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  • 2020/09/15

田原総一朗x望月衣塑子:なぜ「ニューヨーク・タイムズ」は大成功したのか?

【前編】

新聞・ラジオ・テレビに始まり、インターネットの普及とともにツイッター・フェイスブック・ラインといったSNSが登場し、メディアのあり方が激変している。アメリカではローカル紙がバタバタ倒れ、日本でも新聞の発行部数は大きく減少している。ジャーナリストの田原 総一朗氏は、メディアは「このままでは、どんどん、じり貧になっていく」と危機感をあらわにするが、メディアは今後どうなっていくのか。田原氏と新聞記者の望月 衣塑子氏が対談した。

ジャーナリスト 田原 総一朗、東京新聞 記者 望月 衣塑子

ジャーナリスト 田原 総一朗、東京新聞 記者 望月 衣塑子

田原 総一朗(たはら・そういちろう)
1934年、滋賀県生まれ。ジャーナリスト。早稲田大学文学部卒業後、岩波映画製作所に入社。東京12チャンネル(現・テレビ東京)を経てフリー。「朝まで生テレビ! 」(テレビ朝日系)、「激論!クロスファイア」(BS朝日)の司会を務める。著書に、『塀の上を走れ 田原総一朗自伝』(講談社)、『日本人と天皇 昭和天皇までの二千年を追う』(中央公論新社)、『日本の戦争』(小学館)、『伝説の経営者100人の世界一短い成功哲学』(白秋社)ほか多数。

望月 衣塑子(もちづき・いそこ)
1975年、東京都生まれ。新聞記者。慶應義塾大学法学部卒業後、東京中日新聞社に入社。千葉支局、横浜支局を経て社会部で東京地検特捜部を担当。その後経済部などを経て社会部遊軍となり、官房長官記者会見での鋭い追及など、政権中枢のあり方への問題意識を強める。著書『新聞記者』(KADOKAWA)は映画化され大ヒット。日本アカデミー賞の主要3部門を受賞するなど大きな話題となった。そのほか『武器輸出と日本企業』(KADOKAWA)、 佐高信との共著に『なぜ日本のジャーナリズムは崩壊したのか』(講談社)などがある。

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田原 総一朗氏(左)、望月 衣塑子氏(右)
※本記事は『嫌われるジャーナリスト』を再構成したものです。

新聞を取る必要がない。紙がいらなくなってきた

望月氏:新聞が出てきて、ラジオ・テレビが始まり、インターネットが張りめぐらされて、いまツイッター・フェイスブック・ラインといったSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)やブログが隆盛を極めている。

 今後ますます、メディアそのものが激変していくし、ジャーナリズムも大きく変わり、ジャーナリストのあり方も変わっていきますね。そのなかで、ジャーナリストのよって立つものが変わり、ジャーナリスト精神や魂みたいなものが変わるのか。いや、それだけは変わらないということなのか。

田原氏:まず、メディアの大激変について話しましょう。

望月氏:アメリカではネットの影響でローカル紙がバタバタ倒れてしまった。それと比べれば日本は、まだ再販制が生きている。紙離れが進んで数がかなり落ちているんですけど、それでもまだ家に届く新聞を読んでくれる世代の人たちがいて、なんとか助けられている。

田原氏:再販制とは再販売価格維持制度。つまり、商品の生産者が、卸売りや小売りなどの販売者に、販売価格を指示して厳守させる制度(販売店の値引き禁止)。流通段階に自由で公正な競争がないことは、需要と供給から価格が市場で決まるという資本主義の原則に合わず、消費者のためにならない。だからふつうは独占禁止法で禁じています。

 でも、書籍・雑誌・新聞・音楽ソフト(CDやレコード・テープ)や携帯電話など「指定再販商品」とタバコは、独占禁止法の例外になっている。著作物を保護して文化を保護するためとか、業界の要求を呑んだためともいわれるけど、とにかく新聞は再販商品に指定されていて、価格が維持できている、と。

望月氏:新聞販売店で値引きができないから、代わりに洗剤や野球のチケットをつけたんですよね。いまはその余裕もなくなりつつあります。

田原氏:一時やり方が強引でひどいといわれた新聞勧誘の話も、最近めっきり聞かない。

広告が減り不動産収入に頼る。従来のビジネスモデルでは存続すら危うい

望月氏:新聞社の収入源がどこかというと、読者から受け取る販売収入と、それ以外の収入(広告収入とその他の収入)がだいたい半々くらい、といわれてきました。

 でも、そのなかで部数減で販売収入が減り、同時に広告収入も大きく減ってきた。だから「その他の収入」、とくにビルの不動産収入の割合が大きくなった。大きな本社がある朝日、読売、中日がそうですよね。新聞という紙媒体で広告の利益を上げていく手法が、だんだんと通用しなくなってしまった。かつてのままのビジネスモデルでは、まさに会社そのものの存続が危うくなっていく状況だと思います。

田原氏:日本の広告費は、電通が毎年データを出している。2019年の「マスコミ四媒体広告費」は2兆6094億円で前年比▲3・4%減。内訳は新聞4547億円・雑誌1675億円・ラジオ1260億円・テレビ1兆8612億円。新聞は前年比▲5%減だから、雑誌の▲9%減よりましだった。雑誌は1年でほぼ1割減って大危機です。

 「インターネット広告費」は2兆1048億円で前年比19・7%増。18年にはインターネット広告費よりテレビのほうがやや多かったんだけど、19年に抜かれました。

 広告費にはもう一つ「プロモーションメディア広告費」があって、看板・車内吊り・新聞折り込み・DMなんかはここ。2兆2239億円で7・5%増です。

望月氏:企業はメディア、とくに「紙媒体」に出す広告を大きく減らしている。一方、インターネットにドーンと広告を出し、お客さんが直接見る広告やお客さんを招くイベントにもシフトしている。顧客と直接つながって、途中を省こうとしているんですよね。

田原氏:そうそう。だから、まさに〝途中にいるもの〟という名前の「メディア」が問題で危ないんだ。このままでは、どんどん、じり貧になっていく。

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田原 総一朗氏

ネットでいちばん読まれているのはヤフーニュース

望月氏:新聞も、読者に直接つながるネットに出て、ネットのニュースをどれだけ引っ張っていくことができるか、かなり前から考えていました。

 新聞社のサイト開設は90年代半ば以降で、このころは危機意識なんてなく、バスに乗り遅れないように手だけは出しておこうという感じだったでしょう。大手紙が有料の電子新聞を始めたのが10年ほど前からです。それで日経や朝日が頑張っていますけど、先行したヤフーニュースが、いまいちばん読まれている状況ですね。

田原氏:ネットニュースでは、日経や朝日や読売よりもヤフーのほうが読者が多い?

望月氏:ヤフージャパン(Yahoo! JAPAN)は日本最大級のポータルサイト(パソコンやスマホでネットに接続するとき最初に閲覧され入り口・玄関の役目をするホームページ)とされていて、いちばん目立つ場所にニュースを並べている。新聞・テレビ・通信社などの配信記事からピックアップしているんですが、これに出ると「お、読まれるなあ」という流れになっています。

 ヤフーは、たとえば人権侵害や個人攻撃になるような記事をちゃんとはねて、いま人びとが読むべきはこのニュース、とピックアップする。ふつうの新聞社でネット対応しているデスクたちよりも、きっちりチェックができていると思いますよ。これには東京新聞も全然追いついていません。

 いま、各社がネット対策を強化しています。毎日新聞は、サイトで鍵マークをつけた記事を有料としていて、月980円で読み放題にしている。6~8月上旬に申し込めば2か月間は月100円(税別)ですってやっていたけど、会員集めに苦労しているようですね。

田原氏:よく比較されるのは、日経と読売だね。日経はもともと経済の新聞で先端技術にも強いから、オンラインや電子新聞に力を入れている。ネットの有料会員がいま70万人くらい。対して読売はネット開発が遅れていて、部数トップという自信過剰がまずいんじゃないかと指摘する人が多い。

望月氏:紙でやってきて成功体験のある世代は、ネットでどう発信していくのか、ネットでどう稼げばいいのか、よくわかっていない人が多いでしょう。うちの上のほうを見てもツイッターをやっている幹部は少ない。やったことがなければ、SNSをどう利用して新聞読者につなげていくかというモデルも描きづらい。

【次ページ】トランプと戦う米『ニューヨーク・タイムズ』は、オンラインで大成功

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