- 2021/12/07 掲載
昭和電工マテリアルズ、機能性材料向け独自MIプラットフォームを構築
従来、機能性材料の開発にあたっては、熟練開発者が自身の知識・経験・能力をもとに原材料の選定や配合比率などの膨大な組み合わせ条件に対して試作を繰り返す開発手法が一般的でしたが、情報科学を活用したMI技術を取り入れることにより、試作回数を大幅に減らし、開発時間及びコストの大幅削減を図れるとされています。
当社では、株式会社キャトルアイ・サイエンスや株式会社日立製作所、株式会社日立ドキュメントソリューションズ(*4)との協創により、実験データを有意な形で一元的に集約できる材料設計データベース基盤を構築し、さらに専門的な知識がなくても使用可能なGUI(*5)を備えた独自のプラットフォーム開発を進めてきました。
また、MIプラットフォームの構築と並行して、2017年よりMI技術のより効果的な活用を目指して、データ活用を推進できる材料開発者の育成に注力してきました(*6)。新入社員に対し統計的実験手法を学ぶ研修を必修としたほか、2020年には、統計的手法を理解し、MI活用の指導ができる人材を社内データサイエンティストとして認定する制度も新設し、年間約20名のハイスキル人材を育成しています。
今回新たに、機能性材料の開発に適した独自AIを開発し、プラットフォームへの実装が完了したことで、他社に先駆けて、現場の開発担当者が幅広い開発テーマにMI技術を活用できる基盤を整えることができました。この独自AIを、フィルムの透明性や銅箔との接着性に関する要求特性を満たす透明接着フィルムの開発に実験的に活用して検証したところ、分子構造から特性傾向を予測できる知見を持った熟練開発者と比較し、約3割少ない実験回数で目標達成できることを実証しました。さらに、これらフィルムの透明性や銅箔との接着性に関するより難易度の高い目標値での検証では、熟練開発者がまだ達成していない目標を、独自AIが先んじて達成しました(*3)。
また社内データサイエンティストがMIプラットフォームの実務活用方法を現場の開発担当者に指導し、開発現場においてMIプラットフォームが活用されることで、経験が十分でない開発担当者でも熟練者並みの最適設計を実現でき、お客さまへの迅速な材料の提案が可能となります。
今後は統合新会社における共通プラットフォームとして、AI技術の高度化*3に加え、営業や製造、品質保証など他部門のデータベースとも連携させることで、材料設計段階で、データに基づき、量産時の不具合や品質欠陥、調達リスクを把握した上で材料の設計条件を定め、手戻り(開発の見直し)を防止する機能性材料開発基盤へと進化させてまいります。
当社はこのようなMI技術を活用した効率的な材料開発を進め、お客さまへの迅速な製品提案、新たな価値やサービスを提供していくことで社会に貢献してまいります。
*1 詳細は下記の論文を参照ください。
Hanaoka, K. Bayesian Optimization for Goal-Oriented Multi-Objective Inverse Material Design. iScience 2021, 102781. (2021)
*2 マテリアルズ・インフォマティクス(MI):統計分析などを活用したインフォマティクス(情報科学)の手法により、材料開発を高効率化する取り組み。情報処理技術の進展により、実験やシミュレーション結果を解析して、素材の特性を予測する、新規の素材を提案するなどが可能となったため、素材分野での応用が広がりつつあります。
*3 2021 Materials Research Society Fall Meeting & Exhibit(2021年12月6~8日)にて発表。
*4 株式会社キャトルアイ・サイエンス(https://www.i4s.co.jp/)はシステム開発、株式会社日立製作所と株式会社日立ドキュメントソリューションズはユーザーエクスペリエンスを考慮したGUIのデザインを担当。
*5 GUI:Graphical User Interface コンピュータの画面上に表示されるアイコンやボタンなどを使い、コンピュータを操作できるようにしたもの。
*6 Discovery Summit Japan(2021年12月16~17日)にて発表。
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