受ける刺激に反応してそれ自身の構造に応答して変化する」ことだとすると、まず、形状記憶や形状遷移を起こす素材(金属、ポリマーなど)を含めた材料を使った3Dプリンティングが考えられる。つまり、形状記憶ポリマーなどによる、新しいフィラメント(3Dプリンタで造形する際の材料)の開発だ。

 一方、スカイラー・ティビッツ氏が率いるMITのSelf-Assembly Labが進めている4Dプリンティングは、生物に見られる自己組織化(スマートアセンブリ)という現象を、任意的に、ヒトのスケールで実現しようというもの。最終形状への変化をプログラムできる素材/機構の開発、ヒトの空間で自己組織化を行うプロセスの開発だ。

 こうした生体模倣(生物模倣)と呼ばれる研究分野は以前からあった(生物の組成や形状、機能を工学技術として応用しようというもの)が、2000年代初頭からのナノテクノロジーの急激な進化で、一気にDNAレベルでの解析・応用まで進んでいる。スカイラー氏は、こうしたナノテクノロジーと3Dプリンティングと組み合わせることで、新しい製造プロセスを提示しようというのだ。

 4Dプリンティングといったとき、現状、大きくこの2つの流れがある。成形後に変化するという点では同じだが、やっていることはかなり異なる。

形状記憶の性質を有するフィラメントの難しさ

 3Dプリンタが実現されていて形状記憶ポリマーもすでに存在するなら、形状記憶の性質を有するフィラメントをさっさと作ってしまえばいい、と思うかもしれない。実際はそこが難しいところで、3Dプリンティングにも光造形、熱容解積層法(FDM)、といくつかの方式があり、それぞれに適した材料(フィラメント)の性質は異なる。

 そこに、形状記憶ポリマーの形状記憶・回復プロセスに必要な温度変化や物性が加わってくるわけで、最終目的、その形状記憶ポリマーの3D出力をどう使用するのか、どういう最終製品にしたいのか、という観点も加わってくる。

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高分子の熱特性

(「形状記憶樹脂」入江正浩(色材協会誌 Vol. 63 (1990) No. 5 P353-359)より引用)


 たとえば、FDMで出力物の材料として用いるフィラメントには、その仕組み上、収縮率が小さいことが求められる。FDMでは高温で溶かした樹脂をノズルから吐き出して、順に積層していくため、積層の途中、高温から徐々に冷えていく段階で収縮率が大きいと形を保つことができない。

【次ページ】4Dプリンティング革命の本質はどこにあるのか

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