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- 2021/05/27 掲載
「vRAN」とは何か?5G時代、ドコモら通信大手がこぞって参入する理由は?
vRANとは?O-RAN、Opan RANとの違いは?
vRANは「virtual Radio Access Network」の略称で、仮想無線アクセスネットワークと呼ばれます。ソフトウェアやネットワークにおいて「仮想」という名前がついたら、“ハードウェアの構成をソフトウェアの中で実現する技術”のことを指すことが多いですが、vRANもそういった仮想化技術の1つです。5G時代の通信インフラとして注目され、2021年現在、国内で5Gを提供するドコモ・KDDI・ソフトバンク・楽天、すべての事業者でvRANの導入が検討され、運用試験が行われています。
また、vRANを広く利用するためには規格や仕様を統一する標準化が必要不可欠です。そのため、O-RAN Alianceという通信事業者の団体がRANの仮想化に関する規格を定め、その仕様や団体が「O-RAN」と呼ばれています。そうした通信アクセスネットワークに関する規格を公開し、利用しやすくする試みが「Open RAN」です。
vRANが普及する背景には、こうしたO-RANによる規格の標準化やOpen RANの広がりが関わっており、合わせて語られることの多い言葉となっています。
vRANはどのような技術か、その仕組み
無線通信において、スマホやIoT機器などの通信端末と直接通信をするのは全国各所に設置された通信アンテナを備えた基地局です。ユーザーがスマホを使ってインターネットを使ったり、電話をしたりする場合、スマホは基地局と接続することで初めて通信が可能になります。ただ、通信に関わる複雑な処理をすべての基地局で行うことはコストがかかるため、実際には「子局(こきょく)」と呼ばれる最低限の通信処理を行う小型の施設が全国各地に設置されます。
私たちが一般的に見る通信アンテナ施設はそのほとんどが「子局」にあたるものです。実際にインターネットにつながっているのは、子局の先にあるより高度な通信処理が可能な「親局(おやきょく)」です。たとえるなら子局は見張り台や狼煙台のようなもので、受け取った情報を元に正確な報告書を作るのは親局ということになります。
支局から親局までは専用の通信ラインが引かれており、高速大容量・低遅延での通信が可能です。ただ、親局からインターネットまでのルートは汎用の通信ラインが使われるので、混雑度合いやインフラの成熟度合いによって通信速度は変わります。
vRANにおいて仮想化を行うのは、この「親局」の部分です。従来、親局における通信処理は専用のハードウェアを使って行われていました。この機能を汎用のサーバ内で仮想化することで、専用のハードウェアを使わなくても通信処理を行えるようになったのです。
それにより、ベンダーに依存せずに基地局が設置できるようになり基地局機能の柔軟な改良や修正が可能になります。加えて、汎用のサーバである利点を生かし、ほかのサービスを基地局内のサーバに入れることで、低遅延でのサービス提供が可能となります。
このほかにも、目的に合わせて設置されていた専用のハードウェアを1つにまとめたり、場合によっては親局にハードウェアを置かず、クラウド上で処理するようなアプローチも可能になると考えられています。
これだけでもvRANがなんとなく便利そうなのはわかるのですが、専用のハードウェアと同等の機能を汎用サーバで実装するとなると汎用サーバに求められる情報処理能力は非常に高いものが求められます。さらに高性能サーバは消費電力も高く、維持コストも高いのがネックです。普及が進めばコストは下がりますが、最初はかなりのコストがかかるでしょう。
それでもvRANが注目される理由を理解するには、近年話題の「5G」と組み合わせて考える必要があります。
vRANが注目されるようになった理由
vRANの技術自体は4Gでも実現可能です。しかし、vRANの仕様や規格は5G時代を見越して作られた「O-RAN Alliance」という通信事業者が集まった団体によって考案されています。この団体では、無線アクセスネットワークのオープン化・仮想化・5Gの活用が1つのプロジェクトとして進められています。vRANは、5Gの機能を最大限に生かすために作られたと言っても過言ではありません。5Gの売りは「高速大容量」「低遅延」「同時多数接続」です。言葉にするとシンプルに聞こえますが、通信ネットワークの常識からして3つすべてを実現することは容易ではありません。高速大容量、しかも多数接続をすれば、膨大なデータがネットワーク上に流れることになります。仮に5Gでそれができたとしても、インターネットは今までと変わらないサーバと通信規格が使われており、ネット上のサーバがボトルネックになって「遅延」や「速度低下」が発生してしまいます。
5Gで謳われている3つの機能を同時に実現することは、本来非常に困難なことなのです。
それを回避するために必要不可欠なのが「分散(エッジ)コンピューティング」です。通信の負荷を分散することでボトルネックを解消するためのアプローチで、5Gでは分散コンピューティングの1つとして「MEC(マルチエッジコンピューティング)」が注目されています。これは、インターネット上のサーバで情報を処理するのではなく、基地局に設置されたサーバで情報を処理しようというものです。
今までは「スマホ」→「基地局」→「インターネット」→「サーバ」だった通信経路を省略して「スマホ」→「基地局」で終わらせてしまおう、ということです。
【次ページ】従来の仕組みとvRAN+MECはどう違うのか図解、なぜ5Gの普及に必要なのか
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