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  • 2022/08/24 掲載

なぜ今のヤクルトは“鬼強い”? 元監督・真中満氏に聞く「強い組織の共通点」

連載:トップアスリートの仕事哲学

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企業にとって社員のマネジメントは業績を左右するほど重要な要素である一方、正解がなく取り組み方に頭を悩ませる企業は少なくありません。一方、選手の育成・マネジメントの研究が進むプロスポーツの世界、特に組織全体で選手の育成・マネジメントにあたるプロ野球の世界から学べることは数多くあるかと思います。そこで今回は、2015年に東京ヤクルトスワローズをリーグ優勝に導いた真中満元監督に、チームを強くする「マネジメント」の秘訣をお聞きしました。

企画:林 裕人、聞き手・執筆:井上健語、聞き手:中澤智弥、写真:吉成大輔

企画:林 裕人、聞き手・執筆:井上健語、聞き手:中澤智弥、写真:吉成大輔

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東京ヤクルトスワローズ元監督・真中満(まなか・みつる)氏
1992年ドラフト3位でヤクルトスワローズに入団。1997年からレギュラーに定着し、99年に打率3割を達成。2001年には打率.312でリーグ優勝、日本1に貢献。2007年にはシーズン代打起用回数98回、代打安打31(ともに日本記録)で「代打の神様」と称された。2009年からヤクルト2軍打撃コーチ就任。2011年から2軍監督代行~2軍監督に就任し、2013年イースタンリーグ優勝。2015年ヤクルト1軍監督に就任、その年、大接戦のセリーグペナントを制し、初年度優勝を成し遂げた。また、この年のセ・リーグ最優秀監督賞を受賞した。2017年辞任。現在は野球解説者として活躍中。

2015年ヤクルトが強かった理由(1):首脳陣の風通し

 2014年に小川淳司監督の後任として東京ヤクルトスワローズ(以下、ヤクルト)の監督を引き受けました。チームは2013年、2014年と最下位に低迷していましたが、その期間に小川前監督のもとで優秀な若手が育っていたこともあり、監督就任1年目で優勝することができました。

 監督就任時に意識したことは、1軍と2軍のコミュニケーションをしっかりとり、チーム全体の風通しをよくすることです。1軍と2軍の風通しが悪いと、組織全体にチーム方針が浸透せず、選手たちの能力が発揮されにくい環境になり、結果として組織の停滞を招きます。

 たとえば、1軍の方針が2軍に伝わっておらず、1軍の方針に沿っていない指導が2軍で行われていたとすれば、2軍選手が1軍の試合に出場する機会を得ても1軍で求められるプレーをすることはできないでしょう。だからこそ、1軍と2軍のコーチ・首脳陣同士がしっかり意思疎通を図ることが重要なのです。

 ただ、プロ野球のコーチ・首脳陣は数が多く、1軍だけでも、投手コーチ、野手コーチ、バッティングコーチなど10人以上在籍しており、2軍にも同じだけのコーチがいます。数が多くなると、コミュニケーションは難しくなりやすいですが、選手が戸惑うことがないよう、コーチ・首脳陣同士が連携し、目指すべき方向に関して、認識を共有しておく必要があります。

 時には意見が食い違い、コーチ同士に不和が生まれ、"斜め目線"のコーチや前向きでないコーチが出てきたりもするでしょう。そうした空気は選手に伝わり、チームの士気を大きく下げる結果につながるため、コーチ・首脳陣が組織にとって大きな影響力を持っていることを理解しましょう。

 このあたりは、会社とも似ているかもしれません。部長同士の意思疎通、または経営層とそれ以下の役職者との関係はなるべく風通しが良くすべきでしょう。

2015年ヤクルトが強かった理由(2):選手に対する指示

 チーム方針を浸透させることも重要ですが、その時々における「コーチ・首脳陣からの指示が明確であること」も重要です。

 たとえば、ノーアウト・ランナー2塁の状況で打席に立ったバッターは、「ランナーを進めるべきか、(進塁打を考えず)自由に打つべきか」で迷います。野球界には「ランナーがいるのにそれを進めようとしないバッターは、自分のことしか考えていない選手だ」という考え方が根強く残っているため、打席に立つバッターは迷いやすいのです。

 しかし、迷いながら打席に立っても、プロのピッチャーのボールはまず打てません。ですから私は、ランナーを進めるのか、フリーで打つのかを明確に指示して選手が打席で迷わないようにしました。

 曖昧な指示が選手を迷わせるのは、企業も同じだと思います。指示を出すコーチ・首脳陣の立場になれば、曖昧にしておきたい気持ちも分かりますが、選手の責任は自分がとるくらいの気持ちで明確に指示を出すほうが、良い結果に結びつきやすいと思います。

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2015年、ヤクルトスワローズがリーグ優勝を果たすことができた要因を振り返る真中氏

2015年ヤクルトが強かった理由(3):選手・コーチ陣の自主性

 そのほか、選手の自主性を尊重したのも、2015年の強いヤクルトを作ったポイントだったと思います。

 プロ野球の監督は、ぜいぜい3年、長くても5年で交代します。そのため、チーム方針は数年ごとに変わることになりますが、監督が代わるたびに練習方法や野球への取り組み方を変えていたら、その選手の成長は望めません。そこで求められるのが、自主的に考え、行動する力です。

 主体的に取り組めば責任感も生まれます。コーチや監督に言われたことだけやっているのであれば、失敗をコーチや監督のせいにできてしまいます。それでは成長できません。一方、自分で考えて行動すれば、その結果はすべて自分の責任に感じられるため、改善しようとい気持ちが出てきますよね。

 もちろん、コーチや監督は、選手がなかなか結果が出ない時に適切なアドバイスができるように、日頃から選手をしっかり見ておくことが大切です。

 ですので、私が監督就任時は、コーチに対して、選手の練習中にあまり顔を出さないでほしいと伝えました。選手が自分で考えて、自分で練習するのが1番大切だと思っていたからです。もちろん、1年目、2年目の練習方法が分かっていない若手に対しては基本的なことは教えますが、それでも可能な限り選手自身に任せる方針を徹底しました。

 自主性はコーチに対しても求めました。どのような練習メニューにするのか、自分で考えてもらいました。監督を引き受けた以上、やはりチームを強くしたい、そのためには「良いコーチ」を育てたいという思いが強かったのです。

 コーチは会社であれば中間管理職にあたると思います。中間管理職が優秀で、全員が会社のことを考え、行動したら、その会社は強いでしょう。それは、プロ野球のチームもまったく同じだと思います。

【次ページ】今のヤクルトが強い理由:採用力、選手起用のタイミング

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