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  • 2020/01/31

「SIビジネスのDX化」を実現? NECがAIと量子コンピュータに懸けるワケ

人月ベースのSI(システムインテグレーター)のビジネスが岐路に立っている。受託開発を展開する多くのIT企業がアジャイル開発など新たな開発手法を取り入れたり、設計・開発工程の自動化を推進したりする。生産性の大幅な向上と収益モデルの転換を図るためだ。そんな中で、NECがSIビジネスのDX(デジタルトランスフォーメーション)化に取り組み始めた。具体的には、AIと量子コンピュータを活用して、要件定義や基本設計などを自動化すること。主力事業のSIビジネスで、NEC自らDXを実践し、その重要性を示す狙いもある。実現目標は2021年3月に設定する。

ITジャーナリスト 田中克己

ITジャーナリスト 田中克己

日経BP社で日経コンピュータ副編集長、日経ウォッチャーIBM版編集長、日経システムプロバイダ編集長、主任編集委員などを歴任し、2010年1月からフリーのIT産業ジャーナリストとして活動を始める。2004年度から2009年度まで専修大学兼任講師(情報産業)、2012年度から一般社団法人ITビジネス研究会代表理事を務めるなど、40年にわたりIT産業の動向をウォッチする。主な著書に「IT産業再生の針路」「IT産業崩壊の危機」(ともに日経BP社)がある。

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SIビジネスをAIと量子コンピュータに進化させようとするNECの方策とは
(Photo/Getty Images)

AIと量子コンピュータによるSI支援

 企業のデジタル化の遅れが日本経済の発展を妨げる。経済産業省が2018年9月に発表したDXレポートは、ユーザー企業にレガシーシステムの刷新を強く求めた。だが、クリアしなければならない課題がいくつもある。

 1つは、デジタル化を推進するIT人材の確保だ。経産省は「2025年に43万人のIT人材が不足する」と予測している。SIの生産性が向上せずに、需要が拡大すれば、IT人材の需給ギャップはさらに拡大するだろう。

 もう1つは、ソフトやサービスの中から最適なものを組み合わるSIの複雑化、高度化していること。とくにOSS(オープンソースソフトウェア)の急速な普及で、選定の対象になるソフト部品が大幅に増えた(図1)。いずれの課題もIT企業に解決を迫っているものだ。

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図1:[SI支援AIシステム] AIを活用したSI技術の高度化

 そこで、NECは人手に頼らない方法を模索してきた。簡単に言えば、システム設計を自動化することである。その研究開発などを担う先端SI技術開発本部の大崎隆夫氏によると、NECは2008年から詳細設計から製造、テストの自動化に取り組み始めた。社内コード名CASSIOPEIAと呼ぶプロジェクトで、蓄積したSIの資産やノウハウを分析し、性能や可用性などをモデル化するもの。そこに設計値を入力すれば、性能などをシミュレーションする。ユーザーの要件を満たしていなければ、設計値を見直す。それを繰り返しながら、要件を満たしていく方法だ(図2)。

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図2:自動化状況:CASSIOPEIAにより詳細設計~構築~テスト

 実は、ベテランのシステムエンジニア(SE)なら「この組み合わせなら、この程度の性能になる」と予測できる。過去の実績や評価で得た特性などが頭にあるからだ。ドキュメントもある。そんなベテランSEの暗黙知を形式知にし、コンピュータで扱えるようにしたのがCASSIOPEIAで、「今は半自動化と完全自動化の間のレベル」(大崎氏)にある。現在、システム構築現場での活用を広げているところだ。



東北大学との共同研究でSI実務の高度化を加速させる

 NECは自動化の範囲を、システムで何を実現するかの要件定義や基本設計といった上流工程へ広げる。要件定義を曖昧なまま設計に入ると、開発期間や品質といった後工程に大きな影響を及ぼすからで、AIと最適な組み合わせを瞬時に見つけ出す量子コンピュータを活用するSI支援AIシステムの開発を始めた。

「システム構築する場合、多くのSEが一番重要なことから考える。たとえば、性能を満たすことから始める。満たせなければ、最初に戻って同じ作業をする」(大崎氏)

 つまり、性能や可用性などの要件を満たす組み合わせを、総当たりで行って、最適な答えを導き出すわけだ。「量子アニーリング方式(多数の選択肢から条件を満たしたベストな結果をもたらす結果を探す問題の計算能力に優れた方式)」の量子コンピューターが得意とする用途になる。そこに、要件を満たす式をAIで作る合わせ技によって実現する(図3)。

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図3:SI支援AIシステムで実現するSIイメージ

 その一環からNECは2019年8月から、東北大学情報科学研究科量子アニーリング研究開発センターとSIビジネスへの量子コンピュータ活用に関する共同研究を始めた(図4)。同センターの大関真之准教授らがカナダのディーウェーブシステムズの量子コンピュータを活用した社会実装などの研究開発に取り組んでおり、その経験やノウハウをSI実務の高度化に取り込むためだ(図5)。

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図4:量子アニーリング利用共同研究立ち上げ

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図5:量子アニーリング利用共同研究取り組み1

 共同研究の1つは、システム自動設計の超高速化を図ること。NECは顧客要件の情報を元にシステム設計の自動化をAIで進めているものの、最適な組み合わせを発見するのに膨大な時間がかかっている。そこに量子アニーリングとAIを使って、設計案の瞬時な評価を可能にする。

 もう1つは、量子アニーリングの確率的動作を利用してAI学習データを拡充すること(図6)。具体的には、AIを教育するために必要な学習データが十分でなかったら、学習データとしての条件を満たすデータを計算機上のプログラムを使って、自動生成することだ。

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図9:量子アニーリング利用共同研究取り組み2

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