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  • 2022/02/08 掲載

センシングやデジタルツイン活用はまだ2割、ガートナー池田氏「自分たちこそ人材に」

ガートナー 池田武史氏が解説

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デジタルによってすべてがつながる世界の到来が現実味を帯び始めている。その中で、5GやIoTなどを推進している企業と、なかなか着手できない企業とに分かれている。5年ないし10年以内には訪れるであろう「新しい世界」で生き残っているために、企業のCIOやテクノロジーリーダーが持つべき視点はどういうものか、準備すべきことは何か。ガートナーのバイス プレジデント,アナリストの池田武史氏が提言する。

執筆:畑邊 康浩

執筆:畑邊 康浩

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あらゆるものがつながる時代が到来する中でテクノロジーリーダーが行うべきこととは?
(出典:ガートナー)

※本記事は2021年11月16日-18日に開催された「Gartner IT Symposium/Xpo 2021」の講演内容をもとに再構成したものです。

すべてがつながる世界では自社ビジネスの外に視野を広げる必要がある

 現在、1000基を超える通信用衛星が地上500~1500kmの軌道を周回しており、2021年には日本の通信事業者も続々と低軌道衛星通信サービスを開始すると発表した。人工衛星を使ってネットワークにアクセスできるようになるといろいろな側面でインパクトがあると池田氏は説明する。

 ポイントは、地表のどこからでもネットワークにつながるということだ。従来なら基地局をどこに置くべきかという議論があるところだが、人工衛星を使うとなると、人が多く住んでいる場所・住んでいない場所かどうかにかかわらず、海でも山でも、地表のどこへでも通信環境が提供できるようになる。

 通信の品質で見ても、通信速度は数十Mbps、通信遅延も数十msecというレベルが期待でき、5Gには劣るもののネットアクセスの実用には耐えるものだ。

 そのような通信インフラが整った世界では、さまざまなものが“次世代”に刷新される。

 たとえば、スマートシティを作るにしても、通信が使えることは「前提」として考えられるため、「どういうまちをつくりたいか」というスタンスから議論を始められるようになり、今までとはアプローチが大きく変わってくるだろう。

 製造業にフォーカスしてみると、これまでインダストリー4.0やスマートファクトリーをキーワードに語られていたスマートマニュファクチャリングは生産ラインの効率化や生産性の向上に焦点が当たっていた。

 しかし、すべてがつながる世界の次世代のスマートマニュファクチャリングは、生産の前段階の製品・サービスの企画・開発や資材の調達、生産後のサプライチェーンや、顧客がどのように製品を使っているかもデジタルで捉えていくことがスコープに入ってくる。

「自社中心の目線」から「市場の未来を支えるシステムの目線」へ

 世界中で大きな問題になっているエネルギーについても同じだ。デジタルがもっと普及したときに、エネルギーの供給と消費の仕組みにどう貢献できるのか、あるいはデジタル自身のエネルギー消費をどう抑えていくことができるのか、ということが新たな論点となっていくだろう。

 モノだけでなく、公共サービスも新しい時代に即したものへと変わっていくことになる。我々がコロナ禍で体験したように、教育や医療のあり方もデジタルを使うことで従来と違うアプローチの可能性に気が付いた。あるいはそういったサービスを提供するのは誰で、どうやって実現するのかといったことも、今後時間をかけて試行錯誤していくことになるはずだ。

 このような変化は始まったばかりだが、いずれ来る、あらゆるところでデジタルのサービスがデリバリーされる新しい世界に向けて、企業のCIO・テクノロジーリーダーには新しい仕組みを考え、自社だけでなく顧客やパートナーを巻き込む仕掛け人としての役割が求められるようになる。

 そうした流れの中で、「企業のCIO・テクノロジーリーダーは、『自社中心のシステムの目線』から、『自社が関わる市場の未来を支えるシステムの目線』へと切り替える必要がある」と池田氏は話す。

新しい世界で求められる人材を自社内で開発・育成する責任

 前段で見据えた未来において競争力の中核となるのはテクノロジーだが、どういうテクノロジーを使って何をすべきかを考える前に、「デジタルとは何か」を振り返っておこう。

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データ収集・分析・未来予測の一連の仕組みをテクノロジーが支える
(出典:ガートナー)

 池田氏は「デジタルでは、すべてを記録し、分析し、未来予測に生かすことが前提となる」と話す。つまり目的は未来予測であり、ビジネスの言葉に直すと、さまざまな場面での意思決定、判断、あるいはそのヒントとしての提案にある。この点をまずは押さえておきたい。

 そして、データの収集、記録、分析、未来予測という一連の仕組みをサポートするのがテクノロジーだということだ。

 たとえば、デジタルツインは、リアルの世界をデジタルの世界で表現するためのものであり、デジタルツインを使って分析したり予測したりしたものを再びリアルの世界にフィードバックするものだ。

 そのアウトプットの方法としてARやVRがあり、より良い意思決定をするためにAIや機械学習を使う。また、データ収集やフィードバックにIoTや5Gといったコネクティビティが使われ、そこにプライバシーを守るためのセキュリティに関するテクノロジーを組み合わせていく。

 「これらのテクノロジーはデータ・ファブリックなどと呼ばれ、この仕組み全体をガートナーではディシジョンインテリジェンス(意思決定のインテリジェンス)と呼んでいます。未来の競争力を得るには、デジタル化された世界で何が起こるかを想像しながら、新しいサービスを生む仕掛けを考えること、またその実現のために必要な武器を想定し、基礎となるテクノロジーを探し、組み立て、磨き始めることが必要です」と池田氏は話す。

【次ページ】個別テクノロジーだけを見ることの限界

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