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  • 2022/04/25

5G SAとは何か?「真の5G」はどう使われる?NTTドコモに聞いた技術仕様とその可能性

2020年、日本でも5G商用サービスが始まったが、その普及のスピードは4Gと比べると非常に緩やかだ。実際、5Gサービスが気になっていても移行には至っていないという人が多いのではないだろうか。一方、2021年末から2022年初頭にかけて、SA(Stand Alone)方式による5Gサービスがキャリア各社から出そろった。メインは法人化向けのサービスだが、5G SAにより今後のモバイル市場はどう変化するだろうか。「真の5G」ともいわれる5G SAの技術仕様をわかりやすく解説するとともにモバイル通信の未来像を探る。

執筆:フリーライター/エディター 大内孝子

執筆:フリーライター/エディター 大内孝子

主に技術系の書籍を中心に企画・編集に携わる。2013年よりフリーランスで活動をはじめる。IT関連の技術・トピックから、デバイス、ツールキット、デジタルファブまで幅広く執筆活動を行う。makezine.jpにてハードウェアスタートアップ関連のインタビューを、livedoorニュースにてニュースコラムを好評連載中。CodeIQ MAGAZINEにも寄稿。著書に『ハッカソンの作り方』(BNN新社)、共編著に『オウンドメディアのつくりかた』(BNN新社)および『エンジニアのためのデザイン思考入門』(翔泳社)がある。

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取材協力してくれたNTTドコモの皆さま
(ネットワーク部技術企画担当 松岡久司担当部長(右上)、5G・IoTビジネス部ビジネス企画担当 土屋武雄担当部長(左下)、ネットワーク開発部5Gコア担当 佐々木 孝志主査(右下)、6G-IOWN推進部アーキテクチャ担当 澤田政宏担当部長(中央下))

5Gは緩やかに普及中

 第5世代移動通信システム(5G)は、高速大容量通信、高信頼低遅延、そして多数同時接続通信が可能という、その特性からモバイル通信を大きく変えると高い期待が寄せられていた。反面、果たしてどれだけの起爆力を持つものなのかという声もスタート時からあった。現在スタンダードになっている4Gがスマートフォンをキラーアイテムに普及を加速していったことを背景に、それと比較しての話だ。

 実際、商用サービスが登場して2年近く経つが、各調査会社の予測では「5G普及は緩やか」といった表現が大半で、グローバルの普及予測では2025年にようやくモバイル回線全体の20%に達する見込みとされる(図1)。もちろん国・地域による濃淡があり、野村総合研究所の予測では、日本の状況を2025年時点で46%が5G回線になるとしている(図2)。これが、なんとなくの買い替えなのか、あるいはライフスタイルを一新するような変化に伴うものになるのか、5Gの真価を示すと言われる5G SAを軸に考えてみたい。

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図1:モバイル回線全体に占める5G回線比率の予測
(出典:総務省 情報通信白書 令和2年版)

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図2:携帯電話端末で用いる回線数の予測(日本国内)
(出典:総務省 情報通信白書 令和2年版)

5G SAとは何か? NSAと2つの運用方式の違い

 5Gのメリット・デメリットのわかりにくさは、その周波数帯域と運用形態が1つではないことだ。5Gの周波数帯として3GPPが定義しているのはSub6 GHz帯、およびミリ波帯の2つ。Sub6はすでにLTE/LTE-Advanced(4G)やWi-Fiなどで使用されている周波数帯で、既存の技術を流用しやすい分、まとまった広い周波数帯域の確保が難しい。

 そのためLTEでは、複数の周波数帯を束ねて使う「キャリアアグリゲーション(CA;Carrier Aggregation)」という技術で高速通信を実現している。ミリ波帯は広い周波数帯域を確保しやすく超高速通信も可能だが、直進性が高く障害物に弱いという特性から、広いエリアをカバーすることが難しい。

 日本では3.7GHz帯と4.5GHz帯のSub6、および28GHz帯(便宜上、ミリ波帯と呼ばれる)が5G通信に割り当てられている(図3)。3キャリアが提供する5Gサービスではいずれの周波数帯も使われているが、ミリ波に関しては対応のスマートフォンはまだ一部のハイエンドモデルに限られることから、現在の5GサービスはSub6と従来の4G周波数帯を転用する形が主流になっていると言える。

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図3:5G周波数帯の割り当て

 運用形態にはNSA(Non Stand Alone)方式とSA(Stand Alone)方式があり、商用サービスとして先行したのはNSA方式だ。NSA方式は5G NRとLTEを組み合わせたシステムで、一方のSA方式は5G NR単独で基地局と端末間の制御とデータの送受信を行う構成だ。

 LTEネットワークには主に制御信号をやり取りするEPCという装置があり、NSA方式ではEPCを使って新たに割り当てられた周波数帯を活用し5Gエリアを実現する(図4・左)。

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図4:NSAとSAのシステム構成の違い

 NRとは5Gネットワークにおける標準無線規格のことで、つまりLTEの後継。この場合、5G NRは端末との制御信号のやり取りの部分でEPCを活用しているということになる。一般的に「端末→基地局→制御装置→交換機」のうち制御装置以降をコアネットワークと呼ぶことから、4Gコアを活用するとも表現される(図5)。

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図5:モバイル通信ネットワークのイメージ

 図4・右はSA方式のシステム構成だが、図のとおり5G NRが5Gコアに接続するだけのシンプルな構成だ。NSAとSAの違いとしてはEPCなどLTEの装置を使っているかどうかというところだが、ある意味4Gシステムに依存するNSA方式とは異なり、SA方式では5Gの標準規格を活かし、より高速大容量の通信が可能ということになる。

SA方式の最大速度「1.7Gbps」はNSA方式より遅い

 どれだけ速くなるかと言うと、現在NTTドコモが公表しているSAの最大速度は1.7Gbpsで、実はこの数字はNSA方式の最大4.2Gbpsと比較すると低い。これはNTTドコモだけ、日本だけといった問題ではない。5Gの規格をより活かせるはずなのに、どういうことなのかというと、その理由の1つにキャリアアグリゲーション技術が挙げられる。

 前述のように、Sub6は広い周波数帯域をまとめて確保することが難しく、そこでキャリアアグリゲーション、デュアルコネクティビティというような、周波数を束ねて使う技術が使われる。しかしこれはLTEや5GのNSA方式の場合であり、5GのSA方式の周波数帯域ではまだそれが進んでいない。実際、LTEとNSAで運用される周波数のコンビネーションはもう何万通りもあるという世界だが、5G SA方式においてはその技術進化の途上であり、多くの周波数を束ねる技術の実用化に期間を要する。

 NTTドコモの松岡氏は、いかにグローバルと歩調を合わせながら進めていくかという戦略的な部分を課題として指摘する。周波数をどれくらい束ねるのか、そのときの無線側の条件はどうなるのか、その組み合わせで果たして干渉が起きないかなど、どの周波数をコンビネーションできるのかを3GPPの標準化の場で議論し、合意をもって、規格を策定したあとにベンダーが開発するわけで、当然、日本に限らず各国の周波数事情も関わってくる。ベンダーの開発も、各国で共通的に使われている周波数の組み合わせを優先的に実用化することになる。

 日本として固有の周波数を組み合わせる場合には、個別の開発が必要となることから、グローバルで共通的に使われている周波数をアグリゲートして使うことが、技術進化をするうえで効率的なのである。この点で、NSA方式はキャリアアグリゲーションも含め、LTEの熟成した技術やLTEの周波数をうまく転用することで高速通信を実現していると言える。このあたりは、いまがSA方式のスタートだということに尽きるだろう。

 今後、キャリアアグリゲーション技術の5G SA方式への導入や、LTEで使っている周波数を5G側へ順次切り替えていくことでスピードを上げていく流れになる。もちろん、ミリ波をうまく活用することで爆発的に上がる可能性もある。

【次ページ】5Gのキーテクノロジー「ネットワークスライシング」

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