ロボットに目や頭脳をもたらす3次元ロボットビジョンセンサ
2011年3月に誕生した世界初の3次元ロボットビジョンセンサの「TVS」シリーズ。開発したのは、滋賀県草津市に本社を置くKyoto Robotics。2000年12月に立命館大学情報理工学部 教授の徐剛氏が設立した(大学は現在休職中)。
3次元ロボットビジョンセンサとは、ロボットの目や頭脳の役割を果たすもので、カメラやPC、ロボット連携ライブラリ、プロジェクタなどで構成される。
「TVS1.0」を皮切りに、2012年8月に「同2.0」、2014年3月に「同3.0」、18年6月に「同4.0」がリリースされている。現在販売されているのはTVS2.0以降。これまでに自動車、自動車部品、電機、鉄鋼、食品業界など約150社で導入され、100社以上で実稼働している。
知能ピッキングロボット事業で物流分野を開拓
「TVS」シリーズを組み合わせたロボットの代表的な使い方は、ピッキングである。たとえば、工場で鍛造製の重い自動車部品をピッキングし運搬する、といった具合だ。
しかし現在、同社が力を入れているのは、FA(ファクトリー・オートメーション)ではなく物流である。17年4月から知能ピッキングロボット事業を開始し、ロボットと「TVS」シリーズを統合したシステムで物流倉庫でのデパレタイズ(パレットなどからの荷降ろし)とパレタイズ(カゴ台車などへの荷物の積み付け)に活用することを積極的に提案しているところである。
デパレタイジングでは、把持位置姿勢を自動的に計算し、荷物を取って降ろす。複数種類の段ボールが混載されたパレットから荷物を1つひとつ認識して降ろすほか、段ボールが隙間なく詰まった状態でも1つひとつの段ボールを認識。段ボール箱の寸法・重量も自動計測することが可能だ。
パレタイジングでは、段ボールのサイズや重量を踏まえ、どこに何を置けばムダなく安定した積み付けができるかをコントローラ上で自動計算し実行する。「段ボール箱が倒れたり変形したりすることがない積み方から、最適なものを選択して実行します」と徐氏は言う。
ロボットがデパレタイジングしピッキングした段ボールをコンベヤに載せるデモンストレーションを見たが、ロボットが段ボールをピッキングする前に、光が一瞬、上から照射された。この光はプロジェクタから照射されたもの。発光した瞬間に3次元点群データを得ると同時に、カメラで撮影して輪郭データも得ている。
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