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  • 2021/04/29

最新の神経科学で判明、ストレスを「使いこなして」最強のパフォーマンスを得る方法

悪者にされがちなストレスだが、最先端の研究によりストレスの仕組みは細胞や分子のレベルで解明されつつある。ストレスが進化の過程で淘汰されずに私たちの身体にいまだに備わっているのは、ストレスに役割があるからだ。ストレスを味方につけられるか否かが、変化の激しいVUCAの時代を生き延びるカギになると言っても過言ではない。そこでここでは、『HAPPY STRESS ストレスがあなたの脳を進化させる』を上梓した応用神経科学者 青砥 瑞人さんにストレスにまつわる仕組みや役割を、最新の神経科学の知見からなるべくわかりやすくひも解きつつ、ストレスを「武器」に変える応用技術の一端を紹介してもらった。

応用神経科学者 青砥 瑞人

応用神経科学者 青砥 瑞人

応用神経科学者。DAncing Einstein代表。小中高は野球漬け。高校は中退。しかし、脳の不思議さに誘引され米国大学UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)の神経科学学部を飛び級卒業。神経科学を心理学や教育学などとコネクトし、人の理解を深め、その理論を応用、また実際の教育現場や企業とコネクトし、人の成長やWell-beingのヒントを与えられたらと、2014年にDAncing Einsteinを創設。対象は、未就学児童から大手役員まで多様。空間デザイン、アート、健康、スポーツ、文化づくりと、神経科学の知見を応用し、垣根を超えた活動を展開している。また、AI技術も駆使し、NeuroEdTech/NeuroHRTechという新分野も開拓。同分野にて、いくつもの特許を保有する「ニューロベース発明家」の顔ももつ。近年では、海外や国連関連のイベントでの講演活動に加え、大手企業やNPO、教育機関と連携、提携し、新しい学び方、生き方、文化づくりに携わる。著書に『BRAIN DRIVEN パフォーマンスが高まる脳の状態とは』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『4 Focus 脳が冴えわたる4つの集中』(KADOKAWA)がある。

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ストレスは闇にも光にもなりえる
(Photo/Getty Images)

ダークストレスとブライトストレスを理解する

 ストレスは私たちを悩ませ、苦しませ、そしてときにはうつ病などの原因となったり、ひどい場合には死をもたらす原因となったりします。私は、そのようなストレスをダークストレスと呼んでいます。

 一方で、私たちのパフォーマンスを高めてくれたり、成長を促してくれたり、幸せを感じさせてくれたりするストレスもあります。私はこれをブライトストレスと呼んでいます。

 ストレス反応に伴った体内環境の種々の変化は、その一つひとつに意味と役割があります。たとえばコルチゾールというストレスホルモン。過剰に分泌されると前頭前皮質を機能停止させてしまいますが、本質的には、脂質や糖類などの代謝をサポートし、身体や脳がエネルギーを使いやすい状態に導くために、重要な役割を担っています。

 ほかにも、カテコラミンと呼ばれるストレスホルモンは、心臓の拍動を高め、骨格筋への血流量を増やし、交感神経と協同して機能し、私たちのパフォーマンスを高めてくれます。また、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)というストレスホルモンは、神経成長因子(NGF)と呼ばれるタンパク質に作用し、神経細胞の死滅を防いだり、新しい神経細胞の合成(神経新生)を手助けしたりすることで、私たちの学習を支えてくれます。

 このようなブライトストレスたちのエネルギーを最大限にとり込み、活かすことができている人は多くはないでしょう。なぜなら、ブライトストレスの生じるところには、当然ダークストレスも生じやすいからです。そうすると、ネガティビティバイアスにより、あなたの注意のほとんどをダークストレスに注いでしまう可能性が高くなるからです。

 しかし、ある人にとっては闇のように感じられ、ダークストレスを導くような環境であったとしても、そこに光を見出し、ブライトストレスとして処理できる人がいます。

 ダークストレスもブライトストレスも、その反応によって活性化する脳部位や合成される化学物質はほとんど同じです。ただその反応の強度が適度な状態であるのか、そしてその反応の状態をどう認知し、そしてどう脳にその現象を記憶として保持していくのか、それによってストレス反応は闇にも光にもなりえるのです。

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ストレスと脳の関係性とは?
(Photo/Getty Images)

VUCAの時代、変化速度がこれまでにないほど速くなっている現代

 世の中は科学技術の発展に伴って利便性を高めてもいますが、これまで存在しなかった闇が生まれているのもまた事実でしょう。SNSで遠く離れた人とコミュニケーションがとれるようになることは素晴らしいことですが、一方でその距離感から、相手を苦しめるコミュニケーションに悪用する人も出てきて、これまで存在していなかったストレス反応が生まれてきています。

 現代が闇を生み出しやすいというのは、端的にいうと、現代は世の中の環境や状況が目まぐるしく変化し、将来の予測が非常に困難な時代のため、不確実性という闇が出現しやすいということを指しています。

 このような変化の時代を象徴する言葉として、いま世界の経済界などでよくとり上げられる言葉が、VUCAです。現代をVUCAの時代と呼ぶ人が増えています。この言葉は、次の英単語の頭文字をとっており、現代の特徴を促えています。

  • V:Volatility(変動性)
  • U:Uncertainty(不確実性)
  • C:Complexity(複雑性)
  • A:Ambiguity(曖昧性)

 変化が激しく、複雑化した世の中は、曖昧で不確実な情報であふれかえっています。すると、不確定要素に過敏に反応しやすい私たち人類の脳は、より多くの闇を目の当たりにすることになります。

 人生を豊かにするはずの技術革新が、むしろ私たちの前に漆黒の闇を広げている状態です。しかし技術革新が悪いわけではないのです。それどころか、大切な人とのコミュニケーションを可能とし、人生を豊かにする技術革新もあふれています。

 この変化の時代において私たちには2つの道が提示されているようです。

 1つは、技術革新により次々と生み出される新しい闇に、卑屈になり、よく知りもしないまま、有効活用の方法を探りもしないまま、ただ批判をし、ダークストレスを蓄積させて生きていくという道。

 もう1つは、新しい闇を受け入れ、むしろ闇に光を照らし、自己の成長可能性の一部とし、自分の見える景色、世界を自分の手で変えていく道。

 もちろん、一人ひとりの価値観、考え方がありますし、後者の道だけが正しいというわけでは決してありません。しかし、後者の道は、きっとこれからの世の中に必要な適応能力であるように思うのです。

 もっとも強いものが生き残るのではない。もっとも賢いものが生き残るのでもない。唯一生き残るのは、変化できるものである。

 進化論で有名なチャールズ・ダーウィンの言葉です。新しい変化の時代、VUCAの時代に適応して進化する。そんな過渡期を楽しめるいい時代です。ダーウィンの言葉を噛みしめ、ストレスを力に変える、ブライトストレスを手に入れるための探究をしていきましょう。

【次ページ】自分自身が世界のプロデューサーという意識を持ってみる

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