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- 2021/08/19 掲載
DX意識調査結果、1年前と比べ日本企業で変わったこと、変わらなかったこと
連載:第4次産業革命のビジネス実務論
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DXの認知は極めて低く、過半数はDXへの取り組み意向がない
INDUSTRIAL-Xが2020年に続き「DX実現に向けた課題とコロナ禍における意向調査」を実施した目的は、いまだ終息の見通しが立たないコロナ禍における企業のDX推進状況の変化を把握し、今後の企業経営に資するデータを提供することにあったとのことです。調査手法は調査モニターを用いたインターネット定量調査、調査時期は2021年5月28日~6月1日、調査対象は大手・中堅・中小企業ごとに166~167人ずつ抽出した主任・係長以上の役職に就く社会人500人です。
DXの認知に関する調査結果を見ると、DXの内容まで知っている人は17.6%と少数であり、「しらない」または「単語を聞いたことがある程度」の合計が80%を超えています。いまだにDXの認知が一定以上進んでいない状況が浮き彫りになっています。
DXを認知していない人にとっては、DXと従来のIT化やデジタル化との区別はついていないと思われ、これが、後述するDXがもたらす効果の調査結果で、既存の業務プロセス改善の延長線上にあるものだと考えている日本企業が多いことの一因になっていると考えられます。
また、DXへの取り組み意向に関する調査結果を見ると、「取り組む意向はない」との回答が過半数となっています。
本調査では、2020年上半期(2020年4月~9月)時点のDXについての取り組み状況と現在(2021年6月)のDXについての取り組み意向について回答を得ています。
昨年の時点でDXに取り組んでいた企業の割合(全社的に取り組んでいる、各部署ごとに取り組んでいる、一部の部署だけで取り組んでいるの合計)は41.2%ですが、現在、取り組み意向がある企業(少し取り組んでいた、あまり積極的でない、消極的の合計)が40.6%であることから、昨年からDXの取り組みが広がっているわけではないことが分かります。
DXの本質を捉え始めた日本企業が微増
2020年上半期(2020年4月~9月)時点と現在(2021年6月)のDXへの取り組みの狙いについての回答結果を見ると、現在で最も多いのは「コスト削減」(39.8%→45.8%)となっており、大きく増加しています。それに、「品質・操業改善」(29.6%→30.5%)という回答が続いており、今でもなお、DXがもたらす効果は既存の業務プロセスの延長線上にあるものだと考えている日本企業が多いことを示していると考えられます。一方、事業を成長させることに寄与する「顧客獲得」(7.8%→22.2%)、「新規事業拡大」(6.3%→13.8%)が大きく増加していることが今年の特徴であり、「売上拡大」(17.5%→20.7%)も微増しています。DXの本質である、
自社の立ち位置と提供価値そのものを進化・変化させることに意識を向けつつある企業が一定量ながら増加しつつあると考えます。
新型コロナの影響が長引く中で、企業のDXへの意識は、事業を成長させることと、既存ビジネスの延長線上での効率化を進めることに二極化していることが伺えます。
DXを推進する上での課題
DXを推進する上での課題についての回答を見ると、昨年は首位であった「目指したい姿がわからない」(26.7%→19.7%)は減少し、「進め方やアプローチがわからない」(23.8%→25.6%)が首位となっています。「効果や目的が分からない」(24.8%→21.7%)も回答は減少しながらもそれに続いています。1年以上継続しているコロナ禍において、ビジネスがコロナ前には戻らないことを認識しつつ、目指したい姿を明確化する企業が増える一方、そこに向かう取り組み手法やアプローチ手法に課題を感じ始めている企業が増加しているのではないかと推察されます。
また、「推進・導入する人員がいない」(16.0%→18.7%)も増加しており、人材の不足も課題になり始めていることが分かります。「他社の事例や取り組み方の情報がない」(14.6%→15.3%)も微増するなど、他社の先行事例がないことに躊躇を覚える先例主義的な発想の企業がいまだに一定数存在することも分かります。
また、DX推進上の課題解決方法については、3割弱が「自社内各部門」で課題解決をはかると回答しており、「自社内DX部門」と合わせると自社内で課題解決を行うという回答が半数を超えています。昨年から大きな変化は見られず、エコシステムへの発展を目指すような取り組みの意向は、大きく高まっていないと思われます。
【次ページ】DXで実現しなければならない具体的な取り組みは何か
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