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- 2022/03/28 掲載
ESGスコアとは?「算出方法」「主要評価機関5社」「日本企業の点数」をまとめて解説
連載:第4次産業革命のビジネス実務論
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ESGスコアとは
ESGスコアとは、第三者評価機関が、対象となる企業のESGにおけるパフォーマンスやリスクを測定・算出した指標です。このESGスコアがあることで、投資家は企業のESGの取り組みを相対比較することが可能になります。具体的に、第三者機関はどのように企業のESGの取り組みを評価するのでしょうか。ESG評価機関は、企業の公開情報(IRをはじめとしたウェブサイト掲載情報など)や、企業へのアンケートなどを通じて対象企業のESGの取り組みに関する情報を収集・整理し、最終的に各ESG評価機関が独自に構築したスコアリングモデルに従って評価します。
投資家は、評価機関の算出したESG評価を参考に、「この企業のESG評価は低いから投資対象から外そう」「投資したい企業のESGにおけるリスクはここにあるのか」といったように投資の判断材料にするのです。
なぜ、投資家はこうした評価機関が算出したESGスコアを活用するのでしょうか。そもそもESG情報は財務情報とは異なり数値に表せない非定型的な情報が多く、企業からすれば開示するための媒体も統一されていません。そのため、投資家が企業のESG情報を知るためには、直接投資先の企業にアンケートするか、公開情報を集めて分析する方法しかありません。
このように企業のESGの取り組みを評価するのは非常に労力のかかる作業です。そのため、投資家はESG情報の集計・分析を外部専門機関であるESG評価機関に委託し、ESGスコア情報などを購入して活用しているのです。
主要なESG評価機関
なお、主要なESGの評価機関には、株価指数などを算出するFTSE(英国)やMSCI社(米国)などがあります。そのほか、日本経済新聞系列の情報関連企業の1つであるQUICK ESG研究所のように、ESG課題や投資の研究を行い、年金基金や運用機関にESG要因を考慮した投資が行われる仕組みを提供している機関もあります。米国に本拠を置く、あらゆる金融サービスを提供する企業。世界の約70を超える国・地域の株式市場をカバーし、幅広い株価指数の算出などを行っている。
・FTSE Russell
英国に拠点を置く、あらゆる金融サービスを提供する企業。株式・債券・不動産をはじめ、あらゆる資産クラスの指数を提供しており、ロンドン証券取引所をはじめ世界の多くの取引所が同社の提供するインデックスを利用している。
・Sustainalytics
投資信託の格付けを中心とした金融・経済情報を提供する米国モーニングスターグループの中のESG調査・レーティング・データ提供を行う企業。
・S&P Global
米国に本拠を置く、あらゆる金融サービスを提供する企業。信用格付け事業S&P グローバル・レーティング、株価指数を算出するS&P ダウ・ジョーンズ・インデックスなどの事業体の親会社。SAM Corporate Sustainability Assessment(CSA)のデータを活用したESG評価のデータを提供している。
ESGスコアの抱える課題
ESGに関して、企業が開示すべき情報と、それを評価する基準については、企業や投資家の間に統一された明確な指針や基準がないことが課題と言われます。実際にESG評価機関によってESG情報の収集項目や重視項目が異なっており、同じ企業でもESG評価機関ごとに評価が大きく分かれることもあります。こうした状況に対応すべく、複数の機関がさまざまなESG情報の開示基準を設定しています。しかし、開示基準が複数存在し、評価機関が乱立していることが、企業にとっては対応の混乱につながったり、複数基準に対応するためにコスト負担が大きくなっているとも言われています。また投資家にとっても、異なる基準を跨いで企業を比較することが難しいなどの課題があります。
これに対し、欧米の証券規制当局は客観的な評価基準の設定に向けて対策を行うことを表明しています。国内では、日経BP社が2020年からESGブランド調査の結果を発表しており、ここではESGに「インテグリティ(誠実さ)」を加えた4分野について、一般消費者に企業のブランドイメージをアンケートし、順位を発表しています。
投資判断でESGスコアが重視される理由
そもそもなぜ、投資判断においてESGスコアが重視されるようになっていたのでしょうか。従来、金融機関や投資家が企業に対して投融資を行う際には、収益性や回収可能性などの財務情報が重視されていました。つまり、財務状況が企業価値の測定基準だったわけです。一方、近年は財務状況だけではなく、企業の気候変動・脱炭素化への対応が重視され始めており、その中でESGという言葉が使われるようになりました。ESGは、2006年4月に国連事務総長コフィー・アナン氏(当時)が、各国金融業界に向けてESGを投資プロセスに組み入れるよう働きかける「国連責任投資原則(PRI:Principles for Responsible Investment)」を提唱したことで、広く認知されるようになりました。
日本では2014年2月に金融庁「日本版スチュワードシップ・コードに関する有識者検討会」が『責任ある機関投資家』の諸原則として日本版スチュワードシップ・コードを策定しました。機関投資家が企業の状況を的確に把握する内容として、「投資先企業のガバナンス、企業戦略、業績、資本構造、リスクへの対応など」と記述されたことが契機となり、注目を集めるようになりました。
昨今は、海外の公的年金基金などの機関投資家によるESG投資が急速に拡大しています。日本においても、世界最大の年金基金であるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が2015年9月にPRIの署名機関となり、ESG投資を積極的に推進しています。
ここからは、実際にほかの国との比較して日本企業がESG評価機関からどのような評価を受けているのか解説していきます。
【次ページ】FTSE/MSCIによる日本企業のESG評価とは?
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