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  • 2019/08/20 掲載

インド発ユニコーンの「OYO(オヨ)」、6年で世界2位のホテルチェーンになれたワケ

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創業から6年、インド発のユニコーン企業として知られるOYO Hotels & Homes(以下、OYO)。いまやホテルの客室数は110万室にのぼり、客室ベースでは世界第2位のホテルチェーンとなった。なぜOYOは短期間で大躍進を遂げることができたのか。ビジネスモデルやテクノロジーの活用の観点から、OYOの強さを解説する。

執筆:在スペイン コンサルタント 佐藤 隆之

執筆:在スペイン コンサルタント 佐藤 隆之

Mint Labs製品開発部長。1981年栃木県生まれ。2006年東京大学大学院工学系研究科修了。日本アイ・ビー・エムにてITコンサルタント及びソフトウェア開発者として勤務した後、ESADE Business SchoolにてMBA(経営学修士)を取得。現在は、スペイン・バルセロナにある医療系ベンチャー企業の経営管理・製品開発を行うとともに、IT・経営・社会貢献にまたがる課題に係るコンサルティング活動を実施。Twitterアカウントは@takayukisato624。ビジネスモデルや海外での働き方に関するブログ「CTO for good」を運営。

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OYO Hotels & Homes 創業者 Ritesh Agarwal(リテシュ・アガルワル)氏
(写真はソフトバンクワールド 2019でのもの)
(撮影:大参久人)

集客力とノウハウで国際的なフランチャイズ組織を構築

 ソフトバンクは2019年4月、インドを本社に持つ世界第6位のホテルチェーンOYOとの合弁会社の設立を発表し、日本へのホテル事業展開を開始すると発表した。これは、OYO が2018年にソフトバンク・ビジョン・ファンドを含む複数のベンチャーキャピタルから10億ドルの資金を調達したことが背景にある。新興企業が盛んに生まれるインドにあって、評価額50億ドルとも言われるOYO は代表的な企業であり、日本・中国・欧州・米国等への海外進出が期待された。

 2013年に創業されたOYO は急激な成長を遂げ、その管理するホテルの部屋数は2016年の1000部屋から、2018年6月の10万まで大きく飛躍した。2018年の売り上げ18億ドルのうち、3分の2はインド本国からもたらされているOYOは、インド、中国、ネパール、マレーシア、インドネシア、UAE、英国、インドネシア、フィリピンへ進出しており、さらなる事業展開を計画している。

 創業当初、OYO はOTA(オンライン・トラベル・エージェント)としてサービス展開を行っていた。つまり、提携するホテルから大量の部屋予約を仕入れておき、そのWebサイトへユーザーを集客し、マージンを加えて販売する。Expedia、Hotels.com、TrivagoなどのOTA事業者が有名であり、インドでも同様の業態が見受けられた。

 また、ホテル業界ではAirbnbによる民泊サービスが普及しつつあるが、インドの民家や格安ホテルではユーザーを満足させる体験を提供できないという問題があった。ホテルの設備や管理・運営の方法など、標準化させたオペレーションが必要となったのだ。そこで、Oyoは、OTAとして築いた集客力と、オペレーションに関するノウハウを活かし、その業態をフランチャイズ方式へと変換した。

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OYOのビジネスモデル

 ホテル業界ではフランチャイズ方式を採用するのは珍しいケースではない。日本ではアパホテルやホテルサンルートなどが含まれるし、また、インターコンチネンタルでは管理する4186のホテルの内、自社で管理するのは16に過ぎない。フランチャイズ方式では、少ない資本で大きく事業を展開できると同時に、土地・建物の所有者にとってはフランチャイズの傘下に入ることで集客力とノウハウを手にできるというメリットがある。OYO では、今や、その売り上げの90%がフランチャイズからもたらされているという。


人工知能を使って価格やオペレーションを最適化

 Oyoが単なるホテルチェーンであれば、ソフトバンク・ビジョン・ファンドを始め、一流の投資ファンドが高い評価をすることもなかったであろう。OYO の魅力はそのソフトウェアやデータ分析を中心とした先進的なオペレーションにある。

 OYO とフランチャイズ契約したホテルは、専用のアプリが提供され、部屋予約・清掃・物品・食品などの管理が一括で行えるようになる。ホテルの運営に関する情報は、すべてデータとして蓄積され、分析の対象となる。そのため、従来、10~11か月かかっていたフランチャイズ契約も、データ分析により、約10日間で締結できるようになった。

 ホテル運営において、価格決定はその利益率に大きく影響する。高すぎて空室が残れば機会損失になるし、安過ぎても十分な利益が確保できない。OYO は、適切な価格を設定するため、時々刻々と価格を変更するダイナミック・プライシングを導入した。

 ホテル周辺のイベントや天気・曜日を勘案し、人工知能が需要を予測した上で、価格を変動させる。1日あたり、4300万回行われるという価格調整は、人手で行うのは不可能であり、テクノロジーによって初めて実現された機能だ。ダイナミック・プライシングの仕組みにより、従来、3~4割だった部屋の稼働率を7~8割まで高めたという優れた成果も報告されている。

 OYO の創業者Ritesh Agarwal(リテシュ・アガルワル)氏は、より良い住環境を求める旅行者や生活者にとって、需要と供給に大きな隔たりがあると指摘している。立地・快適さ・価格に妥協しないよう、技術の力を使って、この社会問題の解決を目指し、格安ホテルからマンション、リゾートまで、あらゆる不動産物件の標準化されたサービス提供を目指すというビジョンを示した。

 このビジョンを実現するため、同社は積極的にテクノロジーへの投資を進めており、2020年までに2000人以上のエンジニアを雇用し、人工知能・機械学習・IoTの技術開発を進める見込みだ。 また、IoT技術を開発するベンチャー企業AblePlusを買収し、施設の遠隔管理などへ応用して、スマートなホテルの提供を目指している。

【次ページ】オリンピックでも問われる日本の取り組み

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