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  • 2021/10/19 掲載

さとふる社長が農業現場で見つけた「根深すぎる課題」、DXで目指す持続可能な農業とは

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イチゴ農家は収穫期に入ると徹夜を余儀なくされる──それが今までの農業の常識だった。ふるさと納税サービス「さとふる」を運営する、さとふる 代表取締役社長の藤井 宏明氏は、地方の特産物生産の実態に触れ、その極端な労働実態に驚愕したという。そこで、持続可能な農業を目指して立ち上げたのが「たねまき」だ。農業DXに取り組む藤井氏と、実際の営農現場で指揮を執るたねまき常総 代表取締役社長 前田 亮斗氏に話を聞いた。

聞き手・構成:ビジネス+IT編集部 本橋実紗、執筆:吉田育代

聞き手・構成:ビジネス+IT編集部 本橋実紗、執筆:吉田育代

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たねまき常総 代表取締役社長 前田 亮斗氏(左)、SBプレイヤーズ 代表取締役社長/さとふる 代表取締役社長/たねまき 代表取締役社長 藤井 宏明氏(右)


さとふる事業で気がついた、農業が抱える根深い課題

 ふるさと納税サービス「さとふる」をご存じの方は多いだろう。藤井 宏明氏は、そのさとふる事業を立ち上げた人物だ。

 ふるさと納税の返礼品にはその地方の特産物が選ばれることが多く、その中には農業産品もある。藤井氏は、さとふる事業に取り組む中で、その生産段階から商品化までの過程に触れるにつれて、農業に代表される第一次産業が衰退の一途をたどっていることを実感したという。

「農業を研究してわかったのは、無理や無駄が多く残されているということです。製造業はどんどん近代化されたのに対し、農業は断片的にしか近代化が進みませんでした。たとえば、農業の現場ではトラクターが一般化し、一部の農作業は効率化されましたが、結局、農業全体の無理や無駄の解消までは果たされていません」(藤井氏)

 さまざまな業界でDX(デジタルトランスフォーメーション)が叫ばれる昨今、「農業DX」としてITベンダーなどがセンサーやIoTを使ったソリューションを提供しているが、やはり断片的であるというのが藤井氏の考えだ。

「この状況を根本的に変えたいと思い、立ち上げたのが『たねまき』です。無理や無駄のない、持続可能な農業の未来を現実のものにします」(藤井氏)


「農業DX」で目指すは労働波形の標準化

 藤井氏は、日本の農業で憂慮する点の1つに「極端な労働波形」を挙げる。

 農業は苗を植え、種をまく時期は非常に労働力が膨らむ。しかし、生育期は種をまく時期ほどの労働力はかからない。そして収穫期に入ると一気に人手が必要となる。そのため、冒頭で触れたように、売れ時が短いイチゴ農家などはその時期には連日のように徹夜をするという。

 収穫期が終わるとまた次の種をまく時期まで時間が空く。すると、その期間に別の仕事をする人も出てくる。そこから、いつの間にか副業が正業になり、農業が副業になるという逆転現象が起き、副業のためにアルバイトを雇うという事態になってしまったりもする。それに嫌気が差して農業を辞める離農者が増え、業界全体がどんどん負のスパイラルに陥ってしまう。

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農業の大まかな労働波形イメージ

 藤井氏はこのようなサイクルを目の当たりにし、熟考の末、「人に優しい労働波形を作らないと、いつまでたっても農業は持続可能にならない」という結論に至った。

 そこでたねまきでは、労働波形の平準化によって正規雇用を始めとした雇用の安定と継続就業を実現しようとしている。目指すは「農業の近代化」だ。

 ICTやロボットなどテクノロジーは積極活用して効率化するが、主眼がそこにあるわけではない。たねまき自らが農業に取り組み、同社ならではの生産方式を確立することで、農業従事者の勘や経験に依存する農業経営から脱却しようというのだ。

【次ページ】随所で育ちつつある農業ビジネス進化の芽

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