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  • 2022/05/27 掲載

「障がいを強みに」ニューロダイバーシティとは?MSやグーグルも積極的に取り組むワケ

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思考・学習・行動などの多様性を表す「ニューロダイバーシティ」。この言葉のもと、自閉症やADHDなど、従来「障がい」とされてきた特性を強みと捉え、雇用を促進する取り組みが米国で広がりを見せている。今年4月、マイクロソフトやグーグルなど大手企業が多数参加する団体「ニューロダイバーシティ@ワーク・エンプロイヤー・ラウンドテーブル」が、雇用におけるニューロダイバーシティを促進するプラットフォームをローンチ。今後、世界各地に広がる可能性を持つ取り組みとして注目を集める。そもそもニューロダイバーシティとは何か?どのような成果を狙うのか、各動向を紹介する。

執筆:細谷 元、構成:ビジネス+IT編集部

執筆:細谷 元、構成:ビジネス+IT編集部

バークリー音大提携校で2年間ジャズ/音楽理論を学ぶ。その後、通訳・翻訳者を経て24歳で大学入学。学部では国際関係、修士では英大学院で経済・政治・哲学を専攻。国内コンサルティング会社、シンガポールの日系通信社を経てLivit参画。興味分野は、メディアテクノロジーの進化と社会変化。2014〜15年頃テックメディアの立ち上げにあたり、ドローンの可能性を模索。ドローンレース・ドバイ世界大会に選手として出場。現在、音楽制作ソフト、3Dソフト、ゲームエンジンを活用した「リアルタイム・プロダクション」の実験的取り組みでVRコンテンツを制作、英語圏の視聴者向けに配信。YouTubeではVR動画単体で再生150万回以上を達成。最近購入したSony a7s3を活用した映像制作も実施中。
http://livit.media/

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米国では、ニューロダイバーシティに基づく雇用促進の取り組みが進む
(Photo/Getty Images)

デロイトやIBMなどの求人が載る新プラットフォーム

 「ニューロダイバーシティ」とは、自閉症、ADHD、失読症、算数障害、トゥレット症候群などを持つ「ニューロダイバージェント」と呼ばれる人々を対象に、社会インクルージョンを促進する文脈で用いられる言葉だ。

 オーストラリアの社会学者ジュディー・シンガー氏が1998年に、ニューロロジカルな少数派(neurological minorities)の社会的平等やインクルージョンを促進するために生み出し、ジャーナリストのハーベイ・ブルーム氏が広めた。その後、インターネットの普及とともに、米国では社会的ムーブメントとして広がったといわれている。

 同団体を創設した企業は、DXY Technology、EY、フォード、JPモルガンチェース、マイクロソフト、SAPの6社だが、現在の加盟企業数は50社近くに増えている。グーグル、IBM、クアルコム、セールスフォース、デロイト、バンク・オブ・アメリカ、KPMGなどが加盟しており、これまで各社独自のニューロダイバーシティ雇用プログラムを通じて、1400人の雇用が創出されたという。

 こうした流れの中、マイクロソフト、グーグル、デルなど米大手企業が多数参加する団体「ニューロダイバーシティ@ワーク・エンプロイヤー・ラウンドテーブル」がこのほど、ニューロダイバーシティ人材の雇用を促進するプラットフォーム「ニューロダイバーシティ・キャリア・コネクター(NDCC)」をローンチした。

 今回同団体がローンチしたNDCCは、こうしたニューロダイバーシティ人材向けの求人情報をまとめたポータルサイトだ。サイト自体は、マイクロソフトが今年2月から試験運用を行ってきたものだが、検索するとマイクロソフト以外の団体加盟企業の求人情報も多数探し出すことができる。

 たとえば、検索欄に「data science」と入力すると10件の求人情報(2022年5月10日時点)が表示されるが、その掲載企業は、デロイト、IBM、Potentia Workforceとさまざまだ。

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NDCCは米大手企業が参加する団体がローンチした
(Photo/Getty Images)

広がるニューロダイバーシティ認知

 NDCCのまとめによると、15人に1人は「ニューロダイバージェント」であるという。内訳は、自閉症と診断される割合が2.2%(44人に1人)、ADHDが10%(10人に1人)、失読症が10%(10人に1人)、トゥレット症候群が0.6%(162人に1人)。

 米国では、こうしたニューロダイバージェントな人々の特性について理解が進み、その特性を強みと捉え、伸ばしていく土壌が広がっているような印象がある。このことは米国の自閉症に対するアプローチから見てとることができる。

 ハーバード大の医療メディアHarvard Health Publishingで2017年4月20日に掲載された記事「A strength-based approach to autism」が自閉症の子供に対する既存アプローチと新アプローチの違いを明確に説明している。

 自閉症の子供に対する既存アプローチは、反復行動を抑制したり、環境に順応させることで、子供の状態を変えようとするもの。言い換えれば、普通の行動ができるように、行動を厳しく修正するアプローチであるという。たとえば、子供がフロアに寝転びながら自動車のおもちゃで列をつくって遊んでいる場合、既存アプローチを施す療法士は、子供を座らせ、自動車の列を並べ替えさせるといったことを行う。

 しかし新しいアプローチは、子供の行動を抑制するのではなく、関心事を起点として療法士と親がセラピーに参加する子供主体のアプローチであり、子供の関心事や強みを伸ばすことができるものであるとされる。また、会話が苦手な場合は、強制的に他の子供との会話に参加させるのではなく、他の子供どうしの言葉や会話に触れる程度のところから慣れさせていく。

 興味が強ければ強いほど、子供の脳は刺激を受け、外の世界を理解する助けになると考えられているため、同記事のタイトルにあるように新アプローチは「強みをベースとするアプローチ」とも呼ばれている。

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