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  • 2020/09/20

田原総一朗x望月衣塑子:なぜ「クソリプ」は見ないほうがいいのか?

【後編】

コロナ禍で露呈した権力とマスコミの馴れ合い。緊張感のないこの関係が、日本を停滞させる要因となっているのか。ジャーナリストとは本来、波風を立てるもの。新しい時代のジャーナリストに必要なこととは何か。嫌われることを厭わない2人、ジャーナリストの田原 総一朗氏と、新聞記者の望月 衣塑子氏が対談した。

ジャーナリスト 田原 総一朗、東京新聞 記者 望月 衣塑子

ジャーナリスト 田原 総一朗、東京新聞 記者 望月 衣塑子

田原 総一朗(たはら・そういちろう)
1934年、滋賀県生まれ。ジャーナリスト。早稲田大学文学部卒業後、岩波映画製作所に入社。東京12チャンネル(現・テレビ東京)を経てフリー。「朝まで生テレビ! 」(テレビ朝日系)、「激論!クロスファイア」(BS朝日)の司会を務める。著書に、『塀の上を走れ 田原総一朗自伝』(講談社)、『日本人と天皇 昭和天皇までの二千年を追う』(中央公論新社)、『日本の戦争』(小学館)、『伝説の経営者100人の世界一短い成功哲学』(白秋社)ほか多数。

望月 衣塑子(もちづき・いそこ)
1975年、東京都生まれ。新聞記者。慶應義塾大学法学部卒業後、東京中日新聞社に入社。千葉支局、横浜支局を経て社会部で東京地検特捜部を担当。その後経済部などを経て社会部遊軍となり、官房長官記者会見での鋭い追及など、政権中枢のあり方への問題意識を強める。著書『新聞記者』(KADOKAWA)は映画化され大ヒット。日本アカデミー賞の主要3部門を受賞するなど大きな話題となった。そのほか『武器輸出と日本企業』(KADOKAWA)、 佐高信との共著に『なぜ日本のジャーナリズムは崩壊したのか』(講談社)などがある。

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田原 総一朗氏(左)、望月 衣塑子氏(右)



ネット時代だからこそ、記者の考えや価値観を打ち出す必要がある

望月氏:ニューヨーク・タイムズの大成功で、マーティン・ファクラーさんは、こんなことも話していました。

 「ネット時代では、もちろん『ニューヨーク・タイムズ』や『ワシントン・ポスト』という会社の大看板も重要だけど、なかの記事は、自分はこうだと「I」(アイ)を主語にして語らなければ、読者が食いついてこない時代になった。ネットでは会社の看板以上に、どの記者がどんな問題を、どんな思いに基づいて発信しているのかが重要だ。自分自身の考えや価値観を記事のなかに入れていかなければ、読まれないようになってきた」と。

田原氏:そこ、とても大事。企業がネット広告を増やしたり、お客さんを招くイベントや展示会に回す広告費を増やしたりして、顧客と直接つながろうとしている。それで途中を省こうとしているんだ、という話が出たね。

 インターネットはそういうもので、一人ひとりがネットワークでダイレクトにつながっている。インターネット端末は、スマホでもパソコンでも一人1台だね。家のポストに投げ込まれる新聞や、リビングに40インチがどんと置いてあるテレビとは、そこが大きく違うんだと思う。インターネットの相手は世界中に何百万何千万人も散らばっているけど、じつは相手はつねに一人ともいえるわけだ。

望月氏:そうですね。一対一で相対(あいたい)しているからこそ、相手の思いや感情にストレートに反応して、こちらも自分の思いや感情をそのままぶつける。それが大量の「いいね!」にもなれば、ネガティブな否定となって炎上することもある。ネットは好き嫌いがはっきり出るというか、好き嫌いで大きく動く。そのことのプラス・マイナス両面がある。

田原氏:事実だけを淡々と並べるような記事は、ああ、そうなのかとは思っても、好きも嫌いもないよね。だから、たしかな事実を発掘して並べるのは当然だけど、そこに自分の思いを込める。するとネットでよく読まれる、と。

望月氏:「I」を出していくというのは、そういうことだと思います。ところが、新聞記事というのは、もともとそうなっていません。むしろ「I」を消すように消すように、と書いてきた。とくに政治関連の記事はそうですね。政治家が明らかな失言をしたときも「失言した。おかしい!」とは書かない。「こう発言をした。今後、問題となる可能性がある」って他人事のように書くんですよね。

田原氏:そうそう。なにふにゃふにゃしたこと書いてんだ、と思うことが多い。

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田原 総一朗氏

ネガティブなツイートは読まない。クソリプは相手にしない

田原氏:僕はブログをやっているけど、もともとコメントはつかない仕組みになっている。コメントされても、とても読んでいる時間がないからね。まあ、一方的に勝手なことを書いています。望月さんはSNSをどう使っているんですか?

望月氏:SNSって、私の場合は基本的にツイッターです。フェイスブックは、以前は新聞記事に収まらなかった話を書いたこともありましたが、最近はこんな署名運動が始まってますと告知するくらい。ただ7月に起きた医師2人によるALS患者の嘱託殺人など、どうしても自分なりに伝えたいことがあるときは利用しています。ツイッター、若手記者はみんなやっていますね。

田原氏:SNSには、プラス面もあればマイナス面もある。嫌われるジャーナリストとしては当然、ツイートに口汚いののしりが集まることもある。そういうものには、どう対応しているの?

望月氏:私自身は、あんまりネガティブなツイートは見ないほうがいいと思っていて、見てないんです。

田原氏:よくない言葉ですが「クソリプ」。あるつぶやきに対してリプライ(返信)がくるけど、たんなるののしりや筋の通らない批判など意味のないものは、最初から読まないということね。読んでも何ら学ぶところはないし、不快になるだけだし、時間のムダ。それに、望月さんのツイッターはフォロワーが20万というような数ですね。別に罵倒が1万寄せられたところで、95%の人はどうとも思っていない。1000人が「死ね」といっても、99.5%の人は、そうは思っていないわけだ。

望月氏:そうですね、そんな感じかな。

田原氏:だから、いちいち見ないのが正解だと思う。でも、見て悩んでしまう人が多いじゃないですか。なんで?

望月氏:伊藤詩織さんの話を聞いても、女優でフェミニストの石川優実さんの話を聞いても、ひどく叩かれているのに、その「クソリプ」をしっかり見ているんですね。「なんで?」と聞くんですが、やっぱり気になるのと、罵倒したり批判したりするそんな人たちも巻き込んで、自分の主張を理解してほしいからだ、というんです。

 それで、彼女たちがすごく傷つきながらやっているやり取りが晒されてしまう。クソリプとしっかり向き合おうとするのは、とても強くて立派な態度。でも、SNSの匿名性の陰に隠れてぶつけてくる強い攻撃に、若い女性たちが自分の気持ちを傷つけながら対応していることが、私はすごく心配なんです。だから、見ないほうがいいと思う、と話すんですけど。

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