• 会員限定
  • 2021/09/01 掲載

最先端デジタル工場を徹底レポート、製造業DXを本気で目指す設備の数々【写真多数】

  • icon-mail
  • icon-print
  • icon-hatena
  • icon-line
  • icon-close-snsbtns
記事をお気に入りリストに登録することができます。
10年前の震災で被害を受けた福島の地で、未来の産業を起こす「福島イノベーションコースト構想」。その一環である「復興工業団地」第1号として、2021年6月、南相馬市に「ロボコム・アンド・エフエイコム 南相馬デジタルファクトリー」が開所した。ロボコムとオフィス エフエイ・コムグループの合弁会社であるロボコム・アンド・エフエイコム(以下、R&F)によって、数十億円をかけて建設されたこの最先端デジタル(スマート)ファクトリーをレポートする。

フリーライター 井上 猛雄

フリーライター 井上 猛雄

1962年東京生まれ。東京電機大学工学部卒業。産業用ロボットメーカーの研究所にて、サーボモーターやセンサーなどの研究開発に4年ほど携わる。その後、アスキー入社。週刊アスキー編集部、副編集長などを経て、2002年にフリーランスライターとして独立。おもにロボット、ネットワーク、エンタープライズ分野を中心として、Webや雑誌で記事を執筆。主な著書に『キカイはどこまで人の代わりができるか?』など。

画像
2階の見学通路とプレゼンルームから見下ろした工場内。工作機械類は赤い配色でまとめられ、床は白というユニークなコーディネート


全体最適化された生産を目指す、CPSの見本となるデジタル工場

 本工場は、最新技術と設備を導入したスマートファクトリーだ。デジタル上に構築された仮想化生産ラインで事前シミュレーションを行い、リアルな自動加工の生産ラインに反映することで、全体最適化された生産を実現する、CPS(サイバー・フィジカル・システム)に基づいた工場である。

 R&Fでは、IoTですべての工程・設備のデータを収集し、AIを活用したシミュレーションで求めた最適解に基づいて、自律的に工場を稼働させる工場を「デジタルファクトリー」と定義している。そのため本稿では、いわゆるスマートファクトリーではなく、デジタルファクトリーとして紹介する。

 このデジタルファクトリーでは、ロボット本体というよりも、ロボット半製品やFAキットの開発、 精密な大型部品や小物部品の短納期加工、3Dプリンタでの試作品加工が中心に行われる。また3.11で大きな打撃を受けた福島県南相馬地区をロボットで復興すべく、本工場を最先端デジタルファクトリーのモデルとして発信し、ロボット・システムインテグレーター(ロボットSIer)の後方支援活動を展開する位置づけだ。ほかにも海外エンジニアの教育も実施するという。

画像
6月28日に開所式が行われたロボコム・アンド・エフエイコム(R&F)南相馬工場。Industries4.0に則ったCPSを体感できる最先端のモデル工場になっている

 さっそく工場全体を俯瞰してみよう。建屋は、工場と本館、研修施設から構成されている。このうちメイン工場は、大物加工、小物加工、ロボット自動化、3Dプリンタ、QC(品質管理)という5つのエリアに分かれている。

photo
建屋全体の俯瞰。 メイン工場(75×30×7m)と、展示場・会議室・事務所が入った2階建ての本館、海外エンジニアなどを受け入れる研修施設から構成されている

画像
メイン工場の全体レイアウト。5つのエリアに分かれており、加工エリアでは大物と小物の加工が可能。またロボット自動化エリアは24時間無人で稼働し、製品をつくれる

 大物加工と小物加工のエリアでは、5軸制御のマシンニングセンターやNC旋盤、研磨機など10台以上が鎮座する(トップ画像参照)。

画像
牧野フライス、オークマ、岡本工作機械など、有名な工作機械が並ぶ。写真は牧野フライスの5軸制御横形マシンニングセンター。チタン合金やインコネル(ニッケル合金)などの難鋼材などを加工

 加工エリアだけでなく、ロボット自動化エリアなども工場ネットワークと結ばれ、CPSによってバーチャルとリアルを結ぶ製造プロセスを実現。ここではファナックなどのロボットや、工具やパーツ類などを搬送するAGVが稼働しており、完全無人で24時間製造できる点がウリだ。製品の加工が終わると、設計図どおり作れたかどうか、完成品の自動計測も可能だ。

画像
24時間完全無人化ライン。多品種少量生産を実現するために、ロボットアームが付いたAGVでツールや工具パレット類を工作機械まで運び、工具装着・加工、計測、製品の自動搬送までを行うという流れだ

画像
完全無人化ラインをモニタリングしているところ。CAD/CAMで設計した製品を、生産計画にしたがって無人で製造していく。工具類の取り付けだけでなく、製造に必要な治具まで無人で付け替えることができるという

 3Dプリンタエリアには、樹脂だけでなく、金属粉末による3D積層造形システムがある。3Dプリンタで造形した製作物を磨くショットブラスト加工機や、ワイヤー加工機なども並んでいる。

画像
3Dプリンタエリア。材料粉末をレーザーで照射して造形する金属製3Dプリンタも配備。左は松浦機械製作所の「LUMEX Advance-25」、右はDMG森精機の「LASERTEC 30DUAL SLM」

画像
3Dプリンタで作ったモデル。複雑な造形を樹脂や金属で作り、試作品を迅速に提供。ワイヤー放電マシンでの加工や、ショットブラストでの表面研磨などの後処理も行える

 また製造したパーツを検査するQC(品質管理)のエリアでは、高精度3次元測定機やデジタルマイクロスコープ、マイクロピッカース硬度計、自動精密切断研削機などが用意されている。実は大物や高度な試験関係は、隣接する福島ロボットテストフィールドで必要に応じて実施できるため、QCエリアの設備は最小限に抑え、そのぶんの投資を他の設備にかけているという。

画像
QCエリアで製品の品質チェックを行う。硬さ試験、ハイトゲージといった基礎的な測定機から、東京精密の大型CNC3次元測定機などもそろっている

【次ページ】地球に優しいデジタル工場、切削加工で排出された切粉量まで管理

関連タグ

関連コンテンツ

あなたの投稿

    PR

    PR

    PR

処理に失敗しました

人気のタグ

投稿したコメントを
削除しますか?

あなたの投稿コメント編集

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

通報

このコメントについて、
問題の詳細をお知らせください。

ビジネス+ITルール違反についてはこちらをご覧ください。

通報

報告が完了しました

コメントを投稿することにより自身の基本情報
本メディアサイトに公開されます

必要な会員情報が不足しています。

必要な会員情報をすべてご登録いただくまでは、以下のサービスがご利用いただけません。

  • 記事閲覧数の制限なし

  • [お気に入り]ボタンでの記事取り置き

  • タグフォロー

  • おすすめコンテンツの表示

詳細情報を入力して
会員限定機能を使いこなしましょう!

詳細はこちら 詳細情報の入力へ進む
報告が完了しました

」さんのブロックを解除しますか?

ブロックを解除するとお互いにフォローすることができるようになります。

ブロック

さんはあなたをフォローしたりあなたのコメントにいいねできなくなります。また、さんからの通知は表示されなくなります。

さんをブロックしますか?

ブロック

ブロックが完了しました

ブロック解除

ブロック解除が完了しました

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

ユーザーをフォローすることにより自身の基本情報
お相手に公開されます