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  • 2021/11/24

成功体験を捨てられず20年続く「デジタル敗戦」、その深すぎる背景とは

篠﨑教授のインフォメーション・エコノミー(第140回)

企業の情報システムは、業務手順や組織構造それらに従事する人材など、企業のさまざまな仕組みを正確に映し出す鏡だ。デジタルトランスフォーメーション(DX)とは、こうした仕組みを抜本的に見直すことに他ならない。かつて称賛されてきた「日本型組織」の内部構造もその1つで、単に従来の仕組みをデジタル化するだけでは行き詰まる。情報技術との親和性が高いはずの金融機関も例外ではない。今回は日本型企業の組織構造に焦点を当て、「デジタル敗戦」の深い背景を考えてみよう。

九州大学大学院 経済学研究院 教授 篠崎彰彦

九州大学大学院 経済学研究院 教授 篠崎彰彦

九州大学大学院 経済学研究院 教授
九州大学経済学部卒業。九州大学博士(経済学)
1984年日本開発銀行入行。ニューヨーク駐在員、国際部調査役等を経て、1999年九州大学助教授、2004年教授就任。この間、経済企画庁調査局、ハーバード大学イェンチン研究所にて情報経済や企業投資分析に従事。情報化に関する審議会などの委員も数多く務めている。
■研究室のホームページはこちら■

インフォメーション・エコノミー: 情報化する経済社会の全体像
・著者:篠崎 彰彦
・定価:2,600円 (税抜)
・ページ数: 285ページ
・出版社: エヌティティ出版
・ISBN:978-4757123335
・発売日:2014年3月25日

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デジタル領域はOSやアプリケーション、ハードなどで「敗戦」が続いている
(Photo/Getty Images)

柔軟な組織構造の弱点とは

 デジタル化と軌を一にして長期停滞に陥った日本経済について、前回は、かつて評価されていた「日本型コミュニケーション」の特徴を手掛かりに原因を探った。今回は、この分析をもとに、企業内部の組織構造の面から、長所が短所に逆転していった要因を考えてみよう。

 1980年代に絶頂期を迎えた日本経済について、前回参照した『平成2年度年次経済報告(以下「白書」)』では、組織構造も成功要因の1つだったと分析されている。それによると、日本型の組織は、「大まかな分担は決まっているものの、必要に応じて相互に協力する」点に優れた特徴があった。

 この特徴が「“横”の情報伝達に代表される多角的な情報の流れにおける相対的優位性」を生み出し、「特に応用分野における技術開発力、製品開発力の国際的にみた強さ」につながったと評価されている。

 確かに、こうした組織構造は、異なる部署間の微妙な調整では力を発揮するだろう。その一方で、各部署の役割分担が不明瞭となり、部署間の境界を曖昧(あいまい)で込み入ったものにしてしまう側面が伴う。これがデジタル化では弱点になるのだ。

メガバンクにみるDX失敗のリスク

 デジタル化は、あらゆる企業に抜本的な仕組みの見直し=DX(デジタルトランスフォーメーション)を迫っているが、重要なのは、単に新技術を導入して、従来の仕組みをデジタル化すれば事足りるものではない点だ。

 連載の第32回で考察したように、DXでは組織の境界を引きなおすような「分業と比較優位構造の見直し」が求められる。各部署の役割分担が不明瞭で、境界が込み入った状態であれば、その実行に際してかなり手間がかかってしまうだろう。

 そもそも、部署間の境界があいまいなら、部門毎の明確な利益管理は困難だ。それは組織の見直しを合理的に進めるための客観情報が不足することを意味する。客観情報の不足は、利益に基づく判断よりも人の配置といったポスト問題を優先させることにつながりやすい。

 これでは、DXが失敗に帰結するリスクが高まる。複数行の合併で誕生したメガバンクの中には、システム障害を度々繰り返す事例がみられるが、何より深刻なのは「その原因が判らない」という点だ(日本経済新聞[2021])。

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みずほFGは2021年2~9月に計8回のATM障害を起こしたため行政指導を受け、金融庁へ「システム更改及び更新等の計画」を提出することになった
(出典:みずほFG、みずほ銀行 報道発表)

【次ページ】情報システムは企業の内部構造を映し出す鏡

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