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- 2018/01/19 掲載
総務省の未来予測、2030年以降の情報通信技術はどうなっているのか
連載:「東京五輪後」をどう生きるか
国もテクノロジーによる社会課題の解決を検討
2020年以降、日本社会では人口減少・高齢化が一段と本格化する。それに伴い、経済や産業・地方自治など、あらゆる面で困難な課題が生じると指摘されている。この状況を踏まえ、総務省は2017年11月、新たに「IoT新時代の未来づくり検討委員会」を設置した。本委員会では、2030~2040年頃の未来社会を展望しつつ、IoT・AI・ロボットなどのイノベーションの社会実装について議論する。また、年齢・障害の程度などを超えて誰もがその能力を発揮し、豊かな生活を享受できる社会の実現に向け、取り組むべき情報通信政策のあり方を検討するという。
主な検討項目は、以下のとおりだ。
本委員会では、日本は今後直面するさまざまな社会構造課題について、生産面(サプライサイド)と需要面(デマンドサイド)から、以下のように課題を整理している。
・生産面(サプライサイド)…技術力・資本力・労働力などが低迷し、総生産は減少傾向にある
・技術力…日本は技術立国ではあるものの、近年は技術力が低下する傾向も見られる。サービス業を中心に生産性が低く、ベンチャーなどによる新陳代謝も低調
・資本力…建物や機械器具などの有形資産の投資割合が高く、情報システムやソフトウエアなどの無形資産の投資割合が低い状況
・労働力…人口減を背景に労働力人口も長期的に減少傾向にある中、国際的にみて女性の労働力率が低い。特に子育て世代で低い傾向にある
こうした課題に対し、政府ではイノベーションの促進、無形資産への投資が低い資本力ではデジタル分野への投資拡大、労働力減少では女性などの活躍推進やAI・ロボット活用などの対策を掲げている。
一方、需要面(デマンドサイド)の動向では、民間消費や民間投資、政府支出、輸出入でみると、総需要も低迷している。企業の設備投資はリーマンショック前の水準を回復したものの、長期的には横ばいの状況である。
中国をはじめとしたアジア諸国では、企業による投資が飛躍的に拡大している中、民間投資を継続的に喚起できるかが課題となっている。
デジタル分野での競争力強化とデータ活用がカギ
また、政府の財政事情をみると、日本政府の債務残高は先進国の中で最高水準となっており、財政出動による需要の喚起は、長期的には持続困難となるというおそれがある。需要面(デマンドサイド)の動向を踏まえ、人口減少や緊急財政を前提としたときに、どのように将来の需要創出を図るかが大きなテーマとなっている。
産業・地域づくり、人づくりの動向をみると、産業づくりでは、時価総額上位は10年前では資源や銀行が中心、現在はICT企業が中心で米中の企業が上位を占めており、日本企業の存在感は低い状況だ。
特に中国企業の勢いが鮮明になっている。中国最大手ECサイト「アリババグループ」は、2017年11月11日に、毎年に行うタイムセール「独身の日」に、過去最高となる1,682億元(約2.9兆円)の総取引額を記録するなど、大きな話題となった。
日本企業の時価総額が低迷し、巨大グローバル企業がプラットフォームにおける影響力を増す中、デジタル分野での競争力強化をどう図るか。また、イノベーションの成果を即座に取り入れ、データを活用する社会へどう移行していくべきかが大きなテーマだ。
地域づくりでは、地方圏に限らず、東京圏をはじめとする都市部においても人口の減少局面に入っている。地域コミュニティでの基礎的サービスを維持していくために、ICTをどう活用していくか。さらに、限られた施設や人材などのリソースを、地域を越えてシェアしていくために、ICTをどう活用すべきかが課題だ。
人づくりでは、データサイエンスなど、IoT時代に必要となるスキルが次々と進化している。IoTやAI、ロボットなどが当たり前の時代に求められるスキルを、確実に身につけるための教育環境をどう整備するか。
急激に増加する高齢者、障害者などを支援するIoT・AI・ロボットなどを包摂した生活環境をどう構築していくか。このようなIoT時代に適したスキルのあり方や、生活環境のあり方についてのテーマが挙げられている。
【次ページ】ロボット・AIの社会進出がさらに進む
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