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  • 2018/12/19 掲載

「クラウドが安い」は誤りに、ガートナーが語るクラウドとオンプレの最適バランス

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クラウドコンピューティングが出てきた頃の「とにかくクラウド化したほうがコストを抑えられる」という認識は誤りになりつつある。時代の趨勢はクラウドに移りつつあるなかで、どのようにクラウドを使うのが最適なのか。ガートナーのリサーチ ディレクター、リック・グリーンウォルド氏が、コストモデル、デプロイ方法、アーキテクチャを考察する。
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「クラウドが安い」という認識は誤りだ
(© metamorworks - Fotolia)


クラウドを使うとコストモデルを柔軟につくれる

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ガートナーのリサーチ ディレクター、リック・グリーンウォルド氏
 クラウドとオンプレミスとの基本的な違いは、クラウドは「借りる」、オンプレミスは「購入する」ということ。「借りる」場合の賃料は、月々の場合もあれば年間の場合があるが、いずれにせよ、これが一番の違いだ。

 「ということは、ユニークなコストモデルをつくれるということでもある。例えば、使用料のみを払う、あるいはリソースを入札で購入するということも可能だ」とグリーンウォルド氏は話す。

クラウド・デプロイメントのメリットとデメリットは何か

 メリットとしてはまず、クラウドのほうが迅速に調達可能ということ。クラウドのデータベースサービスを、1~2時間程度でデプロイすることが可能だ。ただし、場合によってはこのメリットのインパクトは小さい。例えば、10年にわたって使うシステムのデプロイが2時間だろうと2日だろうと、あまり変わらない。

 もう一つは、ソフトウェアのアップデートがクラウド側でなされるため、自分でする必要がなくなること。ただ、オンプレミスと同様、アップグレードの際にテストは必要となる。弾力性・拡張性が高く、アジャイル開発に適しているほか、使った分だけ支払えばよいこともメリットといえるだろう。

 一方デメリットはというと、クラウドに載せたものは、コントロールできなくなることが挙げられる。例えば、データベースのコンフィギュレーションを過去のものに戻すことができない。ただ、それが常に、誰にとっても問題となるわけではないともいえる。

 新規プロジェクトではなく、オンプレミスから移行するケースを考えると、互換性の問題で、オンプレミスでやってきたことがそのままクラウド上ではできない可能性が出てくる。それがたとえ同じベンダーであってもだ。

 また、クラウドを使うということは、システムをつなぐ社内ネットワークをインターネットに置き換えたということでもあるので、オンプレミスで難なく巨大なデータを送っていた場合、そのままのアーキテクチャがクラウドに持ち込めない可能性がある。

 国の規制の問題もある。国によっては、データは国内に留めるべきという規制を持っているところもある。クラウドの基本は、データがどこにあるか分からないということなので、データのロケーションが問題となる場合もあるだろう。

企業はクラウドをどう使うようになるか

 ガートナーでは、2015年に「2017年までに、新しいデータベース・デプロイメントの70%以上が、1つ以上のユースケースでクラウドを活用する」という仮説を立てた。

 現状では、特に中堅・中小企業にとって、クラウドは意味のある選択肢となっている。オンプレミスで構築するとして、DBAを1人雇うだけでも大きなコストになるからだ。

 2015年当時に考えられていた「クラウドを使わない理由」には、遅延やデータのスループットの問題が挙げられていた。しかし、新しいアプリケーション、新しいデータベースのデプロイメントなら、最初からクラウドを念頭に置いて設計できるため、問題とはならない。

 また、3年前は、セキュリティに関する不安・懸念が特に大企業にとって最も大きかったが、今では不安要素としては4番目、5番目くらいになっている。「クラウドが何か変わったわけではないが、クラウドが認知され、恐怖心を持たなくなったということだと考えられる」とグリーンウォルド氏は話す。

 では、少し先の未来はどうなるか。ガートナーでは、「2020年までに、自社の情報基盤をパブリック・クラウドで管理する組織の75%は、クラウド・プロバイダーにロックインされ、他のプロバイダーへのデータの移行が困難かつ高コストになる」という仮説を立てている。

 グリーンウォルド氏は、それが現実のものとなる理由を2つ挙げた。1つは、選択肢が多くないこと。アマゾンとマイクロソフトの二大巨頭で相当のシェアを占めるためだ。

 2つ目の理由は、単一のプロバイダーに集約して使い続けたほうが、すべて同じ環境で運用でき、パフォーマンスが上がるから。より多く使ったほうがディスカウントが利きやすくなり、コスト面でもメリットを得られる可能性がある。

 「多くの大企業は基本的にクラウドへ移行する。これまでOracleとMicrosoft SQL Serverの両方を使っていたように、大企業は複数のクラウド・プロバイダーを使うようになるだろう。その場合、ロックインはそれほど大きな問題にはならないというのがガートナーの考えだ」とグリーンウォルド氏は話した。

最新の価格設定モデルは3タイプ

 「クラウドコンピューティングが出てきた時は、サーバのような価格付けになっていた。一定の容量のストレージとCPU、メモリがいわゆるパッケージになっており、サーバをインハウスで購入するのと同じような価格設定モデルだった」とグリーンウォルド氏は振り返る。

 しかし現在は、その頃とは異なる価格設定モデルに移り変わっており、主に3つに分類できる。

 1つは、「ノード・ベース」のモデルだ。この場合、特定のCPU、ストレージ、メモリをある程度確保してもらい、そこに対して料金を払う形になる。時間単位で払うこともあれば、1カ月0複数年という期間を定めた価格付けもある。長ければ長いほど安価になるのに対し、アドホックのアクセスにした場合には時間当たりの価格は高くなる。

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最新のクラウド価格設定モデル

【次ページ】価格設定モデルの比較

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