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  • 2019/05/31 掲載

スイス発、狙うは物流のロボットインターフェース統一 Rapyuta Roboticsの技術と戦略

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ロボット活用のハードルの一つは、インテグレーションコストの高さだ。使える自動化システムを組み上げるためにはロボットや周辺設備自体の費用だけではなく、それらを活用するためのソフトウェアも組み合わせてシステム化する必要があり、そのためのコストは全体予算の6割、7割にも達する。また業界内で標準化が進んでおらず高いスキルが必要だ。共通ツールが提供され、それを組み合わせるだけでシステムが構築できる「マルチロボット制御用プラットフォーム」があれば、導入コストを下げられる。Rapyuta Roboticsはそこを狙うスタートアップの一つだ。

執筆:サイエンスライター 森山 和道

執筆:サイエンスライター 森山 和道

フリーランスのサイエンスライター。1970年生。愛媛県宇和島市出身。1993年に広島大学理学部地質学科卒業。同年、NHKにディレクターとして入局。教育番組、芸能系生放送番組、ポップな科学番組等の制作に従事する。1997年8月末日退職。フリーライターになる。現在、科学技術分野全般を対象に取材執筆を行う。特に脳科学、ロボティクス、インターフェースデザイン分野。研究者インタビューを得意とする。

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物流分野を最初のターゲットにし、プラットフォーム事業に取り組むRapyuta Robotics


多種多様なロボットをつなぎ制御を目指す

 2014年7月創業のRapyuta Robotics(ラピュタ・ロボティクス)は、チューリッヒ工科大学からスピンオフして生まれたベンチャー企業だ。日本・東京のほか、インドのバンガロールにオフィスがあり、ロボットや各種センサーなどを統合管理して制御するクラウドロボティクス・プラットフォーム「rapyuta.io」の開発を行っている。

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Rapyuta Robotics(ラピュタ・ロボティクス)のオフィス

 単体のロボットではなく、多様な複数ロボットやセンサーなどをクラウドでつないで、自動化ソリューションを提供することを目指している。ユーザーは「rapyuta.io」を用いることで、異なるメーカー間のコントローラーの違いなどを意識することなく使えるようになるという。

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 以前のRapyuta Roboticsはドローンを対象としていたが、現在、主要ターゲットとしている分野は物流だ。ビジネスモデルとしてはRaaS(Robotics as a Service)を取る。

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 Rapyuta Roboticsは2015年1月に3.51億円のシードラウンド資金を調達した後、2016年にはSBIインベストメント株式会社から10億円の出資を受けている。同時にチューリッヒ応用科学大学の応用情報技術研究所クラウド・コンピューティング研と当社の共同事業に関してはスイス連邦政府から50万米ドルの支援を受けた。2018年にもジャパン・コインベスト投資事業有限責任組合、Sony Innovation Fund、JMTCキャピタル合同会社などから10.5億円の資金を調達している。

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物流拠点での荷物の取り降ろしの自動化に取り組んでいる

 2018年には日本郵便とサムライインキュベートのオープンイノベーションプログラム「POST LOGITECH INNOVATION PROGRAM 2018」の共創企業として採択された。クラウドロボティクス・プラットフォーム「rapyuta.io」を用いて、ロボットを活用した物流拠点での荷物のベルトコンベヤーへの取り降ろし・積み込みの自動化に取り組んだ結果、2019年2月のデモデイでは4カ月間の取り組みの成果を発表し、「POST LOGITECH INNOVATION AWARD 最優秀賞」を獲得した。

 これは郵便局内での「カゴ台車から荷物を小包区分機の供給ラインに取り降ろす」作業をロボットアームを使って自動化するというものだ。一つの荷物を取りおろす作業時間を短縮することができた。

 同時に、その前工程である「トラックから取り降ろしたカゴ台車を各作業場所に運搬する」工程においても、rapyuta.ioプラットフォームを活用して、無人搬送車(AGV)とロボットアームが協調するシステムの実証実験を行った。

 2019年夏までにより大型のロボットアームを使うことで可搬重量を30kgまで引き上げ、作業時間も最短で5秒まで短縮すること、2019年度中には「トラックから取り降ろしたカゴ台車を各作業場所に運搬する」工程についても自動化することを目指しているとされている。人とロボットが協業することで取り扱い荷物の増加に柔軟に対応することができるようになるという。

プラットフォームでロボットをより身近なものに変える

 Rapyuta Robotics代表取締役CEOのGajan Mohanarajah(ガジャン・モーハナラージャー)氏はスリランカ出身で、高校時代に来日、その後、東工大で学士号・修士号を取得。日本語も堪能だ。Rapyutaはチューリッヒ工科大学時代にモーハナラージャー氏が進めていたプロジェクトの名前でもあり、同社の事業はそれをスピンオフさせたものとも言える。ちなみにモーハナラージャー氏はジブリアニメのファンでもある。

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Rapyuta Robotics
代表取締役CEO
Gajan Mohanarajah(ガジャン・モーハナラージャー)氏
取材当日はインドから対応してくれた

 共同創立者で代表取締役COOのKrishnamoorthy Arudchelvan(クリシナムルティ・アルドチェルワン)氏もスリランカ出身で、モーハナラージャー氏と同様の経歴だ。二人にとって日本は「第二の故郷」であり、ロボットのニーズが多い国であることから、日本に本社を置いている。

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Rapyuta Robotics
代表取締役COO
Krishnamoorthy Arudchelvan(クリシナムルティ・アルドチェルワン)氏

 現在の社員数は40人超。東京に25人程度、残りがインドで、それぞれに開発拠点がある。前職は日本の大手産業用ロボットメーカーに在職していた、制御システム・エンジニアの岡本悠氏は「プラットフォーム上でオープンなエコシステムを構築してロボットをより身近なものに変えるというのが大きなビジョン」だとRapyuta社について紹介する。

「解こうとしている課題は労働力不足を解決しようということです。しかしロボットを入れようとすると、インテグレーションが難しい。技術としては可能であっても各社がそれぞれのスタンダードを作っているので透過的に扱うことが難しいからです。そのインテグレーションの複雑さを解決するのが『rapyuta.io』プラットフォームです」(岡本氏)。

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Rapyuta Robotics
制御システム・エンジニア
岡本悠氏

 スマホ業界にはAndroidのような共通OSがあるので、さまざまな業界が参入してエコシステムを形成し、全体として開発を加速してきた経緯がある。ロボットでも同じようなことをしたいのだという。

「『rapyuta.io』プラットフォームの上でシステムインテグレーションできるようにして、ソリューションを提供できるようにしようと思っています」(岡本氏)

 ユーザーからの使用料金はクラウド使用料として、ワークスペースやユーザー数に応じてとっていく考えだ。だがプラットフォーマーとなるためには、まずは使ってもらわなければならない。現状ではプラットフォームとしての「rapyuta.io」の構築と、それを活用したソリューション自体もRapyuta社が作っている。そのための領域がまずは物流だ。成功事例をいくつか作ることができればプラットフォームが拡張できると考えているという。以上が同社のおおまかな戦略である。

【次ページ】ロボットインターフェースを統一するコントローラーとアプリ

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