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  • 2023/01/23 掲載

日本人初「サッカー指導欧州最高資格」髙野氏に聞くキャリアの「独自性」はどう築く?

連載:トップアスリートの仕事哲学

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カタールW杯にも出場したベルギーで、欧州最高位サッカー指導者資格を有する日本人指導者が活躍しているのをご存じだろうか。元日本代表の香川真司選手などが所属するシント=トロイデンVVでユースの育成やクラブのフットボール戦略を手掛ける髙野剛氏である。プロでのサッカー経験なく指導者の道に入り、海外で活躍するという異色の経歴の持ち主でもある髙野氏に、キャリアへの考え方などについて聞いた。

聞き手・執筆:吉田育代、聞き手・構成:編集部 髙橋諒

聞き手・執筆:吉田育代、聞き手・構成:編集部 髙橋諒

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シント=トロイデンVV(STVV)ヘッド・オブ・フットボール・ストラテジー & ディベロップメント マネージング・ダイレクターオブユース
髙野 剛氏
サッカー指導者。2005年にサンフレッチェ広島F.C U15コーチ。2011年にアジア人初のイングランドプレミアリーグコーチ。2018年に日本人初のイングランドサッカー協会UEFA Proライセンス取得。2021年7月から現職。アカデミーの責任者として、フットボールフィロソフィーや戦略、選手育成の仕組みづくりを行っている。
(Photo/©STVV)

「独自性」を意識したサッカー指導のキャリアとは

 高校時代、サッカーをしていて、そこからアメリカの大学に留学しました。目的は言語を学ぶことでした。サッカーは高校で終わりと思っていたのですが、草サッカーをしていたら、大学の監督からたまたま声がかかったのです。そこで大学リーグとセミプロのリーグでプレーしているうちにまた火がついて、プロを目指しました。

 しかし、ありとあらゆることにトライしたものの、限界を感じてサッカーはもうやめよう、と思ったときに、地元のチームから教えてくれないかと誘いがありました。

 U-11ぐらいだったと思うのですが。このチームを受け持ったときに、私の指導者人生が始まりました。ひとたび教えるのであれば、自分の経験だけではなく体系的な知識の下で教えないと子どもたちに失礼だと思ったので、ライセンス取得を志しました。

 そうして始まった指導者のキャリアの中で、海外で活動したいとう考えは元々持っていました。ただ私も日本人なので、最初に視野に入ったのはJリーグです。

 そこでプロ指導者として活動するというのはどういう生活になるのかと想像し、帰国する機会があるならJリーグで指導できれば、というのは考えました。その後、実際Jリーグで活動することになりますが、ここで思いが膨らんできたのが、欧州のライセンスにチャレンジするということです。

 私は結局アメリカで13年過ごしたのですが、そのときから、やはりサッカーの最高峰は欧州であり、そこで欧州のベストプラクティスから学べるものは多いはずだと思っていました。そして、首尾よくライセンスが取得できれば、欧州で指導できる道も開けるのではないかと。

 ただ、目標にはしましたが、そこに行くまでの道筋はなかなか見つからなかったですね。というのも、私はプロとしてのサッカープレー歴のない指導者であり、しかも日本人ということで、前例が非常に少なかったからです。

 その一方で、サッカーの指導者としてキャリアを構築していく上で、これが実現すれば自分の独自性になるとも思っていました。 独自性を持とうとするのは幼いころからの私の性格で、言語を身につけようと思ったのもその1つですが、誰も持っていない経験を持つということは、すごく意識していました。

UEFA Proライセンス取得へ、「話し合う環境」の良さを実感

 UEFA Proライセンスは各国で少しずつカリキュラムが違うのですが、私の受けたイングランドの場合は、C級、B級、A級、Proライセンスという4つのランクでテストを行っています。

 C~A級までは戦術やピッチでのコーチングを扱うのですが、Proライセンスになると、ピッチでの指導よりもリーダーシップやマネジメント、判断、この3つの要素を重視する内容になっています。

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2018年に日本人初のUEFA Proライセンスを取得した

 具体的には、今起きていることよりも将来どのようになっていくかを受講している27名の仲間とディスカッションし、世界のサッカーをリードしていくには何が必要かを追求します。

 そこに知識の落としこみはまったくありません。知識はそれ以前に何が起きたかがベースになっていて、完成したときにはもう時代遅れになっているという発想でした。

 ディスカッションベースでものごとを学んでいくのは刺激的で、W杯出場者や欧州チャンピオンズリーグ優勝経験者など、華々しい経歴を持つ受講者と議論を重ねていく中で、相手の話を傾聴する姿勢、考えるスピードも鍛えられました。

 また、こちらで活動する中でもたびたび感じることなのですが、誰もが自由に発言し、聞く方もそれをしっかりと聞くという環境が根付いているということも感じました。

 カリキュラムはサッカーの監督を選ぶということと同時にリーダー資質を持った人間を選び育成するプログラムです。A級ライセンスの取得に関しては、当初は彼らの描く指導力を満たすのが難しく、6度最終テストを不合格になりました。

 7度目は人生をかけるつもりで1年前に渡英。徹底的に英国人が考える指導法を文化的な考えもインプットした上で臨んだ結果、A級ライセンスを無事に取得することができました。

 そして、A級ライセンス取得後、Proライセンス受講に応募し、3回の選考会を通じて、450人の中からProライセンス受講者27人に入ることができました。

「プロプレーヤーとしての経験なし」が逆に強みに

 実際の現地での指導経験で大変だったのは、サウサンプトンFCにいたときですね。それはプロ経験がないからとか、日本人だからとかいうことではなくて、当時プレミアリーグに昇格したのは喜ばしい出来事だったものの、その後、同リーグで戦ったことがないので、指導がすべて予想の世界になってしまったことです。何をしたら勝てるのか見えなくなることもありました。

 試合の後、何が足りなかったか、どうすれば勝てるのか、練習が終わったらディスカッション、ご飯を食べながらディスカッションという感じで、次の試合まで時間がない中、3~4人のコーチングスタッフで毎日毎日話し合いました。

 ここでも考えるスピードが鍛えられましたね。そうした折り、プレミアリーグに昇格して2シーズン目を迎えた監督にたまたま話を聞く機会があって、「最初は負けて当然だ。そこで一番大事なのはコーチのモチベーション」と言われて、そのとおりだと思ってねじを巻きなおしました。

 プロとして経験がないことは、自分にとってかえって強みだと考えるようになりました。その分、冷静に分析できるんです。3~4人のコーチングスタッフの中でも、1人だけ違った観点で試合の流れを読むことができました。

 また、若い選手にとっては、こちらが元プロだったら構えてしまうシーンや話もあります。しかし、私は私は選手としての地位がないので、フランクにディスカッションできます。それはいいことなのではないかと思います。

【次ページ】不安を感じるのは悪いことではない?

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