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  • 2022/10/17 掲載

インダストリー4.0の「4つの設計原則」とは? 持続可能なものづくりの重要テーマ解説

連載:第4次産業革命のビジネス実務論

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化石燃料依存からカーボンニュートラルへ、リニアエコノミーからサーキュラーエコノミーへ、集中型から分散ネットワーク型へと産業・社会の不可逆的な移行が進む中、製品設計やサービス設計にもそれに適した変革が求められるようになってきています。それでは、“サステナブルなものづくり”において求められる設計とは、どのようなものなのでしょうか。今回は、それを実現する上でヒントとなる、インダストリー4.0の「4つの設計原則」などから見えてきた、今後の取り組み課題について取り上げます。
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製品設計、サービス設計にもサステナブルな視点が求められるようになってきている
(Photo/Getty Images)

なぜ、サステナブルな製品設計が求められるのか

 第1次産業革命以降、化石燃料や地球資源に依存し、大量生産・大量消費・大量廃棄という一方通行(リニア)型の産業・社会システムの枠組みの中で経済活動が営まれてきました。しかし、地球温暖化や、資源の大量廃棄、環境汚染などの問題が深刻化し、これがこのまま続くと地球がもたなくなる可能性が高まっています。

 地球環境問題という全地球的な社会課題に取り組むことを命題に、CO2などの温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするカーボンニュートラルや、資源を循環させるサーキュラーコノミー(循環経済)への転換の動きが、グローバル規模で急速に広がっています。

 これに伴い、産業・社会の構造は、従来の垂直統合型・集中型(階層型)から網目状につながる分散ネットワーク型に移行していくことが考えられ、こうした動きは不可逆的に進んでいくとみられます。

 このような産業・社会の構造転換の動きの中で、ものづくりのあり方を再考し、製品設計やサービス設計にもそれに適した変革が求められます。

求められる「価値観」のアップデート

 カーボンニュートラルに向けては、省エネルギー化のほか、化石燃料の使用を抑制し再生可能エネルギーの利用を拡大することが求められますが、エネルギー資源が広く遍在するため、安定供給やコスト抑制のほか、エネルギーを再利用する取り組みも必要になります。発電・送電や蓄電の設備もさまざまな場所に設置する必要があることを考えると、さまざまな場所に存在する設備や資源をうまくつなぎ合わせる必要も出てきます。

 また、従来の、新しいモノをたくさん作り消費することが美徳だった経済・価値観から、リユースやリサイクル、リノベーションを推進したり、アップグレードやアップデートをして長くモノを利用する価値観へのシフトへの対応も必要になると考えられます。

 それに対しては、ライフステージや使用環境に合わせて製品を進化させたり、使い方を変えられるようにし、製品をできるだけ長持ちさせられるようにすることが求められます。そうなると、当然ものづくりのあり方も変えていかなければならなくなり、サステナブルな製品設計・サービス設計が求められるようになります。

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新しいモノをたくさん作り消費することが美徳だった経済・価値観から脱却する必要があるかもしれない
(Photo/Getty Images)

インダストリー4.0の「4つの設計原則」

 カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーに向けたサステナブルなものづくりといった、これまでに前例のない課題解決に取り組むにあたっては、「デザイン思考」が重要になります。

 たとえば、「壊す時」のことを考えたものづくりや、保守・修理や部品交換、アップデートなどによる「製品寿命の延長」を見据えた設計など、これまでの製品設計の概念を超えた考え方が必要となります。


 改めて参考にすべきものとして、インダストリー4.0の4つの設計原則があります。

 1つ目は「相互運用性(Interoperability)」です。これはモノやヒトを問わず、モノの製造や利用などの活動に関わるすべてをつないでいくことを意味します。たとえば、製造においては工場の中の機械同士の連携だけでなく、ヒトのサポートとしてのロボット活用や、遠隔地の従業員同士の共同作業を実現するために情報をやり取りすることなどがその対象となります。

 2つ目は「情報透明性(Information Transparency)」です。せっかく集めたデータが活用されなくてはその資産価値も失われてしまいます。収集したデータを活用することによってフィジカル(実世界)空間の仮想モデルをサイバー(デジタル)空間上に作成し、すべての人が解釈できるようにすることを可能とすることがそのポイントです。

 3つ目は「技術的アシスト(Technical Assistance)」です。ヒトにとって危険または困難な課題を軽減することができるようになれば、生産活動の効率化が図れるだけでなく、働く人の安全を確保することもできます。重労働、危険労働となっている作業を機械やロボットなどのデジタル技術に任せることができれば、1人当たりの生産性は格段に向上します。

 4つ目は「分散型決定(Decentralized Decision-making)」です。今起きている状況をリアルタイムで反映しながら、自律的に意思決定していくことがその目的です。データをサイバー空間で定量的に分析し、業務ごとの状況に応じた判断や意思決定を自律化することで、あらゆる局面におけるデータドリブンな判断が可能となります。

 インダストリー4.0のコンセプトは「つながる工場」すなわちスマートファクトリーである、と日本では言われてきました。しかし、インダストリー4.0の設計原則に書かれていることを見ると、人の働き方や産業構造の変革まで視野に入れた内容になっており、その本質はさまざまな社会課題の解決を目指しているものであることが分かります。

 欧州を中心に、地球温暖化という社会課題に対してインダストリー4.0で取り組もうという動きが加速しつつあることで、その本来の価値が徐々に明らかになってきていると言えるでしょう。カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーといった、地球規模での社会課題に向けて、このインダストリー4.0取り組みのスコープが明確化し、ものづくりの構造転換がさらに進んでいく可能性があると感じています。

【次ページ】サステナブルなものづくり実現に必要なこと
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