- 2022/01/26 掲載
2022年の国内金融IT市場は1.1%増の2.5兆円、基幹系システム刷新やDX対応
IDCの発表によると、2022年の国内金融IT市場規模は前年比成長率1.1%の2兆4,597億円と予測した。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大の影響は残るものの、大手金融機関を中心にDX推進を目的としたIT支出の拡大が見込まれることが要因という。
特に一部のメガバンク、カード、損害保険会社などでは業務系システム刷新が予定されているほか、その他の大手金融機関、ネット証券会社、一部のネット銀行、大手地方銀行でも業務効率化、チャネル見直し、新しいビジネスモデル構築など目的とした積極的なIT支出を予測した。
一方で、多くの地域金融機関は地域経済停滞の長期化が見込まれるため引き続きIT支出が抑制されることから低い成長率が継続するとみているという。
IDCでは、大きく変わる経営環境の中でもデジタルを積極的に活用することで変化に対応し、企業成長する能力を「デジタルレジリエンシー」と定義している。
DXは、「デジタルレジリエンシー」獲得に向けた取り組みの施策として重要な位置づけになるという。
国内金融機関では社会インフラの一つとして、金融サービスの安定的な提供、事業継続が求められていることから、当局からの指導もありセキュリティ、コンプライアンス対応、リスク管理などの経営環境変化への対策がこれまでも重点的に進められた産業分野の一つでとなっている。
しかし現在、対応すべき経営環境の変化はさらに大きく、さまざまな分野に及んでいることから、国内金融機関ではデジタルを活用した変化への対応、つまり「デジタルレジリエンシー」の重要性がますます高まると指摘。
現在、「デジタルレジリエンシー」を目的とした取り組みとして、業務効率化を目的としたIT支出から、新規顧客獲得および既存顧客囲い込みのためのチャネル強化、金融商品/サービス拡充、または顧客企業支援、地方創生といったエコシステム強化のIT支出へ優先度がシフトしていると分析した。
さらに発展して新たなビジネスモデル構築を目的とした新規分野への参入、金融サービス提供を行う他の産業分野の企業への支援のためにBaaS(Banking as a Service)または組込型金融といったサービスを提供するケースが増加しており、円滑に提供できるように経営陣がリーダーシップを発揮し業務システム刷新、または顧客データ管理強化といった全社的なプロジェクトを行う金融機関も増加しているという。
その他の分野においては、脱炭素などのSDGs/ESG(Environmental, Social, and Governance)の取り組みが自社内だけではなく、投融資先に対しても支援、誘導が求められていることから、大手金融機関を中心に支援のためのIT支出が今後拡大するとした。
国内金融機関では現状ではまだ「デジタルレジリエンシー」の認識は少ないものの、事業継続、拡大を目的にDX推進の取り組みを行っている。一方で、着手するDXプロジェクトは、他のDX案件、既存システムとの間で連携などが不整合になるケースが存在し、最悪の場合、各DX案件がサイロ化し、期待通りの成果が得られなくなる懸念もあると指摘する。
IDC Japan ITスペンディング リサーチマネージャーの市村 仁氏は「ITサプライヤーは、このような金融機関に対して全社で整合性のあるDX推進のロードマップとして『デジタルレジリエンシー』を採用することで各施策の位置づけ、優先順位などを明確化することが有効である」と分析している。
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