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  • 2020/06/03

IEEE802.11ax(Wi-Fi 6)とは何か? 5つのメリットで理解する最新無線LAN規格の詳細

テレワークの推進にあたり、家庭内で無線LAN環境の整備を進めた人も少なくないだろう。こうした中で注目すべき無線LAN規格が「IEEE802.11ax(別名:Wi-Fi 6)」だ。すでに商品化された製品も数多く出回るこの新しい通信規格が目指すところは「密な環境での高パフォーマンス」といえる。本稿では、IEEE802.11ax/Wi-Fi 6によってユーザーが享受できるメリットや期待されるユースケースなどについて、わかりやすくまとめておこう。

執筆・構成:大内孝子、構成:松尾慎司

執筆・構成:大内孝子、構成:松尾慎司

大内孝子
主に技術系の書籍を中心に企画・編集に携わる。2013年よりフリーランスで活動をはじめる。IT関連の技術・トピックから、デバイス、ツールキット、デジタルファブまで幅広く執筆活動を行う。makezine.jpにてハードウェアスタートアップ関連のインタビューを、livedoorニュースにてニュースコラムを好評連載中。CodeIQ MAGAZINEにも寄稿。著書に『ハッカソンの作り方』(BNN新社)、共編著に『オウンドメディアのつくりかた』(BNN新社)および『エンジニアのためのデザイン思考入門』(翔泳社)がある。

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IEEE802.11ax / Wi-Fi 6は高速なだけではない
(Photo/Getty Images)

IEEE802.11axとWi-Fi 6は何が違う?

 新型コロナの影響も後押しし、リモートワークやオンライン学習が当たり前となり、これまでモバイルアクセスさえあればいいといった風潮からネット回線へと大きな揺り戻しが来ている。そして、自宅の固定回線を家族でシェアするために必須となるのが無線LANだ。

 そんな中、さまざまなモノがインターネットにつながるIoT時代のインフラとして5G(第5世代移動通信システム)とともに期待されているのが無線LANの標準規格「IEEE802.11ax」である。本規格、2020年内にも標準化が完了する(承認される)見通しとなっている。

 まず最初に、用語の整理をしておきたい。IEEE802.11axは、電気・情報工学の各種技術の標準化を担う国際機関「IEEE」が策定する無線LAN規格だ。後述するが、ベースとなる「IEEE802.11」を拡張するものという位置づけだ。なお、以下ではIEEEは省略して記述する。

 無線LANの通称としては「Wi-Fi」のほうが広く用いられている。利用する分には、ほぼイコールと思っても大差はないが、厳密にはWi-Fiという表記は、無線LAN製品の普及を担う業界団体「Wi-Fi Alliance」が用いる規格・認定プログラム(Wi-Fiのロゴを製品に記載するにはこの認定プログラムにパスする必要がある)のブランドのこと。802.11シリーズに準拠し、その他802.11には含まれない、暗号通信や認証など周辺技術も含めた包括的な規格になる。

802.11規格とWi-Fiの認証プログラムのバージョン
規格名 策定時期 周波数帯 速度
(理論値)
Wi-Fi認証
プログラム
IEEE802.11ax 2020年予定 2.4GHz/5GHz 1.1Gbps〜9.6Gbps Wi-Fi 6
IEEE802.11ac 2013年12月 5GHz 433Mbps〜6.93Gbps Wi-Fi 5
IEEE802.11n 2009年9月 2.4GHz/5GHz 65Mbps〜600Mbps Wi-Fi 4
IEEE802.11g 2003年6月 2.4GHz 54Mbps
IEEE802.11a 1999年10月 5GHz 54Mbps
IEEE802.11b 1999年10月 2.4GHz 11Mbps
IEEE802.11 1997年6月 2.4GHz 2Mbps


802.11ax/Wi-Fi 6対応機器市場は急拡大、50%増も

 実は802.11ax/Wi-Fi 6対応製品は、すでに市場に多く出回っている。2018年末に出されたABI Researchのレポートでは、さらに今後2023年までにWi-Fiチップセット出荷台数の約3分の1を802.11ax/Wi-Fi 6が占めるとされている。期待値だけではなく、すでに802.11axのネットワーク機器はWi-Fi関連市場を牽引しつつあるキーテクノロジーという位置づけだ。

 スマートフォンでいえば、2019年に発売されたアップルのiPhone 11シリーズ以降、サムスンのGalaxy S10シリーズ以降などがすでに対応済み。また、家庭向けルーターやゲートウェイ製品では、tp-linkやD-Link、ASUS、NEC、バッファローなどのメーカーが準拠製品を展開している。

 また、Dell'Oro Groupのレポートによると「Wi-Fi 6の世界市場の総売上は2019年の第1四半期から第3四半期の間に激増、前四半期比で50%を大きく上回った」と言う。2020年にはさらなる需要の伸びが見込まれている。

802.11ax/Wi-Fi 6が可能にすること、5つのメリット

 では802.11ax/Wi-Fi 6によって何が変わるのか。どんなメリットがあるのか。大きく5つのポイントで強化されているので、1つずつ見ていこう。

・「体感4倍」に通信速度が向上

 先ほど見てもらった表のとおり、現在の主流規格である802.11acの速度433Mbps~6.93Gbpsに対して、新規格の802.11axの速度は、1.1Gbps~9.6Gbpsへと高速化する。一見するとそれほど高速化を果たしていないように見える。しかし、ここではいずれも理論値を示したが、特に802.11acの場合、規格で定めた技術仕様に実装が追いつかず、実際、1Gbpsを超えるか超えないかといったところだ。もちろん、無線LAN通信でギガの壁を初めて破ったという見方もできるが、理論上期待できるスピードは実現せず、期待ハズレの声もあがった。

 一方、802.11axで注目すべきは「実効性」だ。技術的な詳細の解説は後半で行うが、802.11axでは4倍の実効スループットが期待できるとされる(4倍というのは、IEEEの実験ベースで出ている数字)。

・複数端末でのアクセス環境の向上

 無線通信では、複数の機器を同時に接続するとスループットが大幅に落ちたり、接続できなくなるといったことがある。802.11axが特に注力したのはこの点で、同じ周波数帯域により多くの端末が収容できるようになっている。記事の末尾でも802.11axが有効なユースケースを示すが、スタジアム・空港・駅・展示ホール・ショッピングモールなど、密集した環境でも快適に使えるような設計になっている。これはサービス提供側にとっても、カバーするためのアクセスポイント数を抑えることにつながり、大きなメリットだ。

・5GHz帯と2.4GHz帯の両方が使える

 802.11acとしては5GHz帯しか利用できなかったが(802.11nの2.4GHzとの組み合わせは可能)、802.11axでは5GHz帯と2.4GHz帯の両方が使える。5GHz帯は安定して高速な通信が可能だが障害物に弱い。2.4GHz帯は電波が遠くまで届くが他の電波の干渉を受けやすいといった特徴を持つ。それぞれメリットとデメリットがあるので、802.11axでは宅内や社内など利用環境やデバイスに合わせた使い分けが可能になるだろう。

・消費電力を抑制

 消費電力の抑制(つまり省電力)は、数年間、電池交換なしに動き続けることを求められるIoTデバイスにとって非常に重要な要素だ。無線LAN通信など、いわゆる近距離通信の多くは「ビーコン」と呼ばれる、ある種の信号を使って、タイミングを計って通信を行う。しかしその場合、ビーコンを待ち受けるために定期的に起動する必要がある。802.11axでは、新たな機能により目標の起動時間(TWT)を設定できる。つまり、無駄なく効率的にデバイスを起動させることで、バッテリー消費を抑えることができるということになる。

・セキュリティが強化

 Wi-Fi 6として認められるためには「Wi-Fi CERTIFIED WPA2」(WPA2)の次のセキュリティ規格「WPA3」が必須要件となる。本稿ではWPA3について深く言及しないが、たとえば大規模企業向けモード(WPA3-Enterprise)では、認証機能と暗号化が強化されることになる。

そもそも802.11とは?

 そもそもの802.11は前述のとおり、「IEEE」が策定する無線LANのための規格だ。ネットワークにおけるOSI参照モデルで言う、物理層とデータリンク層(MACレイヤ)の規格となる。「11」の後に続くアルファベットでその更新のバージョンを示すのだが、これらは主に物理層における拡張で、より早く、快適に通信することを目指すものだ。

 ざっとIEEEにおける標準化までの流れを見ておくと、カテゴリーごとにワーキンググループ(WG)に分かれ、さらにWG内にタスクを細分化してタスクグループ(TG)を設置し、そこで具体的な技術仕様についてディスカッションを進めていく。技術仕様はドラフトとして提示し、WGメンバーによるフィードバックを受けて修正する、というように最終的に承認されるまで精度を上げていく。ものにもよるが数年かけて正式承認となる場合も多く、標準化までの期間の短縮は課題の1つでもある。802.11axの場合、802.11WGの「ax」TGが策定を進めている規格ということになる。ちなみに表で取り上げた「802.11b/a/g...」といった伝送規格を扱うTG以外にもさまざまなものがある。

 802.11ax TGの立ち上げは802.11acの標準化が終わってすぐの2014年。2019年12月に出されたドラフト6が上部組織の検討段階に入っており、ほぼ標準化作業の最終段階と言える。2020年内には完了するというのが大方の見方だ。前述のとおり、最終ドラフト段階でサードパーティ各社が商品化を進め、スマートフォン以外にも、すでに無線LANルータ/アクセスポイント、無線LAN子機などの製品が市場に出ているが、このあたりWi-Fi Allianceが標準化完了を待たずに802.11ax規格の認定プログラム「Wi-Fi CERTIFIED 6」を2019年9月に開始したことも大きいだろう。

 前規格の802.11acの時も同様で特に問題はなかったが、現在入手可能なWi-Fi 6準拠の機器はまだ最終ドラフトベースであることを留意しておきたい(多くのメーカーでは802.11axの正式承認後のサポートを行うはずだ)。

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802.11axの標準化までのロードマップ
(出典:淺井裕介、足立朋子、城田雅一「IEEE802.11axの導入に向けた検討について」(2018.7.27)を元に改変)

【次ページ】802.11axが有効なユースケース、11axの技術詳細

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