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  • 2022/05/24 掲載

スマホシェア消えたファーウェイ、グーグル・アップル対抗「独自OS」で復活か?勝算は?

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2019年から始まった米政府のエンティティリスト(取引制限リスト)による規制は、ファーウェイのスマートフォン事業に深刻な影響を与え続けている。2021年、ファーウェイは世界市場だけでなく中国市場のシェア統計からも消えた。しかし同社はスマホ事業を放棄しなかった。2012年から研究開発を進めていた独自OSを製品化し、デバイス間だけではなく、家電製品とも自由な連携ができる環境をつくりあげた。これはアップルやグーグルも目指している環境で、ファーウェイが一歩先んじたことになる。2018年に一度は「アップル超え」を果たした“中国最強企業”の巻き返し策はいかほどか。

執筆:ITジャーナリスト 牧野武文

執筆:ITジャーナリスト 牧野武文

消費者ビジネスの視点でIT技術を論じる記事を各種メディアに発表。近年は中国のIT技術に注目をしている。著書に『Googleの正体』(マイコミ新書)、『任天堂ノスタルジー』(角川新書)など。

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ファーウェイは独自OS「HarmonyOS」(ハーモニーオーエス)で復活できるか?
(写真:Featurechina/アフロ)


輸出規制でスマホシェアランキングから消えたファーウェイ

 2021年、ファーウェイのスマートフォン事業はかつてないほど沈滞した。米政府はファーウェイの通信機器の情報安全保障上の問題を提起し、2019年5月には商務省産業安全保障局(BIS)がファーウェイをエンティティリスト(取引制限リスト)に加えた。

 これにより、特定技術をファーウェイと取引のある企業に輸出、移転する際はBISの許可が必要となった。これは事実上の禁輸で制裁に近い。ファーウェイはGoogle PlayやGoogle マップなどのグーグルアプリ群(Google Mobile Services、以下GMS)が利用できなくなった。

 さらに、2020年8月には規制が強化され、携帯電話チップ(SoC=System on Chip)の供給を受けることも難しくなった。ファーウェイは独自開発で「Kirin」(キリン)チップを開発しており、これがファーウェイスマホの高い性能を支えていた。

 Kirinはファーウェイ子会社の「海思」(ハイシリコン)が設計を行い、製造は台湾のTSMC(台湾積体電路製造)が行っていた。そのまま製造を続けると、TSMCは米国製の製造装置やソフトウェアが購入できず、操業ができなくなる。TSMCの最大顧客はアップルで、Appleシリコンを供給しているため、ファーウェイへの供給は放棄するしかなかった。

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ファーウェイは中国市場で圧倒的な強さを誇っていたが、規制以降、急速にシェアを落とした。2021Q1からはサブブランドの「Honor」(オナー)が独立したため、さらにシェアを下げ、2021Q3から「その他」に分類されるようになり、個別のシェアの記載がなくなった
(出典:Counterpointデータ

製造体制も崖っぷち、スマホ出荷台数は激減

 アナリストの中には、この米国の規制により、ファーウェイはスマホ事業から撤退するのではないかと予想する人もいた。それも当然で、GMSが使えず、チップも供給されず、むしろどうすればスマホを製造できるのかと考えるのが普通だ。

 それでも、ファーウェイは在庫のチップを使いスマホの製造を続けた。さらに、ファーウェイが最も力を入れていた5Gをあきらめ、4Gのみ対応のチップを米クアルコムなどから提供を受け、製造を続けた。しかし、海外ではGMSが使えない、国内では5Gに対応していないとの理由からファーウェイの販売数は落ちていった。それ以前に、チップの供給数が限られているため思うように製造ができず、十分な量のスマホを市場に供給できない状況が続いた。

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出荷台数も急速に下がっていった
(出典:Counterpointデータ

 以前は世界市場でサムスンと第1位の座を争っていたが、規制以降シェアは急落し、4%以下に落ちてしまった。中国市場では圧倒的に高いシェアを持っていたが、やはり規制以降シェアが急落した。米国政府の規制は大きな効果をあげた格好だ。

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ファーウェイは世界市場でもサムスン、アップルと1位の座を争っていた。これも規制以降、シェアを急速に落としている。ファーウェイの代わりにシャオミが浮上したが、サムスン、アップルとはまだ距離がある
(出典:Counterpointデータ

 しかし、ファーウェイはあきらめていない。独自開発のOS「鴻蒙」(ホンモン、HarmonyOS)を発表し、巻き返しを図っている。2021年末には、HarmonyOSを搭載したスマートフォンが2.2億台、IoT機器が1億台を突破し、合計3.2億台となった。これはファーウェイが目標としていた「2021年中に3億台突破」を超える結果だ。

【次ページ】再起を図るファーウェイが打ち出した「HarmonyOS」の詳細。その勝算は?

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