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  • 2018/01/26 掲載

ロボット業界は今後どうなる? 2017年の70社以上の事例などから読み解く

森山和道の「ロボット」基礎講座

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2018年も既に1ヶ月。ロボットイベント「第2回ロボデックス」も盛況に終わった。前回のこの連載で取り上げた「mujin」のブースは黒山の人だかり。年々深刻化する高齢化や人手不足、迅速な意思決定を行える中国市場の伸びなどを背景に、自律搬送台車等は本格普及期を迎えつつある。また、どうやら夏頃には50万円程度のアシストスーツの類が新たに数社から製品化されそうだ。ほかにもさまざまな領域で自動化が今年も進むだろう。ここでいったん2017年を振り返るとともに、2018年を展望しておきたい。

執筆:サイエンスライター 森山 和道

執筆:サイエンスライター 森山 和道

フリーランスのサイエンスライター。1970年生。愛媛県宇和島市出身。1993年に広島大学理学部地質学科卒業。同年、NHKにディレクターとして入局。教育番組、芸能系生放送番組、ポップな科学番組等の制作に従事する。1997年8月末日退職。フリーライターになる。現在、科学技術分野全般を対象に取材執筆を行う。特に脳科学、ロボティクス、インターフェースデザイン分野。研究者インタビューを得意とする。

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大きく前進した2017年のロボットシーンを振り返る


基本資料:まずは事例を眺めることをおすすめ

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 この連載は「基礎講座」なので、まずは基本資料を紹介する。国内だけではなく中国などでも進む生産年齢人口の減少、人手不足を背景に、空前のAIブームに後押しされるかたちでロボットブームは続いている。

 各種報道も多いが、具体的にどのように使われているのか知りたい方には、まず「ロボット新戦略」のもと、日本ロボット工業会がまとめている「平成28年度ロボット導入実証事業」採択事例紹介「同事例紹介ハンドブック2017」をご覧になることをおすすめしたい。企業での最近の活用事例がまとまっている。

 経済産業省と日本ロボット工業会は「ロボット導入促進のためのシステムインテグレータ育成事業」も進めており、その事業者たちによるサービスロボットを集めた場「ロボットセンター」も年末には開き始めた。複数社のロボットを実際に比較検討できる場は、今後も増えると思われる。

 また、経済産業省はロボットシステムインテグレータ(ロボットSIer)のスキル標準・プロセス標準をまとめた。ロボットシステムインテグレーション導入プロセス標準「RIPS」を定め、作業工程や作成するドキュメントを標準化。ロボットシステム構築プロセスの最適化を支援する。各資料はロボット活用ナビからダウンロードできる。

実証実験:空港、ショッピングモール、都庁などで実施

 空港での実証実験が進められている。サイバーダインは2月に成田で腰装着型を試験導入した。4月以降は2016年11月からANAに提供していた支援用スーツの貸し出し台数を増やした。

 パナソニックも搬送ロボット「HOSPI」を、協栄産業とココロは旅行受付カウンターでアクトロイドを使った受付ロボットの実験を行なった。羽田空港ロボット実験でも中西金属工業など各社の掃除ロボットなどが導入された。

 大阪市は5月に大阪市の「IoT・RTビジネス実証実験支援事業」の一貫として、複合型商業施設「アジア太平洋トレードセンター」をロボット開発事業者などへ実証実験の場として開放する「AIDOR EXPERIMENTATION」を実施すると発表した。2017年5月から2018年3月までが開催期間で、70店舗やオフィス、物流センターなどで実験ができる。

 ノジマとスーパー三和は、アメリカのFive Elements Roboticsの「Budgee(バジー)」を使った実証実験を5月にノジマモール横須賀店内で行った。客のあとをついていくショッピングカートだ。



 パルコも日本ユニシスが開発したロボット「Siriusbot」を使った案内や、RFID(ID情報を埋め込んだタグから、近距離無線通信を使って情報をやり取りする仕組み)を使った棚卸し実験を行った。



 富士通も「自律型店舗ロボットソリューション:MATEY」を開発している。スーパーで実験しているという。

 屋内で人のあとをついていったり、商品の棚卸しを手伝うロボットの実験は今後も続くだろうが、問題は実験をどうやって抜け出すかだ。なおウォルマートは既に全米50店舗以上にBossa Nova Roboticsの棚管理ロボットを導入して試験運用を行っている。



 7月にはJR東日本が有限責任事業組合「JREロボティクスステーション」を設立した。案内や手荷物搬送、清掃や警備など駅構内で使われるサービスロボットの開発促進を行う。

 東京都も「都庁舎サービスロボット実証実験」を2017年11月から2018年2月下旬までの日程で実施している。日立製作所の「EMIEW3」、ハタプロの小型ロボット「ZUKKU」などを使っている。

NEDOと経済産業省が推進する、ワールドロボットサミット

 NEDOと経済産業省は4月にWorld Robot Summit(WRS)のドラフトを公開。意見募集を行った。また国際ロボット展で展示を行い、未来コンビニや災害対応など各種目についてトライアル競技も行っている。競技内容の詳細はこちらの記事をご覧いただきたい。今後2020年の本番に向けて、各種イベントもさらに行われていくことだろう。



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ヒューマノイド:米、韓、露など世界各国で続々開発

 トヨタや川崎重工業が国際ロボット展で披露した新しいヒューマノイドロボットについては各所で報じられているとおりだ。どちらも研究用プラットフォームだと思うので今後の発展と展開に期待したい。



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 Boston Dynamicsは新しいヒューマノイドの「Handle」を2月に投資家向けにビデオで公開。同社は2013年12月にグーグルに買収されていたが、2017年6月にはソフトバンクグループが同社と、脱東大ベンチャーのSchaftを、グーグルの親会社であるAlphabetから買収すると発表した。そしてソフトバンクロボットワールドの前日には次世代Atlasがバク宙する様子を動画で紹介した。



 同社のヒューマノイドがどう使われるかはわからないが、4脚ロボットのSpot miniにはソフトバンクロボットワールドで、竹中工務店ら3社が興味を示していた。



 韓国 Hankook Mirae Technologyの、人が搭乗できる4mヒューマノイド「METHOD-2」はamazonの社内イベント「MARS」カンファレンスに呼ばれ、ジェフ・ベゾスCEOがロボットを操作している様子が報じられた。価格はおよそ10億円程度だという。



 KAISTはヒューマノイドロボット研究センターを1月に開いている。所長は呉俊鎬(オ・ジュンホ)教授。

 オレゴン州立大学発のAgility Roboticsはダチョウのような二脚歩行ロボット「Cassie」を2月に発表。研究用に市販もしている。



 いっぽう4月には、ロシアで開発されている(FEDOR(Final Experimental Demonstration Object Research、ヒョードル)」という軍事用ヒューマノイドロボットが両手で拳銃を撃つ様子が公開された。大きな反動がある拳銃を撃てること自体驚きだが、このヒョードルはハンドル操作そのほか細かい作業もできることがこれまでに動画で公開されている。



協働ロボット:オリックス・レンテックの「RoboRen」、NECや富士通も

 2017国際ロボット展に関する筆者のレポートでも触れたとおり、協働ロボット市場は拡大を続けている。Inkwood Researchはこの市場は2025年まで年平均49.14%で成長していくとレポートを出した。

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 グローリーは2011年からカワダロボティクスの協働ロボットを活用してきた経験を生かし、導入支援事業に参入、事業を開始した。3月には最初の事例として、資生堂が経済産業省「平成28年度ロボット導入実証事業」を活用してメーキャップ製品の組み立て工程に協働ロボットを導入したと発表された。

 アメリカのリシンクロボティクスは「Sawyer(ソーヤー)」をアップグレード。制御ソフトを「Intera 5」にした。ユーザーにとって使いやすいものにしたという。日本国内では2016年以降、住友重機械工業が取り扱っている。



 Chowboticsはサラダロボット「Sally」のために500万ドルを調達。



 3月に行われたイベント「リテールテック2017」では、NECと富士通がそれぞれロボットを使った小売店舗の業務支援ソリューションを出展した。NECはFetch Roboticsのロボットを使い、富士通はMATEYというロボットだった。

 2016年4月から産業用ロボットのレンタルサービス「RoboRen」を展開するオリックス・レンテックは搬送ロボット、人協働ロボットなどの常設ショールーム「Tokyo Robot Lab.」と「Tokyo Robot Lab.2」を開設している。日本電算シンポの「S-CART」や、オムロンの搬送ロボット「LD」シリーズなども取り扱う。今後も各分野に「RoboRen」を拡大していくという。

 スイスABB社は双腕ロボット「YuMi」のアイデアコンテスト「ABB YuMi Cup 2017」を実施した。最優秀は立命館大のチームの「サイダーバー」となった。同様のハッカソンはデンソーも行っている。協働ロボットの使い方、アイデアはまだまだ不足しているのかもしれない。逆に言えばアイデア次第でいくらでも広がるということだ。

廃炉への取り組み:東芝「ミニマンボウ」、菊池製作所×早大「オクトパス」など

 福島第一原発廃炉のためにロボットを使った燃料デブリの状況調査が行われている。1号機、2号機への自走式ロボットによる調査が行なわれたがロボットやカメラに不具合が発生。結果は芳しくなかった。今後も竿先にカメラをつけた装置で調査を行う予定だ。なお3号機には東芝の水中探査ロボット「ミニマンボウ」が投入された。2019年度にデブリを取り出す方法などを決めるとされているが道のりは遠い。



 菊池製作所と早稲田大学発のフューチャーロボティックスは「オクトパス」という4腕4脚ロボットを開発している。2019年度の実用化が目標だ。

 日立GEニュークリア・エナジーや中外テクノスらはデブリ取り出しを視野に入れた水圧を使った「筋肉ロボット」を開発している。

【次ページ】建設・物流・介護・家電・清掃など各業界の2017年ロボット動向

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