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  • 2021/09/08

「デジタル工場を輸出せよ」国内製造業の未来を拓く、自動化EMSとアジア1000人構想

ロボコム・アンド・エフエイコム(以下、R&F)が福島県南相馬に開所した「R&F南相馬デジタルファクトリー」。その施設はサイバーフィジカルシステム(CPS)やデジタルツインを駆使したスマートファクトリーの手本となることを目指して作られた。後編では、ロボットシステムインテグレーターとして日本がどう世界と戦うべきか、同社 代表取締役社長 天野眞也氏と、代表取締役 飯野英城氏に話を聞いた。

聞き手:編集部 松尾慎司 構成:編集部 渡邉聡一郎 執筆:井上猛雄

聞き手:編集部 松尾慎司 構成:編集部 渡邉聡一郎 執筆:井上猛雄

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ロボコム・アンド・エフエイコム(R&F) 代表取締役社長
FAプロダクツ 代表取締役会長
天野眞也 氏


日本の製造業のデジタル化は、登山で言えば0.5合目

 前編では、日本で完成品メーカーがなくなる7つの理由について両氏が説明した。

 最初から何もない新興国であれば、運用自体は別の話としても、最新のスマートファクトリー自体は作れるが、日本の場合はレガシーの設備を引きずっており、まだビジネスモデル自体のトランスフォーメーションも、それほど進展しているようには見えないという。

 第四次産業革命に関する日独間連携・協働の枠組みを定めた「ハノーバー宣言」が2017年に採択されてすでに4年が経つが、日本のDX/RX(デジタルトランスフォーメーション/ロボットトランスフォーメーション)はどのくらいの進捗したのか。

 日本の製造業のデジタル化を聞くと、「登山で言えばまだ0.5合目。つまり、5%の進捗。初めの一歩も踏み出せていないかもしれない」と、両氏ともに非常に厳しい見方だ。

 工場をデジタル化しようとしても、現場は人手のままでも生産ができてしまうので、人件費との比較になってしまう。そのためビジネスモデルを変えようという意識が遠のいてしまい、結果としてDX化しなくても良いと考えられているという。

 飯野氏は「現状では、日本企業は壁にぶち当たっています。インダストリー4.0でデータを取り始め、データを分析する企業も出ていますが、結局何もわからずに、何に活用すべきかと悩んでいるようです。ですから、今回新設したR&F南相馬工場では、全体最適化されたロールモデルになる工場を提示したかったのです」と語る。

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ロボコム・アンド・エフエイコム(R&F) 代表取締役
オフィス エフエイ・コム 代表取締役社長
飯野英城 氏

 天野氏は「大手メーカーは部分最適化できても、全体最適化まで至っていません。ただ総合力でみれば、世界と比較してもまだ十分に高いでしょう。しかし、それは人の総合力が高いためです。すごい製品を生み出していることには間違いありませんが、仕組み化やルール化まで落とし込めていないのです」と説明する。

 これは製造業に限ったことではない。当初はどんな仕事も言語化されていない。「見て覚えろ」という指導がかつてのスタンダードだった。だが、人が仕事を覚えられるのは、言語化されているからだ。

「インダストリー4.0では、BOM(部品表)やPOP(工程表)で言語化・マニュアル化してから、初めてDXやRXへトランスフォームできると考えています。いきなりロボットを導入するような部分最適化ではなく、工場を統合的にプロデュースしながら全体最適化できれば、製造業のDX/RXも一気に進むでしょう」(天野氏)

製造業で不足する2タイプの人材

 開所して間もないR&F南相馬工場は、デジタルツインの最先端工場として、建物と設備、内部デモ機などで合計40億円ほど投資したデジタルファクトリーだ。天野氏、飯野氏らは、ホップ・ステップ・ジャンプの3段飛びで事業を進めてきたという。

「最初のホップで、栃木県小山にロボットセルの標準パッケージを業界別に展示したロボットショールームをつくりました。次のステップで、さまざまなラインのソリューションを紹介するために、スマラボ東京を開設しました。そしてジャンプで、工場を丸まるごと見ていただけるようにR&F南相馬工場を開所したわけです」(飯野氏)

 最先端のデジタル技術を駆使しながら、正確な未来予測を経営者に見せ、大きな投資をしても、市場から回収が可能なことを示せるようなデジタルファクトリーのロールモデルを作り出したのだと語る。

「複数シミュレーションを使った工場のデジタルマップ化から、数値シミュレーション予測まで、体感・体験を通じて製造DXの投資対効果をつかんでいただき、フィジカルとバーチャルの数値を合わせた未来予測をしっかりと提示することで、投資決定の判断に生かしてほしいと考えました」(天野氏)

 もちろん現場に立つエンジニア層の意識は大切だが、それにも増して経営トップや管理者層の意識改革も重要になる。

「いまの日本の製造業では、2タイプの人材が不足しています。まず財務やビジネスマネジメントに詳しく、技術にも長けた管理者もいません。DXは新たな挑戦ですから、技術に詳しく、財務やお金回りにも詳しい人材が求められます。加えて、ITとOTをつなぐエンジニア人材も不足しています」(飯野氏)

 この2種類の人材がいないことが原因で、たとえ大手メーカーでも、いざDXを進めてデータを貯めたとしても、経営指標上でどのようにつなげていけば良いのかというハードルを突破できないのだという。

量産化、完全自動化を可能にする自動化EMSというアプローチ

 このように閉塞感が漂う日本の製造業界のなかで、天野氏と飯野氏らが行き着いた新しいアプローチの1つが「自動化EMS」(Electronics Manufacturing Service)だ。

「自動化EMSは我々が考えた概念で、まだそういう言葉は世の中にはありません。しかし、世界中から生産の量産を請け負い、工場自体のプロデュースまでをビジネスとして発展させたいと考えています」(天野氏)

 EMS自体は他企業の製品(主に電子機器を組み立てる)を受諾生産することだが、ここで天野氏がいうところの「自動化EMS」では、まずR&Fで他企業から受託生産を請け負ってその製品を組み立てながら、R&F側でDX化して効率よく自動生産していく。そして、その自動化のノウハウやプロセスも含めて生産ラインを受託側に返したり、最終的には全体最適化されたDX工場そのものをつくり出す(相手に売る)ことだ。

 自動化EMSでは、工場そのものを構築することが難しい場合にはラインの自動化を提供することになるが、その企業が成長したり財力のある中堅大企業の場合には、南相馬工場のようにDX化された最先端のスマートファクトリーそのものを提供するところまでビジネスとして狙おうとしているわけだ。

「最終的にお客さまに完全自動化したラインを移管する際に、設備をリースやレンタルによって、所有から利用するモデルへと展開しても良いと思っています。日本が持つ生産技術をフルに量産化に傾けて、自動化EMSのようなものができれば、世界的にも莫大なスケールになるでしょう」(天野氏)

【次ページ】日本企業はまだアップルと戦える

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