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  • 2018/06/27

上司と部下の「信頼チキンレース」、終わりは来るのか?

#上司と部下

売り上げ、ノルマ、KPI、目標を掲げ、部下がそれらを達成するよう一挙手一投足を見張るマネジメントはもう時代遅れだ。しかし、上司が部下に裁量を与えてよりよい結果を出すための最適解はまだ見つかっていない。そんな状況で発生するのが、上司が先に部下を信頼すべきか、部下が先に上司を信頼すべきなのかを問う「信頼チキンレース」だ。組織がより良い結果を出すために、上司と部下が進むべき現実的な方向を考える。

人材・組織コラムニスト 後藤洋平

人材・組織コラムニスト 後藤洋平

1982年大阪市生まれ。東京大学工学部システム創成学科卒。在学中は東大ブランドショップ立ち上げに参加など活動多数。卒業後はコンサルティング会社にて数々の新規事業立ち上げに参画。「どうして売れるルイ・ヴィトン」「挑戦者の本能と時間との競争」等、著書多数。『予定通り進まないプロジェクトの進め方』(宣伝会議)が発売中。

予定通り進まないプロジェクトの進め方
・著者:前田考歩、後藤洋平
・定価:1,944円 (税抜)
・ページ数:256ページ
・出版社: 宣伝会議
・ISBN:978-4883354375
・発売日:2018年3月28日

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上司は部下を信じられず、部下も上司を信じられない。そんな状況では「どちらが先に相手を信頼するのか」というチキンレースが始まる
(画像:いらすとや)

「性悪説マネジメント」の限界

 性悪説にのっとって、送ったメールの数から歩いた歩数まで報告させ、会社を経営するマネジメントはどうも違うらしい、という風が吹いている。これは現状認識として間違っていないだろう。

 何はなくとも売り上げだ、ノルマだ、KPIだ、目標達成だという「管理」は性悪説に立っていて、仕組み化しやすい。だが、むちゃぶりと忖度、ごますり、責任不在、といった副作用が発生する。旧態依然たる上司部下の関係性こそが諸悪の根源なのだ、という論には一定の説得力がある。

 先日とある人からこんな話を聞いた。土を整えて畝を作る畑は、言ってしまえば「砂漠」と変わらない。あえて耕さず、雑草含めていろいろな植物、また昆虫、動物などを共生させることで、変化に強い環境を生み出す。その中で適した作物を育てる農法が静かなブームを生んでいるのだそうだ。

 これを聞いて、筆者は職場環境を連想した。

 KPIでがんじがらめにしばる管理は、ここでいうところの「整えられた畑」=「砂漠」だ。業績を均質にするにはいい方法だが、そもそも人の心もスキルも均質ではない。それでは環境変化に弱くなるし、連作障害その他の問題が引き起こされる。

「性善説マネジメント」不在の理由

 昨今支持されるのは、性善説に立って互いを信頼し、前向きに誠実に、目の前の苦労を乗り越えていくような関係性を築くマネジメントだ。しかし「管理のない理想の上司部下関係の作り方」はいまのところ見つかっていない。再現性のある方法論やフレームワークが乏しく、世に出るエピソードは特定の個人の成功譚ないし職人的な技術にとどまっている。

 一方で、クレドやマニュアル、社員研修、朝の社訓斉唱で人の心までも均質にするのだ、その方が正しいのだ、という意見のほうが現状では実績がある。

 性悪説マネジメントにはノウハウと実績があるが、性善説マネジメントにはそれらが乏しいのだ。

上司と部下の「信頼チキンレース」

 ここまで見てきたように、マネジメントにおいて大事なのは「互いへの信頼」だ。そして次に問題になるのが、上司と部下、どちらが「先に」相手を信頼するかだ。

 自分が先に相手を信頼したとして、思った通りにことが運ぶという保証はない。でも自分が相手を信頼しないなら、相手も自分を信頼しないだろう。こうして、上司と部下の「信頼チキンレース」が始まる。

 信頼チキンレースにおいて、上司と部下はそれぞれ下記のような選択肢を持つ。

・上司の選択肢:
「信頼して任せるマネジメント」「信用せず管理するマネジメント」

・部下の選択肢:
「自発的に責任をもって頑張る」「嫌々ながら従う」

 上司と部下は、それぞれが利得を最大化するように自分の行動を決める。

 実はこんなふうに定式化すると、「信頼チキンレース」は有名な「囚人のジレンマ」問題と同じ構造を持つことがわかる。

上司と部下の「囚人のジレンマ」

 囚人のジレンマ問題とは、ゲーム理論におけるモデルの有名な話だ。

 囚人のジレンマ問題では、2人の人間がいて、互いに協力するか、しないかを選択できる。お互い協力する方がよい結果になることが分かっていても、協力しない者が利益を得る状況では互いに協力しなくなる、というジレンマである。各個人が合理的に選択した結果が社会全体にとって望ましい結果にならない、ということを説明する理論だ。

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囚人のジレンマ

 上司が部下を信頼し、部下が業務にコミットする関係は両者に大きな利益をもたらすだろう。上司は細かいことをチェックする面倒から開放され、より創造的な課題に取り組むことができる。部下は大きな裁量を持ち、信じる道を進んで結果を出す。そうするうちに利益が出て、その利益をみんなでわけあう。

 このような信頼関係は理想だが、なかなか実現しない。なぜなら上司が部下を信じて手綱を放したら、部下がサボって事故が起き、事業が失速してしまう、と上司が信じているからだ。部下の不始末は結局わが身の不始末。そうなるぐらいだったら最初から自分でやるか、マイクロマネジメントで部下をがんじがらめにした方がいいではないか、という話である。

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上司はリスクを回避するために「管理」へ、部下は信用なき「管理」により「嫌々」スタンスへ

 部下は部下で「任せる」という言葉に対して慎重になる。彼ら、彼女らは上司が本当にうまみがある仕事をそうそう部下に任せないことを知っている。なぜなら、今どきのマネージャーはほとんどが名ばかりの「プレイング・マネージャー」であり、潜在的にはライバル関係にあるからだ。そこで「任せる」なんて美辞麗句を並べられて、はいはいとついていくと、たいていは面倒な顧客の押し付け、炎上案件の丸投げなどで、ろくなことがない。

【次ページ】囚人のジレンマを終わらせる方法

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