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  • 2022/05/20 掲載

図解で分かる、米食品メーカー「クラフト・ハインツ」のサプライチェーンが凄い理由

【連載】現役サプライチェイナーが読み解く経済ニュース

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2022年4月、米食品メーカーであるクラフト・ハインツ社がマイクロソフトと提携し、企業の変革を進めるとともに、よりレジリエントな(弾力性のある)サプライチェーンを構築することを発表しました。今回は、クラフト・ハインツ社が発表したDXを例に挙げながら、デジタル化されたサプライチェーンの構築に必要な視点について、サプライチェーンマネジメント(SCM)の標準を策定する米ASCMのレポートなどから考察します。

執筆:泉啓介(いずみ・けいすけ)

執筆:泉啓介(いずみ・けいすけ)

CSCP、CPIM。『全図解 メーカーの仕事』(ダイヤモンド社)の著者山口雄大、行本顕、小橋重信との4名によるグローバルSCM 推進ユニット「SCM4」で顧客サービスとコストのパートを担当。現在外資系化学メーカーに勤務。生産計画や需要予測、需給調整などサプライチェーンのプランニングに関わる業務に主に携わる。SCMの国際標準を策定する米ASCM/APICSのCPIM(在庫管理や需給調整に関する知識)とCSCP(サプライチェーン全般のマネジメントに関する知識)を取得。同団体認定インストラクター。APICSディクショナリーの翻訳メンバーにも第14版より参画している。最新版は『APICSディクショナリー第16版』(生産性出版、2020)。

■連載『現役サプライチェイナーたちが読む経済ニュース』について
本連載は、150社以上のSCM実務家と議論してきた経歴を持つ需要予測のプロフェッショナルである山口雄大氏、ロジスティクス専門のコンサルティングファームを経営する小橋重信氏、日系消費財メーカーの経営企画室に勤務し、グローバルSCMの世界標準を主導するASCM (Association for Supply Chain Management)の国際資格のインストラクターも務める行本顕氏、大手外資系メーカーでSCMを担当し、同じくAPICSの資格を保有する泉啓介氏による共同連載。需要予測、ロジスティクス、世界標準のSCMの世界観と整理軸、外資系のSCMといったそれぞれの専門分野の目線から経済ニュースを読み解く。

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デジタルサプライチェーンの構築に必要な視点について、サプライチェーンマネジメント(SCM)の標準を策定する米ASCMのレポートなどから考察する
(写真:ロイター/アフロ)

米食品メーカークラフト・ハインツ社の改革とは

 2022年4月、米食品メーカー大手のクラフト・ハインツ社がマイクロソフトとの提携を発表しました。同社はマイクロソフト Azureを用いることで日々の業務を見直し、より協調的なサプライチェーンを構築することを目指しています。

 具体的にはリアルタイムの予測分析を用いて在庫の透明性を向上させ、消費者と販売チャネルの需要予測をすることで、消費者へのサービスを向上させようとしています。また、デジタルツールの活用により社内業務の生産性を向上させ、ビジネスに再投資できるようになることが期待されています。

 プレスリリースでは、直近の過去2年間のサプライチェーンの混乱により、顧客からサプライチェーンに対して「サプライヤー、バイヤー、小売業者、そのほかの関係者間で接続された協調的なネットワークの構築」が強く求められるようになったと触れられています。

 こうした中、同社はマイクロソフトとの協働によりバリューチェーン全体に利益をもたらすテクノロジーエコシステムを構築し、機械学習と高度な分析の活用を通じて製品をより早く市場に投入し、消費者の需要に応えようとしています。

 また、サプライチェーン・コントロールタワーの組織を立ち上げ、クラフト・ハインツの85の製品カテゴリーのサプライチェーンの流通管理の自動化を進めるほか、AIやIoT、データ分析機能を活用して2500を超える米国の小売業や外食産業の顧客、および数百万の消費者に製品を可能な限り迅速で、費用対効果の高い方法で提供できるようにすることを目指しています。

 さらに、北米にある34の製造拠点においてデジタルツインを活用したシミュレーションを可能にし、量産を開始する前のプロセスのテストと製品生産を支援しようとしています。最適な生産キャパシティや機械の停止をあらかじめ予測することで、高い品質の生産を保証することを目的としています。

 同社の事例から見えてきたサプライチェーンにおける課題は一部であり、まだまだ解決しなければならない課題はいくつもあります。今、顧客からサプライチェーンに求められている変革とはどのようなものなのでしょうか。

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直近の過去2年間のサプライチェーンの混乱により、サプライヤー、バイヤー、小売業者、そのほかの関係者間で接続された協調的なネットワークの構築が求められるようになってきている
(Photo/Getty Images)

今こそ必要な「デジタルサプライチェーン化」とは

 サプライチェーンマネジメント(SCM)の国際標準を策定する米ASCMの協賛によるエコノミスト誌調査部門のレポートによると、ベンチマーク企業の約半数がサプライチェーンに関する情報を得るのに自社のデータしか利用でいていないと回答をしています。また、ガートナー社のレポートでは、調査に回答した企業のうち21%しか調達・製造・流通に関して迅速に対応するために必要な情報の可視化ができていないと報告されています。

 米ASCMのCEOもサプライチェーンの可視化は緊急の要件でありながら、まだまだすべてのサプライチェーンのパートナー間で透明性を促進するために情報共有できている企業は非常に少ないとコメントしています。

 近年、センサーやワイヤレス通信をはじめ、あらゆる場所におけるシステムやバッテリーの進歩により、サプライチェーンに関する情報を可視化をすることが以前よりもはるかに手頃な価格で実現可能になってきています。実際に、ドイツの国際海運会社であるハパックロイド(Hapag-Lloyd)社などでは、現在300万個のドライコンテナにセンサーを付けて、コンテナの場所・温度・衝撃に関するデータを送信しています。

 このように、デジタルツールによってサプライチェーンに関する情報を可視化する(デジタルサプライチェーン化)動きは、世界的に将来予測が難しくなっている状況においては当然の流れとも言えるでしょう。

 それでは、デジタルサプライチェーン化さえできれば、顧客のサプライチェーンに対する要求を満たすことができるのでしょうか。ここからは、デジタルサプライチェーンの成熟度を測る基準を参考に、顧客の要求を満たすために必要なデジタルサプライチェーンの在り方について考えていきます。自社のサプライチェーンの成熟度がどのレベルに達しているのか、どの水準にまで持っていくことが求められているのか解説します。

【次ページ】デジタルサプライチェーンの成熟度を測る「4つの基準」
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