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  • 2020/06/29

脳の見える化「ブレインテック」は何ができる? 懸念点、国の取り組み・企業事例も

「ブレインテック」という言葉を聞いたことがあるでしょうか? イーロン・マスク氏が「Neuralink(ニューラリンク)」というベンチャー企業を立ち上げたり、フェイスブックが考えただけで文字入力ができるシステム開発に取り組んでいたり、これらはブレインテック領域の取り組みのため、その言葉を耳にする機会が増えてきました。ここでは、ブレインテックとは何か、なぜ注目を浴びているのか、どのような企業が取り組んでいるのかを解説します。

メディアシーク 平井 祐希

メディアシーク 平井 祐希

株式会社メディアシーク コンシューマー事業部 チームリーダー
2016年、東京大学文学部を卒業後、株式会社メディアシークに入社。
2017年より累計3,000万ダウンロードアプリ「アイコニット」のマーケティングと新規事業ブレインテックを担当。 「ブレインテックを世の中に広めていく」ことをミッションとして掲げており、 2019年11月には中国・深圳を訪れブレインテックの現状を視察するなど海外動向にも常にアンテナを張っている。

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ブレインテックを解説
(Photo/Getty Images)

ブレインテックとは

 ブレインテックとは、脳(Brain)とテクノロジー(Technology)を組み合わせた言葉で、脳科学を活用したテクノロジーやサービスのことを指します。米国などでは、脳のニューロンから言葉をとって、「ニューロテック」とも呼ばれています。

 近年、脳科学の研究は大幅に進歩しています。2019年11月にJST研究開発戦略センターが発表した国内外の科学技術動向の報告書では、「ライフサイエンス・臨床医学関連」が重視すべき注目動向として挙げられており、その中でも、がんを中心としたゲノム医療、AI医療・創薬などと並んで「脳神経研究」が世界の潮流として報告されています。

 「脳の働き」を明らかにしようとする研究が活発で、これらの脳科学研究の成果を活用しIT技術と組み合わせることで、これまでに無かったさまざまなサービスが生まれています。

 一般的に、新しいサービス分野においては、ベンチャー企業が中心に参入することが多いですが、ブレインテック領域はベンチャー企業だけでなく大手企業も取り組んでいることが特徴です。各企業の詳細な取り組みについては、後述します。

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ブレインテック領域カオスマップ
(提供:メディアシーク)

どんな分野に活用できるのか

 脳は人のあらゆる行動に関わるので、ブレインテックの活用分野も非常に多岐にわたります。活用例を最もイメージしやすい分野は「ヘルスケア・医療」です。脳が作り出している病気や症状は多くあります。

 たとえば、日本の国民病とも言われる腰痛は、「長く続く腰痛には腰に原因が無く、他の原因で脳が痛みを作り出しているものもある」ことが脳科学研究の進展によって分かってきました。日本でも「痛みと脳」の関係についての研究論文は増加傾向にあります。

 東京都大田区にある長田整形外科医院では、慢性疼痛を緩和するアプローチの1つとして、脳波をコントロールするトレーニングを行えるブレインテックサービスをリサーチに採用するなど、医療現場におけるブレインテックの活用も実際に始まっています。

 また、「教育とスポーツ」もブレインテックを活用しやすい分野です。目で見た映像を脳がどこで処理し、その情報がどこに送られ、どこで記憶として保存されるのかといった脳の働きなど、体の動きに対する脳の働きが解明されつつあり、これらの研究を活用することで、勉強の効率を上げる新しい脳のトレーニングサービスや、脳の特定部位に刺激を与えてスポーツパフォーマンスを向上させるサービスにつながります。

 さらに、ブレインテックはマーケティングにも活用されています。脳の反応を計測することでアンケートだけよりも正確なユーザー反応を得ようとする「ニューロマーケティング」がそうです。新商品のデザインをよりユーザーが欲しいと思うものにする際などに使われています。

まるでSFの世界「BMI」とは

 ブレインテックを語る際に、避けては通れない技術があります。それがBMI(ブレインマシンインターフェース)と呼ばれる、脳と情報通信機器をつなぐ技術です。

 これを活用すると、SF映画に出てくるテレパシーのような「考えただけでモノが動く」「言葉を発さずに思ったことを伝える」ことが、ブレインテックによって技術的に可能と考えられています。脳が発している指令を正確に読み取ることができれば決して不可能ではなく、すでに全身麻痺(まひ)の患者の脳に電極を接続してコミュニケーションを取る試みが行われています。

 話題になった事例としては、2019年10月に米ピッツバーグ在住の半身不随の患者が、脳にインプラントした電極を通じて脳信号をコンピューターに送ることで「Final Fantasy XIV」をプレイする様子がYoutubeで公開されました。


 このようにブレインテックは、私たちの身近なサービスから人類の大きな課題の解決まで、多くの可能性を秘めたテクノロジーと言えるでしょう。

懸念点「プライバシー」は守られる?

 多分野への応用が期待されるブレインテックですが、懸念点もあります。最も不安視されるのは、「プライバシー」の問題だと思います。前述したBMIとも関わってきますが、「何を考えているかまで分かってしまうのでは?」という心配が生まれます。

 実際に、脳の血流や脳波を測り人工知能(AI)を使って詳細に分析することで、どういった画像を見ているか、何を思い浮かべているかを当てる研究もあり、すでに高い精度で当てることが可能と報告している研究もあります。現在はこれらを計測するには大きな装置が必要ですが、今後便利なブレインテックサービスが出てくると予想されるだけに、どこまで許容しプライバシーを確保するかという議論は必要になってくるでしょう。

 次に、ブレインテックの実際のサービスを考える際に、注意しなくてはならないこともあります。1つは、どのような研究に基づいているかを確認することです。最先端のサービスということもあり、どうしても「眉唾」と見られることが多いため、ブレインテックサービスの多くは査読を受けた研究論文に基づいて提供されています。しかしながら、中には根拠を示していないサービスもあるので注意が必要です。

 2つ目は、必ず効果が出るわけではないということです。研究で効果が認められたと結論付けているものでも、被験者全員に効果が出ているものはほとんどありません。「効果が出なかった人や逆効果になってしまった人も一定割合いるが、全体の統計的に改善が見られた」という研究が多数です。また、正しいとされた研究が、後から否定されることも研究の世界では珍しくありません。

【次ページ】各国の取り組み・企業事例・加速する脳科学研究

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