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  • 2021/03/02

山口周氏に聞く、なぜ今後ユニバーサル・ベーシック・インカムが求められるのか?

連載:2030年への挑戦

緩やかに成長率が低下していく「高原」において、私たちはどう生きたらいいのだろうか。貧困や格差、環境問題など、これまでのビジネスで解決するのが難しい社会問題が山積する中、「“いま”を豊かにみずみずしく生きる」ために私たちは何をなすべきか。ユニバーサル・ベーシック・インカムの重要性なども訴える独立研究者・著作家の山口周氏に聞いた。

執筆:I&Wパートナーズ 児玉徳子、撮影:大参久人

執筆:I&Wパートナーズ 児玉徳子、撮影:大参久人


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独立研究者・著作家・パブリックスピーカー
ライプニッツ代表
山口 周氏


「自分のいるべき場所」を見つけるために、色々な所にでかけよう

──私たちは2030年に向けてどうしたらいいでしょうか?

山口周氏(以下、山口氏):ひとつは幸福感受性の回復がキーワードです。私たちはあまりに長いこと「辛く苦しいことを我慢すれば、その先に良いことがあるよ」と学校や職場で洗脳されてきてしまったために、「いま、この瞬間の幸福」に対する感受性を著しく摩耗させてしまっています。

 この幸福感受性を回復できなければ、「いま、この瞬間の愉悦と充実を追求して生きる」ことなど望むべくもありません。

 幸福のイメージを人から与えられてそれを追求していくのではなく、自分が本当に夢中になれることを見つけてほしい。若い人たちが、ある程度、与えられたイメージを追うのはしょうがありません。

 ですが重要なのは、それらを追ってみて、「これ、幸せじゃないぞ」、と思えるかどうかです。人から与えられた成功のイメージ、人生のイメージを追求する前に、ある体験の中から、これが自分にとってとても重要なことだ、と気づいてほしいと思います。

 パタゴニアが、草の根会議を奨励する不思議な本、『草の根活動家のためのパタゴニアのツール会議』を刊行しました。これは、環境保護活動に携わる人が、世の中にあるメソッドや、便利なプラットフォームをうまく使って活動を進められるよう、事例を紹介している本です。

 この本の中に、ある方の記述で、「色々思い悩んで迷ってきた人生だが、ある自然公園の中のトレイルに参加したら、人生で初めて“100%ここが自分のいるべき場所だ”と実感した」とありました。これはすごいキーワードというか、まさにこの感覚だなと思いました。自分がいるべき場所は間違いなくここだ、という感覚。

 前編で紹介した新潟で古民家を再生したカールおじさんも奥様との会話の中で、「天国みたいなところね、ここは」と言っていました。そういう場所を見つけられた人はブレません。がっちりとつるはしを当てた感じ。その感覚を自分で発見できた人はすばらしいです。多くの人は見つけられていないと思っています。

 ではどうしたらいいか。それはヒッピーになって、バックパッカーとして世界を巡るのです。態度としては、「I will see everything worth.(価値あるものは何でも見てやろう)」という姿勢です。

 色々なものを見てやろう、世界を見よう、とはまさにデカルトです。デカルトは、世界の省察(せいさつ)は机の上でやり、それから先は、「世界という大きな教科書」で学ぼうと決意して旅に出たわけです。

 同じように、あらゆるところに行ってみて、多種多様な暮らしを知り、非常に狭い成功のモデルから放れて、幸福に生きている人たちをたくさん見る。このことが「自分の場所」を見つける上で大切です。

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少しの変化が大きな変化につながる

山口氏:その上で、やれることは何だろうと考えますと、これこそ私が「資本主義をハックする」と言っている意味ですが、市場原理を利用します。すなわち、複利の力を利用するのです。

 自分の人生のあり方を1年に10%変えるだけで10年経つと、元の2倍にも3倍にもなり、ものすごいインパクトが出てきます。だから、こういう方向に世の中が動いたほうがいいな、こうすれば自分が幸福になるな、と感じたら、毎年少しずつでもやめる、あるいは始めてみるのです。

 ライフスタイルを大きく変えて、全部オーガニック食品に変えるとか、ヴィーガン(完全菜食主義)になるとか、服は全部古着にするとか、そういうことを提案するつもりではありません。

 自分の現在の生活習慣の中で、これはあんまり幸福じゃないな、自分の幸福や充実感につながらないな、と思うことを少しずつ減らし、逆に、これは幸福につながるかもしれないな、と思うことを、ちょっと試してみます。

 その試行錯誤を毎年毎年少しずつやって30年経った人と、なんとなく世の中で言われている「いい人生」というものを無批判に受け入れて、なんかこれじゃないんだよな、と思いながら30年生きた人を比較すると、まさに複利の力で、幸福ステータスにものすごく大きな違いが出てきます。

 だから一気に大きなリスクをとって生活を「ニュータイプ」に変えるというよりは、マインドフルネスではないですが、たまには、リフレクション(内省)も交えながら、やめること、始めることを、少しずつトライしてみるだけでも、人生が違ってくると思います。

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 私がコロナに対して非常に懸念しているのは、「自分が生きる場所はここだ」と感じる機会が減ってしまうことです。

「ここが私の生きる場所だ」と感じるのは、ある種のセレンディピティ(予期せぬ偶然の出会い)であって、偶然を引き起こすための他動力が必要なわけです。

 コロナで移動が制限されることで、そのセレンディピティそのものが社会から失われる可能性があるわけです。幸福のあり方、自分の居場所を見つけるには、外国も含めて、なるべく多くの場所に行ってみないと得られません。

 それがコロナにより制限されてしまう。いくらメディアが情報提供しても、行けないということは阻害要因になる可能性があるので、大いに懸念しています。

 ですが今、インターネット上でクオリティの高い映像が見られるようになりました。移動が制限される中、自分の居場所を探すため、ネット上でピンポイントにスクリーニングできるようになりました。インターネット空間で「ここが私の生きる場所」と仮想的に出会うことが可能となった点も忘れてはならないでしょう。

【次ページ】ユニバーサル・ベーシック・インカムの導入

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