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  • 焦点:円安圧力再燃、金利差縮小期待は空振り 迫る介入ライン

  • 2023/08/02 掲載

焦点:円安圧力再燃、金利差縮小期待は空振り 迫る介入ライン

ロイター

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基太村真司

[東京 2日 ロイター] - 外為市場で円が再び下げ足を速めてきた。日銀のサプライズ修正にもかかわらず、円金利の大幅上昇や日米金利差の縮小は期待薄との見方が、短期筋を中心に強まってきたためだ。米など主要国が景気の軟着陸に成功すれば、幅広い投資家が低金利の円を使ったキャリートレードに乗り出し、円安圧力が増すとの見通しも背景となっている。ドルはすでに142円後半と、市場が「介入ライン」と警戒する145円に接近している。

<国債臨時オペが円安の号砲>

日銀の発表直後に上下3円変動し、消化不良ともいえる状況に陥っていた円相場の方向感が定まったのは、決定会合翌営業日の7月31日午前。東京円債市場で新発10債利回りが9年ぶり高水準となる0.6%台に乗せ、日銀が予定にはなかった臨時オペを通告すると、ドルは140円後半からぐんぐんと上昇し始めた。

日銀は今回、長期金利の誘導水準や許容変動幅は維持したうえで、指値オペ金利を従来の0.5%から1.0%へ引き上げた。誘導水準の見直しや変動幅拡大など、多くの参加者の予想と異なるこの仕組みの実態、つまり新たな事実上の上限金利が0.6%程度にとどまる見通しとなり、日銀の「金利上昇の容認や円安抑制姿勢の本気度が疑われた」と、みずほ証券チーフ為替ストラテジストの山本雅文氏は言う。

ただ、それ以前からドルの下値では円が売られぎみだった。発表後に円高が進んだのは、直後に138円前半をつけた局面のみ。円金利は確かに上昇したが、同時に米国金利もつれ高となったため、日米金利差が縮小することがほとんどなかったためだ。

日銀は今月2日、全年限を対象とした国債買入オペを通告した。買い入れ予定額を増やして金利上昇をけん制するとの予想が優勢だったが、いずれの年限も据え置いた。「このまま円安が止まらなければ、日銀がもう一段の長期金利上昇を容認する可能性はある」(国内証券幹部)との思惑も浮上している。

<サプライズ修正の一因は円安、通貨安誘導は否定>

そもそもなぜ日銀は今回、政策の柔軟化に踏み切ったのか。会合開始8日前の7月19日までにロイターがエコノミストを対象に実施した調査では、緩和縮小ありと予想したのは、回答した23人中わずか5人。専門家の間でも、前回調査の12人から予想が半減する「ノーマーク」ぶりだった。

その答えと目されるのが、声明文2ページ目に追記された柔軟化の理由に関する一節。「長期金利の上限を厳格に抑えることで(略)その他の金融市場におけるボラティリティに影響が生じるおそれがある」とした部分だ。

その他市場とは何かを会見で問われた植田和男総裁は「為替市場を含めて考えている」と回答した。「日銀が為替をターゲットとしていないことに変わりはない」とも強調したが、その言葉を額面通り受け止める参加者は多くない。

「今回の政策修正の最大の理由は円安回避」だった、とBNPパリバ証券チーフエコノミストの河野龍太郎氏は解説する。

実際、前回会合が行われた6月半ば以降、外為市場では一時大きく円安が進行していた。対ドルでは昨秋に円買い介入が行われた145円台まで下落し、通貨の実力を示すとされる円の名目実効為替レートも一時、昨年10月以来の安値をつけた。

その後、米金利の低下などを受けてドルは140円割れまで反落したが、追加利上げを辞さない米連邦準備理事会(FRB)と日銀のハト派姿勢は対照的で、再び円安が進んでもおかしくない状態が続いていた。

<難しさ増す円安是正>

最近の円相場は、売り一色だった年前半と様相がやや異なっている。今年6月の貿易収支は1年11カ月ぶりに小幅ながら黒字転換し、昨秋にはプラス40%を超えていた輸入物価指数が3カ月連続で前年比マイナスを記録した。訪日外客数もコロナ後初めて200万人を突破し、インバウンド消費が再び経常黒字を支える兆しもみられる。

それでも円の先安観は拭えない。米国を含む主要国の連続利上げは一服となりつつあるものの、根強いインフレで政策金利はしばらく高止まりするとの見方が優勢で、円との金利差は拡大することはあっても、急激に縮小する可能性は高くない。各国株価も堅調で、低金利の円を売って高金利のドルなどを買い、金利差収入を得るキャリートレードの好機到来と市場参加者の目には映る。

みずほ銀行チーフマーケット・エコノミストの唐鎌大輔氏は、今後の円安進行に対して「日銀は唯一の引き締めカードを捨て去った」と警鐘を鳴らす。唐鎌氏は今回の日銀の決定をYCCの撤廃に近いと見ており、「次は真の利上げであるマイナス金利解除しか残されていない。今後、日銀は円相場の動きに大きな不安を抱えることになる」と語る。

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