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  • 2020/02/10

パルコ流「アフターデジタル」時代の戦略 新・渋谷PARCOのOMOは何がスゴイか

アマゾンをはじめとするデジタルチャネルの台頭で、流通・小売業はデジタル化が急務だ。そんな変革の時代にあって、その先にある「アフターデジタル時代」を見据えるのがパルコだ。「CIO Japan Summit 2019」に登壇した、パルコ 執行役 グループデジタル推進室担当の林 直孝氏は、19年11月開業の新生「渋谷PARCO」をはじめ、同社のデジタル戦略やその取り組みについて語った。

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パルコ 執行役 グループデジタル推進室担当 林 直孝氏


アフターデジタル時代のキーワードは「OMO」

 ビジネスのデジタル化の先に何があるか──アフターデジタル時代において、今、小売業が注目しているのが「OMO」(Online Merges with Offline)というキーワードだ。直訳すると「オンラインとオフラインが統合される」ことだが、「分かりやすく言うと、オフラインのない時代になっていること」だと林氏は説明する。

 人々は、可処分時間の多くをインターネットにつながりながら過ごしている。博報堂DYメディアパートナーズのメディア定点調査によると、2018年の東京地区における1日あたりのモバイル(携帯電話やスマートフォン)の接触時間は平均103分。年代別に見ると20代は180分(3時間)以上接触しているし、50代男性でも約70分という結果だ。これからは「オンラインであることがますます当たり前」になっていくのだ。

オフラインへのチャネルシフトに取り組むアマゾン

 次に、林氏は世界の小売業の売上上位10社のランキングを示した。この中で注目すべきはアマゾンで「2017年度の売上成長率は25.3%、2012年~17年度までの平均成長率も18.0%と高い数値を示している」という。

 こうした成長の要因について林氏はあるエピソードを紹介する。アマゾンのCEO ジェフ・ベゾス氏は、同社のカンファレンス「re:MARS」で、本当の未来予想をテーマに講演し、その中で「今後10年で何が変わるかよりも、むしろもっと重要なのは“何が変わらないか”だ」と述べ、「そのことを真剣に考えるべきだ」と提言した。林氏はここにアマゾンの強さの源泉があると述べる。

「私もここにいるみなさんも、日々、新しいテクノロジーやサービスが出るたびに、それをどうキャッチアップして、使おうか考えていると思う。しかし本当に大事なのは、『本質的に変わらない価値』を理解して愚直に取り組むことだ」(林氏)

 オンラインで商品を選択し、購入するビジネスで成長したアマゾンだが、2018年よりオフラインへのチャネルシフトにも積極的にチャレンジしている。

 その1つが、レジのないコンビニである「Amazon Go」だ。Amazon Goでは商品を選択する場所はオフラインだが、購入(決済)はオンラインで行われる。林氏が米シアトルの1号店を訪れたところ、店内には無数のカメラとセンサーが設置されていた。それらを活用してどの顧客がどの棚の前に立ち、誰が商品をつかんでいるかをすべてデータとして把握している。すなわち「オンラインでの顧客をさらに知るためのチャネル」として、オフラインでのタッチポイントを作ったのである。

 「こうした動きはアマゾンだけではなく、中国のアリババも同様だ」と林氏は話す。2018年、林氏は中国・杭州にある「チンチェンリー」という同社直営モールの視察に訪れたところ、センサーを設置し、顧客行動を理解する仕組みが整備されていたという。

「モールの吹き抜け空間に大きなモニターが設置され、入館者数やその男女比、駐車場の車の台数、どこに人が集まっているかを示したヒートマップや店舗の集客ランキングなどが表示されていた」(林氏)

パルコの「変わらない3つの価値」

 では、元々オフラインに強みのあるパルコのようなショッピングセンターは、どのようにビジネスを成長させていけば良いか。そのために、林氏は「大事にすべき変わらない価値」を考えることから始めた。

 パルコには、開業以来、変わらず大事にしてきていることがある。第一が街づくり。パルコとはイタリア語で「公園」の意味を持つ。人々が集まる場所を作り、集まった人たちに価値を提供してきた。

 第二はインキュベーション。新しい才能の発見と応援をし、新たな価値を創造していく姿勢である。そして、第三は情報発信。「一例には、PARCO劇場を運営していることに加え、演劇のコンテンツ自体も自分たちでプロデュースしてきた。これらの3つの価値を変わることなく提供していくことを考えた」と林氏は話す。

 もちろん、これらだけでパルコのビジネスが成り立つわけではない。そこで売上の考え方も変えた。これまでは、パルコ全体の売上は国内各地のPARCO店舗の集合として把握していた。そのため、1つ1つのPARCOにできるだけ多く集客するための宣伝活動に時間と労力とかけていたという。

 しかし、アフターデジタル時代では顧客1人ひとりの売上(購入)の把握が可能になった。そこで、「個客別売上」と「テナント別売上」という指標で評価するよう変えたのだ。

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PARCOの売上=テナント別売上=個客別売上であるとした

「個客別売上は個客満足の和であり、テナント別売上は顧客満足を生み出す接客結果の和です。つまりパルコがやるべきことは、店舗での接客の結果、個客満足の総和を最大化することだと気づいたのです」(林氏)

 開業から変わらない3つの価値に加え、テクノロジーを活用して1人ひとりの顧客満足を最大化していく。パルコのようなオフラインが主戦場だった企業は、単にオンラインにチャネルシフトすれば良いのではなく、「まずはオフラインで顧客理解のデータをしっかり獲得し、オフラインでお客さまが満たされない部分があれば、オンラインのチャネルを活用していけばよい」と林氏は説明した。

【次ページ】パルコの「オフラインでの顧客データ獲得方法」とは

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