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  • 2020/11/04

アマゾンホーム誕生? アマゾンは建設業界を「破壊する」か、スマートホームのゆくえ

EC最大手のアマゾンが飛躍することで、小売業のリアル店舗にも多大な影響をおよぼすようになりました。これらは「アマゾンエフェクト」などと呼ばれ、実際、米国では大手百貨店が廃業に追い込まれるといったことも起きています。こうしたデジタル化の波は業種や業界の壁をやすやすと乗り越え、プラットフォーマーによる「支配」が多くの産業分野に拡大しているのです。一方でまだその壁を突破していない業界もあります。それが「建設業界」です。今後その壁を越えてくる可能性があるのが、冒頭に述べたアマゾンです。ここでは『2025年を制覇する破壊的企業』を上梓した米ベンチャー投資家 山本 康正さんに今後の見通しを解説してもらいます。

米ベンチャー投資家 山本 康正

米ベンチャー投資家 山本 康正

1981年、大阪府生まれ。東京大学で修士号取得後、米ニューヨークの金融機関に就職。ハーバード大学大学院で理学修士号を取得。修士課程修了後グーグルに入社し、フィンテックや人工知能(AI)ほかで日本企業のデジタル活用を推進。日米のリーダー間にネットワークを構築するプログラム 「US Japan Leadership program」フェローなどを経て、2018年よりDNX Ventures インダストリーパートナー。自身がベンチャーキャピタリストでありながら、シリコンバレーのベンチャーキャピタルへのアドバイスなども行う。ハーバード大学客員研究員、京都大学大学院総合生存学館特任准教授も務める。著書に『次のテクノロジーで世界はどう変わるのか』(講談社)、『シリコンバレーのVC=ベンチャーキャピタリストは何を見ているのか』(東洋経済新報社)がある。

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2025年にはアマゾンホームが現実のものとなっているのか?
(Photo/Getty Images)
※本記事は『2025年を制覇する破壊的企業』を再構成したものです。

激変する建設業界──アマゾン、スマートホームを狙う

 現時点では、建設業界は業界の壁を突破できていません。ただ今後過当競争でますます利益率が下がる可能性がある中、どこかの企業がアクション(改革)を起こすでしょうし、実際、そのような動きが見られます。

 改革のキーワードの一つ目のポイントはデータです。建設業界はまだまだ人の作業に頼る部分が多く、データ化できていません。いまだに紙の設計図が使われていますし、工程管理に関しても同じく、紙が一般的です。材料などのトラッキングにおいても、データを活用すれば、効率化ならびに利益率アップが期待できます。

 2つ目のポイントは、人が行っていたオペレーションをロボットに置き換える、無人化や自動化へのシフトです。人が操作していたクレーンを自動化することができれば、実質的には24時間人力ゼロで動かすことができます。

 この2つのポイントをうまく活かすことができれば、工事のコストは100分の1になる可能性も十分あると私は考えています。当然、そのような未来が実現している工事現場は、今とは異なる様相になっています。

 日本の大手建設会社はこのような未来を実現すべく、シリコンバレーでさまざまな実験を行っています。該当分野に強いベンチャーを招待し、協業しようとの動きもあり、成功例も出ています。先ほどのコマツです。コマツはシリコンバレーのSkycatch(スカイキャッチ)というベンチャーと組み、ドローンを活用した測量の効率化を進めています。

 これまで盛り土量の測定は、熟練の職人さんが行っていました。ただ盛り土ですから、正確に測りようがありません。そのため何となくの目測で行っていました。そこをカメラを搭載したドローンを飛ばし、画像で解析します。人より正確なのは言うまでもありませんし、早く、そして作業に要していた時間も人工も必要としません。

 コマツは無人運転もすでに行っています。ダンプにおいては、工事現場内を無人で移動するだけでなく、どのような経路をたどれば最もタイヤが長持ちするか。独自のシステムも開発しています。

 パワーショベルの自動・無人化も進めています。こちらはまだ開発段階ですが、おそらく2025年には一部実現できているでしょう。単に自動で動くだけでなく、パワーショベルには人工知能を搭載。土の属性や形状により掘り方を調整する、いわゆる熟練オペレーターの運転技術を身につけた人工知能を搭載する予定で、まさにその学習をいま行っている最中のようです。

 コマツのようなハードウェアカンパニーが、シリコンバレーのソフトウェアカンパニーと協業したり買収したりするのは、かなりレアなケースです。なぜコマツは動けたのか。

 コマツは2002年ごろ、アメリカのライバル企業、キャタピラー社に市場を奪われた経験があります。そのときの危機感から、今のようなベンチャースピリットならびに、業界の壁を気にすることなく、積極的に動くマインドを備えたのでしょう。

 他の業界から建設業界に入ってくる流れは、特にGAFAにおいては可能性は低いでしょう。利益水準が低すぎるからです。新型コロナウイルスの影響で工事が中断していることも大きいです。建設業界はかなり厳しい状況にあります。

 ただデータを取りに行くとの観点から考えれば、参入する可能性はあると思っています。建設業自体もそうですが、さらに言うと家のデータです。家を大きなハードウェアだと考え、そのハードウェアに入ってくる情報を活用することで、他のビジネスに活かす戦略です。いわゆるスマートホームです。

 アマゾンあたりが考えていると見ています。2021年にはグループ会社から小型ドローンで家の中を監視できる製品「Ring AlwaysHomeCam」を発売される予定ですし、家の中の商品はすべてアマゾンが扱う品で占められている。居住を始めてからも、ネットショッピングはアマゾンに限定。その代わりに通常よりも10%オフで購入できるなどの特典をつけることで、居住者にベネフィットを与える、名づけてアマゾンホームです。

スマートスピーカーは「声」すらかける必要がなくなる

 異なるアプローチもみられます。アマゾンエコーなどのスマートスピーカーは、まさしくハード・ソフトウェアというよりも、利用者の体験にフォーカスしたデバイスであり、サービスと言えます。アメリカでは多くの人が使っていて、一番人気のアマゾンエコーだけで、1億台以上という販売数です。つまり単純計算でアメリカ人の3人に1人は、アマゾンエコーを使っていることになります。

 日本での利用も少しずつですが増えてきていますから、2025年の未来では、人工知能を搭載していないスピーカーは、少なくなるでしょう。言ってみれば、一昔前のラジカセにCDやカセットデッキが当たり前に装備されていたように、スピーカーとAIはセットになっているでしょう。

 スマートスピーカーは声をテキスト化し、その言葉を判断しますが。その先の未来では、言葉すら発する必要がなくなるかもしれません。ジェスチャーです。カメラやセンサーを搭載することで、手を上げると、ステレオのボリュームがアップするようなイメージです。

 家電が人工知能を備えることは、スピーカーに限りません。エアコンや照明も同じです。最初はスマートスピーカーに光量を指示したり、ジェスチャーで指定するかもしれません。しかし次第に人工知能が、利用者の好みを判断。特に指示を出すことなく、その時々で最適な温度や光量に、自動で調整してくれます。同じことが、テレビのボリューム、お湯の温度などでも当てはまります。

 言ってみれば、家にコンシェルジュがいるようなものです。いや、家族一人ひとりに専用の秘書がつくような感覚といった方が正しいかもしれません。

 そしてAIコンシェルジュは快適な住環境だけでなく、他のアドバイスもしてくれます。グーグルカレンダーに記載しておいた内容を、人工知能が判別。本人がその予定を忘れていると判断したら、スマートスピーカーと連動し「今日は◯時から○○の予定です」とアナウンスしてくれる。

 電車の遅延や道路渋滞といった情報をキャッチしたら、早めに出かけるように声がけもしてくれるでしょう。混雑していない経路を案内してくるようなことも、可能になっていると思います。

 人工知能はまだまだ進化します。2025年には間に合わないかもしれませんが、2030年ごろに実現するかもしれない、ニューラリンクには大変注目しています。頭の中で考えたことをコンピュータが自動的に汲み取り、実行してくれる。これが、ニューラリンクです。

 イーロン・マスク氏が研究に取り組んでいるテクノロジーで、実現すれば、「テレビをつけて」と念じるだけで、スイッチがオンになる。頭の中で練った構想などを、ドキュメントとしてプロットしてくれる。まるでSFのような世界が実現するのです。

【次ページ】スマートハウス・シティが当たり前に

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