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- 2019/07/29 掲載
公取委の狙いはGAFA…ではなく国内企業? データ独占企業へ介入可能に
個人から情報を取得するのは取引=独禁法の対象
日本政府が、巨大IT企業の個人情報独占に対策や意見を述べるようになったのは、2018年秋ごろからだ。この動きを受け、公正取引員会(公取委)が2019年1月に「データ独占や不当な収集について調査を開始する」と発表、3月ごろには「公取のメスがGAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)にも入る」と新聞などが報道し始めた。そしてこの7月、公取委が一定の調査を終え、正式なガイドライン作成と実際の対策について公表した。
独占禁止法の「優越的地位の乱用」(自己の取引上の地位が相手方に優越している一方の当事者が、取引の相手方に対し、その地位を利用して、正常な商慣習に照らし不当に不利益を与える行為のこと)が適用され、処罰の対象となる。
ガイドラインでは、利用目的を明確にしない個人情報の収集や、同意を得ない利用などが対象となる予定だ。他にも、サービス提供に必要のない個人情報の収集、必要な安全措置を取らない収集なども検討されている。
ガイドラインは8月にも公表され、それに沿った運用も適宜行われる予定だが、これでGAFAのデータ独占または寡占が是正されるかというと、おそらくそうはならない。公取委が独占禁止法で規制を強化しようとしているのは、あくまで優先的地位の乱用である。データそのものの独占や集中や取得行為を直接制限するものではない。もちろん、商業活動を法律で規制する弊害や問題もあるので当然とも言える。
データの取扱いについて、米国やEUでさんざん叩かれているGAFAが、いまさら個人情報の収集・利用で、目的や許諾をあいまいにしたサービス設計などしているわけがない。このガイドラインでペナルティの対象になることを憂慮すべきは、むしろ国内企業だ。
データビジネスで遅れを取る日本企業の焦り
関連の議論を進める「独占禁止懇話会」では、新しい規制や管理コスト負担に配慮を求める声も上がっている。ガイドライン作成とその適用について、企業活動を過度に制限しないためだ。このような声が上がることこそ、今回の公取委ガイドラインは、国内企業が取り組むべき問題といえる証左でもある。グローバルマーケットにおけるサービスプラットフォームビジネスに出遅れた日本企業は、ともすれば「現在の市場ポジションは、個人情報保護法によって手足を縛られているためだ」「データさえ手に入れば巻き返せる」と思っているフシがある。
アマゾンやグーグルの創業当時は、いまほど個人情報保護についての認識も少なく、法的な障害を気にせずビジネスを拡大できたという側面は否定できないが、後発企業が「以前の規制に戻せ」といっても無理がある。個人情報保護法は、必然と英知によって作られたものだ。安い労働力が欲しいから奴隷制を復活させろといっても、後戻りできないのと同じだ。
そもそも、データを独占すればビジネスで成功できるという考え方も、現在は微妙だ。各国の個人情報保護やプライバシー保護の気運と規制は、データに対する法的および社会的責任も大きくしている。
大量のデータは利益をもたらす可能性はあるが、その収集と維持コストは安くない。情報保護に対して絶え間ない投資が必要で、得られる利益とバランスさせることは決して簡単ではない。
では、公取委はどのような企業への監視を強化するために、新しいガイドライン導入を決めたのだろうか。
【次ページ】ガイドラインの背景にあるGDPR十分性認定
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