ローコード開発とは
ローコード開発とはできる限りコードを書かないで、素早くアプリケーションを開発する手法のこと。古くは高速開発や超高速開発とも呼ばれ、昨今ではロー(少ない)ではなく、ノー(ない)という意味で「
ノーコード開発」といった領域にまで拡大している。
業種を問わず、デジタルトランスフォーメーションの実行が要求され、移り変わりの激しいビジネス要件への対応策として、アプリケーションの開発手法に変革が求められている。
グローバルで進行するこのトレンドへの対応は、ビジネスに直接かかわることも多いため、企業の将来を左右しそうだ。クラウドにつなげるだけで利用できることも多く、アフター、ウィズコロナの在宅勤務とも親和性がある。
重要なトレンドになろうとしているローコード開発、ノーコード開発について、先進的な導入企業、情報システム部門にとっての対応、ベンダー一覧とその取り組みについて紹介していく。
スバルなど事例も続々、どんな新アプリを開発?
既に、日本の大企業の多くがローコード開発の仕組みを導入している。自動車メーカーのスバルは、新型コロナウイルス感染症の影響で制限が出たサプライヤーとの情報連携のために、ローコード開発によってサプライヤー向けのポータルサイトを素早く刷新。これによって、影響を軽微なものに済ませることができたという。
三井不動産リアルティは、各部門がシステム部門の承認を得ずにアプリケーションを導入するシャドーITへの対応のため、ローコード開発を活用している。2014年に導入したツールを使い、300の「シャドーIT」である自作ツールを作り直し、稼働状況、メンテナンスを一元化した。シャドーITとは、社内で検証などを経て利用が許されたものではなく、社員が無断で使っているITツールを指し、セキュリティ被害の脅威になり得るとされている。
このほか、三菱UFJ銀行はバックオフィス業務の効率化に、日立建機は自社生産管理システムの開発、運用に導入し、効率化するなど、多くの企業が既に導入を成功させている。
ローコード開発市場は年5割の成長、2兆円市場に
顧客との関係構築など、ビジネスの中心的な課題をローコード開発がスピーディーに解決するのだとすれば、企業の情報システム部門も無視できない。フォレスターリサーチは、2018年に4000億円だった市場が、毎年5割の成長を続け、2022年には2兆円を超えると予測。ガートナーは、2024年までに世界のアプリケーションの65%以上がローコード開発基盤で構築されると見込んでいる。
米セールスフォースのチーフデジタルエバンジェリストを務めるVala Afshar氏は、ITリーダーが顧客体験の向上やセキュリティ、システム統合、従業員体験、モバイルを重視していると指摘。その上で、同社が公表したレポート「Enterprise Technology Trends」において、今後の産業の行方を左右する10のITトレンドの1つとして、ローコード開発を含めた「開発体験」の変化を挙げた。
背景に、技術的な変化が非常に速く、IT部門にはさまざまな役割が期待されているという事情がある。レガシーシステムを維持しつつ、クラウドベースの新基盤を導入し、セキュリティと信頼性を確保し、スケーラビリティも改善する必要があり、人手不足という問題も絡む。
その時、ユーザー部門から届く多数の細かい要望に、IT部門がうまく応えていくには無理がある状況だ。ITの専門家ではないユーザー部門が、必要なアプリケーションを手軽に作成できるような環境が求められる状況が確かに存在している。
セールスフォースのレポートでは、ローコード開発やノーコード開発のツールの導入率は、今後2019年からの2年間で156%増加すると予想している。ITリーダーの72%が、既存プロジェクトへの対応のため、戦略的な施策に手が回らないと回答していることからも、状況は透けて見えてくる。
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