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全国にいくつも存在する回転寿司チェーンだが、市場の約7割以上を上位3社が占める寡占市場であることは意外と知られていない。今回は、そんな回転寿司市場を勝ち抜いた上位3社の戦略を比較したい。現在、業界トップのスシロー(現FOOD & LIFE COMPANIES)・くら寿司・はま寿司は、「オペレーション」「商品ラインナップ」「調達力」の強化などで既存事業を磨きつつ、新たに「海外市場への進出」「新業態開発」などを進めている。それぞれ違ったアプローチをする大手3社だが、成果を上げ回転寿司市場の首位に立つ企業はどこか。
回転寿司店の成功の秘訣とは?
国内にはあらゆる回転寿司店が存在するが、この業態を成功させるための条件とは何か。一般に儲かる飲食店となるためには、FLコスト(F:食材費、L:人件費)を60%程度にとどめることが求められる。
しかし、寿司はその作りがシンプル(ネタとシャリ)であるため、食材の良し悪しが直接的に商品の品質に反映される。ゆえに、原材料費の低減が難しく、また回転寿司のように低価格をウリとする業態では、原材料費の高さを価格に反映させることが出来ない。そのため、原価率(Fコスト)は約50%と高止まる傾向にあるのだ。
そこで求められるのが人件費(Lコスト)をいかに下げるかであり、解決策の1つが人手をかけないベルトコンベア式の設備であった。とはいえ、ベルトコンベア式設備を導入しても人件費率は20%を超えるため、目標となるFLコスト60%以下に収まらないケースが多い。
そのため、回転寿司では顧客の回転率を高め、多くの顧客をさばくことで、利益を確保することが求められる。こうした薄利多売な商売ゆえに、大量の顧客を一気に集め、一気に対応できる立地が重要となる。
つまり、回転寿司はその業態特性から、ベルトコンベア式設備などへ投資ができる資金力と、大量の顧客を誘い込める出店力が肝であり、勝利の秘訣はチェーンの「規模化」にあると言える。
近年、回転寿司は約6,200億円(2020年)を超える市場規模となったが、「規模化」を実現させた上位3社で、75%(約4,700億円)を占める寡占市場となっているのだ(図表1)。
回転寿司店の成長を支えた3つの要素
規模化に成功した上位3社に着目し、規模化の源泉となった「既存事業の深化」のポイントについて見ていこう。
まず、規模化を支えた要素として挙げられるのが、効率性の高めるための「オペレーション強化」である。商品供給の効率化の観点では、回転寿司の起源はベルトコンベアに始まったが、そのベルトコンベアも廃棄コントロール機能の付加や高速レーンの設置など、進化を続けている。
また、キッチンにおいても、セントラルキッチン(最近は減少傾向)に始まり、シャリ造りのロボット化(炊く、混ぜる、握る)など、こちらも進化が著しい。さらに、顧客接点の観点では予約管理からオーダー機能など、IT化(いわゆるDX)が進み、この流れはコロナ禍で加速している。
続いて、あらゆる顧客ニーズに対応するための「商品ラインナップの強化」である。本丸は寿司としつつも、さまざまな客層を取り込むべく、寿司以外の商品を強化している。たとえば、家族連れや昼時のビジネスパーソンではそのニーズが異なるため、家族向けにスイーツなどサイドメニューを、ランチ需要では丼ものや麺類といった食事を各社提供しており、客数確保と高粗利商品化による利益確保を実現させているのだ。
3つ目は、「調達力の強化」にあり、ここでは「出店地の調達」と「食材の調達」に分けて考えたい。出店地については、専門チームを要し、対応を加速させているが、近年では旧来型のロードサイド店が飽和に近づいたこともあり、都心への出店が進んでいる。
一方、食材の調達に関して、主要食材である魚類については高品質と低コストの両立を目指し、漁師(天然魚)/生産者(養殖)との直接取引・協業が進んでいる。特に生鮮品は規模化が難しく、規模の不経済(規模の拡大によって負の増加につながる現象)にもつながりかねない。こうした規模の不経済を避け、安定的に安くてうまい魚を調達することに各社が力を注いできたのである(図表2)。
ここからは、業界トップのスシロー・くら寿司・はま寿司の取り組みを比較する。
【次ページ】業界トップのスシロー・くら寿司・はま寿司を徹底比較
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